伊藤 | 岡田さんは、そもそも、 どんなうつわがお好きなんですか。 |
岡田 | 古典だったら、デルフトです。 古いものを探しては集めています。 デルフトっていうのはオランダの陶器で、 白いうつわなんですけど、 その白がすごく好きで。 専門的に言うと、 基礎透明釉に錫を添加して、 白く発色させているんですよ。 |
伊藤 | ということは、岡田さんの手法と 同じ系統‥‥? |
岡田 | はい、ただ、焼成温度がぜんぜん違うんですけど。 デルフトは温度が低いんです。 古典的なデルフトって、土が弱いんですね。 だから釉薬がコーティングの役割で、 強さを増しているんです。 |
伊藤 | その白がお好きだったんですね。 |
岡田 | はい、それと、食器の価格をおさえるためにも、 できるかぎりシンプルな技法でいこうと思ったんですよ。 うつわをつくって自分の生活を成り立たせるという リアリティーとして、 安定して量産できるパターンを考えたかったんです。 次から次へと技法を試して、 焼きかたを変えて、ということをしていくと、 それだけでコストを上げてしまうし、 できあがったうつわは、使ってもらうための食器には 不釣り合いな価格になってしまいます。 そういう仕事は、おそらく浮き沈みも激しいでしょう。 だから、シンプルに電気窯で、 食器が量産できる体制をつくりたかったんです。 たとえば薪窯だけでやると、 そば猪口ひとつが何万円の世界になるかもしれない。 けれどもぼくはそれを2000円台で つくりたいと思うんです。 |
伊藤 | 岡田さんはすべて手で つくっていらっしゃるんですよね。 |
岡田 | ぜんぶ、手づくりです。 型も使うんですけど、 ろくろでひいてから、 型をかぶせるというつくりかたです。 |
伊藤 | これ、とてもかわいいですね。 この、継いであるものは、 古いデルフトですか? |
岡田 | はい、デルフトです。 一番好きなうつわです。 ボディバランスとかも大好き。 割れ方も大好き。 |
伊藤 | うーん! |
岡田 | こちらはイングリッシュデルフトといって、 イギリスのデルフトらしいんですけど。 フォルムとか、なんでしょう、 経年変化のおもしろさ。 タフだけど傷ついてるところが なんかかわいいなと思って(笑)。 これは江戸の初期の伊万里。 すごくきれいなんです。 絶対に、和食、映えますよね。 江戸初期のものって なかなかこのシャープ感が 薄くてかっこいいんですよ。 |
伊藤 | 持った感じもいいですね。 |
岡田 | さすがに薄いんで、たわんでいて、 そのぶん、愛嬌がありますよね。 じっさいに使ったことはないですけど。 |
伊藤 | え! そうなんですか。 |
岡田 | ひとつしかないので‥‥。 でもなんか、むかしはきっと、 蓋開けてたのしむような料理、 たとえば炊き合わせを入れたりした感じでしょうか。 |
伊藤 | シンプルでいいですよね。 木の芽をちょこんと飾った たけのこの炊いたのとか、 そんな上品なお料理に合いそうですね。 この、重そうなうつわは‥‥ |
岡田 | これはフランスの磁器なんです。 使いやすくて、壊れなくて、 なんでも受け止める皿で、かっこいいんです。 |
伊藤 | 何を盛ることが多いんですか? |
岡田 | 昨日は、ハタハタを煮たのを盛りました。 煮物でもいいですし、意外となんでもいけます。 |
伊藤 | なるほど! どれぐらいの年代なんですか。 |
岡田 | たぶんこの作り方からしたら 150年とかぐらいだと思いますけど。 これ、道具として最高に強くていいですよ。 頑丈で。 ぼくはやっぱり頑丈なのに惹かれますね。 ちょっと使って欠けると すごく悔しい気持ちになって。 だから、自分がつくるうつわも、 なるべく、強い方がいいなと思ってます。 |
伊藤 | こちらの棚は、岡田さんの作品と アンティークのうつわが いっしょにならんでいるんですね。 カフェオレボウルも! |
岡田 | むかしのフランスのカフェオレボウルなどに とても好きなかたちのものがあるので、 すぐ見られるように並べています。 アンティークは好きですが、 日用雑器の古いものは、 じっさいに使うのをためらうほど よごれていることもありますよね。 ならばいま使えるものをと、 自分なりに、つくってみたりするんです。 その参考にしています。 |
伊藤 | あら? これはなんですか? |
岡田 | これもフランスのアンティークです。 鶏に卵を産ませるために、 巣にわざと置いておくものなんですよ。 |
伊藤 | そんな道具が、あるんですね! |
岡田 | 白も、もちろん、卵の白ですよね。 このつくりからしたら、100年以上経ってるものです。 |
伊藤 | じゃあ、旅先でも、こういうものを探して? |
岡田 | そうですね。 白いものばっかり、集めてますね。 そして、あんまり、 つながらないかもしれないですけど、 クリアなものも、好きなんですよ。 だから古いガラスも好きです。 |
伊藤 | なるほど。 透明感、質感。 |
岡田 | 揺らぎみたいな感じ。 いまのものって、きれいすぎるじゃないですか。 なんていうのかな、ねっとりしたような感じが あるものが好きなんです。 これは全部イギリスのグラスなんですけど。 だいたい、150年とか200年ぐらい。 手が込んでいるのが、わかると、 そのことがまた、いとおしくて。 |
2012-08-08-WED