伊藤 | 岡田さんのお皿って、洋‥‥ですよね。 というか、和食にも洋食にも、合うんですよね。 |
岡田 | 和と洋の中間ぐらいが出せればいいかなと思って、 つくりはじめたんです。 完璧に洋寄りにしてしまうと、 お箸でご飯を食べつつ、 洋風のおかずを食べることが多い、 いまの日本の食卓には、合わない気がして。 だから、あいまい、っていうとヘンですけど、 なるべく「洋」に寄りながら、 和の技術を使って、つくっています。 |
伊藤 | 岡田さんのうつわは、 どんな料理とも相性がいいんですよ。 わたしは、撮影のときもそうなのですが、 あんまり最初から 「このうつわを使おう!」と 決めて料理をするわけではないんです。 買ったばっかりのうつわは、 使ってみたらどんなかんじになるかなあという 興味が先に立つので そこから料理を考えるのですが ふだんは、たとえば鶏肉を焼いて、 食べやすい大きさに切って、 ネギを添えて‥‥というところまで来てから、 「あ、これだったら四角いお皿がいいかなぁ」と。 でも、盛ってみて、違ったと思って、 やり直したりとか、そういうことも、あります。 岡田さんのうつわは、 最初に料理を盛ったイメージと、 じっさいに盛ったイメージとの間に距離がない。 「あ、違った」ということがないんです。 いろんな意味でバランスがいい。 |
岡田 | ありがとうございます。 素材の色はけっこう映えると思っているんですよ。 |
伊藤 | この前もクレソンのポタージュを 岡田さんのスープ皿によそいました。 とてもきれいでしたよ。 |
岡田 | グリーンとか赤とか、 イタリアンカラーみたいなのが 意外と映えるんです。 |
伊藤 | たしかに。 トマトソースのパスタもぴったりでした。 でも、 黄ニラともやしのオイスターソース味のやきそばや、 香菜と長ネギのサラダとかも、すんなり。 中華でもいけます。 それからコロッケとかオムライスなどの 素朴なおかずともぴったり。 岡田さんは、 こんなうつわをつくりたいっていうのが先ですか、 それともこんな料理を乗せたいっていう気持ち? |
岡田 | こんな料理を盛ったらきれいだろうな、とか、 取り皿にいいサイズだろうなということは、 考えてつくっています。 あんまり自分でリアリティのないサイズや、 形はつくらないと思います。 時間があったらじっさいに試したいんですが、 このごろはじっさいに料理をすることは減りました。 いまは、他の人のうつわを見て、 この人のうつわ、いいな、どんな料理を盛ってみようか、 っていう好奇心のほうが強いかもしれません。 たとえばアンティークを買うときでも、 「これ、何が乗るかな?」という前提で買っています。 |
伊藤 | 岡田さんのうつわがあまりに身近すぎて、 あらためて考えたことがなかったんですが、 重さとかも、ちょうどいいですよね。 わたしは、重すぎるうつわは、使わなくなってしまう。 |
岡田 | 人によってはぼくのうつわが重い、 っていう人もいますよ。 大きさや重さって、すごく難しいんです。 じゃあどうしたら軽くなるかなと いろいろ考えすぎると、 逆にかたよっちゃって、 ヘンなものづくりになってしまう。 手仕事で平均値をつくり続けるのは、 とても難しいことなんです。 |
伊藤 | わたしは手がちっちゃいから、 グラスなどは、見た目がよくても、 すごく大きいと感じることがあります。 |
岡田 | ぼくもそうですよ。 自分のサイズでつくると、 女性のお客さまからは 大きいって言われるパターンが多いんです。 |
伊藤 | 難しいですよね。 じゃあ、最終的な形を決めるのは、自分? |
岡田 | 自分ですね。 |
伊藤 | わたしが使っている岡田さんのうつわは、 スープ皿、ディナー皿、四角いお皿、 そば猪口のようなかたちのものなどです。 そうしたベーシックなかたちというのは、 岡田さんの中で決まっているんですか。 |
岡田 | そうですね。 伊藤さんに選んでいただいた スープ皿はまさしくそうですね。 使いやすいんですよ。 大きさも大中小とあって。 |
伊藤 | わたしの使っているのは、 たぶん、「小」ですね。 |
岡田 | はい。好きなサイズを選んでいただけるように、 ベーシックなフォルムのうつわは、 サイズちがいで入れ子になるようにしています。 深さは一緒で、径だけを大きくして。 スケール感が人によって、違うので。 |
* * * | |
伊藤 | 岡田さんが修業なさった九谷青窯さんは 染付でも有名ですよね。 岡田さんもなさっていたんですか。 |
岡田 | はい、けれども、仕事とは別のところで、 ぼく自身は、手を加えていくのが あまり好きではなかったんだと思います。 どちらかと言うと「落として」いきたい タイプなのかな。 |
伊藤 | 白磁‥‥とは違うんですよね。 |
岡田 | いわゆる白磁ですと、 ここ九谷の土には鉄分が多く、 グレーっぽいというか、 ブルーのイメージになってしまうんです。 それが染付にはよく合うんですが、 染付をしないと、なんだかしっくりこない。 そんななかで、偶然、 白釉(はくゆう)という素材に出会ったんです。 |
伊藤 | 白釉? |
岡田 | 地元で採れる土なんですが、 あまりメジャーなものではありません。 素材的には「半磁器」といい、 土(陶器)と磁器の中間で、 硬くもなく、柔らかくもない生地です。 そして、意外と、強度がある。 さらに釉薬は、 透明釉をメインに錫を添加して 白く発色させています。 そうすることによって、 強度がさらにアップするんですよ。 |
伊藤 | 見た目はとても柔らかい印象なのに、 丈夫ですものね。 使っていても、ぜんぜん欠けないですよ。 |
岡田 | しかも、強度を増すために、 なるべく磁器の温度で焼いています。 もうちょっと温度を下げて、 泥っぽくというのかな、照りを出して、 雰囲気のあるつくりかたもあるんですけれど、 高温にすることによって、貫入が入らず、 ナイフやフォークを使うのにもいいですし。 タフなんです。 |
伊藤 | こちらには、金継ぎをしたうつわがありますね。 これは岡田さんの? |
岡田 | はい、自分のうつわを、 めずらしく割ってしまったので、 継いでみようと思って。 意外と、白に金が合うんですよね。 それに、けっこう金継ぎがしやすい生地なんです。 完璧に磁器化してるうつわは、 ガラスと同じなので、それ以上吸わない。 ぼくのは半磁器なので、漆を吸ってくれるんですよ。 丈夫だけれど、もし割れたら、直して使えますよ。 |
2012-08-06-MON