第17回
よろこびは
「ふたつ」にあるんだ
よろこびは
「ふたつ」にあるんだ
重松 |
不思議なんですけど、 「ほぼ日」に手帳なんかが販売されていて、 ほしいからクリックしますよね。 「いいものを手に入れたよなぁ」 なんて、うれしがって買ってるんだけども、 「よく考えたら、これでイトイさんのところに、 けっこう儲けが行ってるんだな」 って、あとで気づくわけです。 インターネットって、 商売感を与えない、と言うか。 |
糸井 |
そこは研究課題なんですけど、なるべく 与えるようにもしてるんです、ときどきは。 「ムーミン谷じゃねぇんだからさ」 っていう言いかたを、しているんだけど(笑)。 ただ、ぼくたちとしては、 「買ってくれることが、いちばん望んでること」 っていうふうにはしたくないんです。 イヤなら買わなくてもいいや、 ってところがないと、 商売としてはダメなんですよね。 読者にお願いをすることがあるとすると、 たったひとつで、ひたすら 「ほぼ日」を読んでくれること、 それだけなんです。 |
重松 |
それって、紙芝居屋のオヤジが、 「紙芝居見るなら、水飴買わなきゃダメだよ」 って言うみたいなところじゃないですか? |
糸井 |
(笑)そうそう! |
重松 |
たぶん、イトイさんも、 水飴屋さんじゃなくて、あくまでも、 紙芝居屋さんなんだよね、主眼としては。 |
糸井 |
それ、いいたとえだなぁ。 これから俺、そのたとえ、人に使おうと思った。 確かに、ぼくも、 紙芝居がすごい好きだったんですよねぇ。 |
重松 |
紙芝居屋さんって、 「絶対に買わなきゃいけない」 って決まり、ないんですよね。 こっそり見ていてもいいんだけど、 おじさんから 「たまには買えよ」って言われたりしてね。 |
糸井 |
ただ、いつも買ってくれる人の中には、 「水飴そのものが好きだ」 って人も現れるんですよね。 手帳なんか、毎年コツコツ改良してると、 そうなってきた。 |
重松 |
うん、うん。 たぶん、食玩なんかもそうだけども、 やっぱりぼくは、今は、なんか、 「ふたつないとダメなんだ」と思うんです。 |
糸井 |
(笑) |
重松 |
おまけと、キャラメルと。 ライダースナックで育った世代としては、 やっぱり「ふたつ」って重要なんです。 やっぱり、スナックもカードも、 両方好きだったもん。 ひとつのものに、 ふたつの価値観が含まれている、 そういうよさって、あるんだろうなぁ。 手帳が便利っていうのと、 いろんなエッセイを読めるっていうのと、 いっぺんにできちゃう。 ふたつになると、遊びになるわけですよね。 商売だと、一対一対応になりがちだけど、 「うわぁ、ふたつ来ちゃったよ!」 っていうおもしろさで。 |
糸井 |
(笑)「ふたつ」って、 いいヒントをくれたと思うんです。 商売とおたのしみって、 そういう関係、ですよねぇ。 たしかに、ぼく自身も、よく、 楕円構造っていう言い方をしてまして。 作り手の側にも、楕円のように、 中心がふたつあるというふうに 持っていかないと、 自分で自分を 追いこんでいくようになると思うんですね。 それが結局は、受け手の側にも、 不自由な思いをさせてしまうから。 住まいで言うと、ぼくは今年じゅうに、 たぶん京都に行くようになって、 東京とふたつの拠点で 仕事をするようになるはずなんです。 それがあるおかげで、ぼくもラクになるけど、 ラクになったぼくの影響を受ける社員たちも、 ラクになるだろうと思うんですね。 ライダースナックも、両方ないといけないから、 ぼくが今あれに関わるとしたら、 スナック菓子のほうにチカラを入れて、 捨てられないようにするでしょうね。 |
重松 |
ところが今は、 それと逆の方向になっていて、 ライダースナックを復刻したら、 カードが増える方向に行っているんです。 |
糸井 |
そうなんだ? |
重松 |
ええ、だからそれは、違うだろうと。 たぶん、糸井さんが 言っているようなことだと思うんですね。 ぼくも、作家をやって、 ルポルタージュを書いて、って……。 |
糸井 |
重松さんも、そうだよねぇ。 |
重松 |
ええ。 で、おそらくやっぱり小説でも、 ぜんぜん傾向の違うものを出していかないと、 やっぱりイヤなんです。 ひとつになってしまうのは避けたくて。 |
糸井 |
なるほどなぁ。 |
(おわります。ご愛読、ありがとうございました。) |
2015-01-05-MON
タイトル
チームプレイ論。
対談者名 重松清、糸井重里
対談収録日 2004年2月
チームプレイ論。
対談者名 重松清、糸井重里
対談収録日 2004年2月
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