伊藤 | でも、「ファストファッションでいいか」 みたいにはならないですよね。 |
岡戸 | だって、ずっと長く着たいもん。 |
伊藤 | 「長く着たい」、そうか、なるほど。 じゃあ、靴も? 長く? |
岡戸 | 長く履きたい。 だから、底張りだけ 替えてもらったりもしてますよ。 |
伊藤 | お手入れも、まめに? |
岡戸 | 編集部時代、靴とアイロンがけは、 もう大変な、土日の行事でした。 今は、全然だめかも。 |
伊藤 | 手入れはされてますよね。 |
岡戸 | 手入れはね。汚いのは嫌だから、するけれども、 本当昔はちゃんとしてたんです。 底だけ張り替えるなんて、 普通の人はやらないじゃないですか。 やってるかな、みんな? |
── | 男性は、やりますよね。 |
岡戸 | 紳士靴には多いですよね。底張り全部取っちゃうやつ。 |
── | 替えられるほうを買います。 「張り替えできますよ」って言われると、 「よし、長く履けるぞ」と。 |
伊藤 | なんか男っぽいんじゃないですか、岡戸さんは。 |
岡戸 | 選んでる靴がきっとそうなのかもね。 メンズっぽい靴が好きなんだと思うんですよ。 だから、ヒールじゃなくて、ぺたんこの底張りの靴。 面倒くさいの、探したりするのが。 |
伊藤 | 面倒くさいだけかなぁ? |
── | 本当に面倒くさい人は、 手入れもしないですよ。 |
岡戸 | そうか。 |
伊藤 | そうそうそう。 |
── | 使い捨てができるような、 もうシーズンシーズンで。 |
岡戸 | わかった。面倒くさがり屋なうえ、 長く着れたほうが、 ファッションのサイクルに 巻き込まれずに済むんですよ。 「買わなくたっていいじゃん、あるもので」 って、そういう気持ち。 |
伊藤 | 「今年の春物どうしよう?」 みたいなことを考えたくない。 |
岡戸 | そうそうそう。 |
伊藤 | あるあるある! |
岡戸 | あるでしょう? |
── | 伊藤さんは、ワードローブが少ないんですよね? |
伊藤 | わたしは、少ないうえに、 スタイリストという仕事柄、 シーズンごとに入れ替えるんです。 全部じゃないですけれど。 忘れちゃうんですよ、同じものを着て 「前回と同じですね」と言われると、 職業的にどうかと。 |
岡戸 | 人前に出ることが多いですものね。 |
伊藤 | あと、38歳くらいから、 何着ていいかわからないようになって! 二日酔いの日の朝に顔がグレーになり始めてからですよ。 |
岡戸 | (笑)そこから? |
伊藤 | もうちょっと行くと、青緑になるらしいですよ。 |
一同 | あはははは(笑)。 |
岡戸 | 青緑ねぇ。 青緑に合うおしゃれしなきゃ。 |
伊藤 | その辺りから、顔の輪郭がぼやけてきて、 「あれ?おかしいな、おかしいな」 みたいになってきて(笑)。 |
岡戸 | かなり私もぼやけてるもの。 全身がね(笑)。 |
伊藤 | その頃から、何着ていいかわからなくなった(笑)。 本当に。 で、絶対、私がそういうふうに思ってるのと 同じようなことを思ってる人、多いと思うんですよ。 そこで、大人のおしゃれの本を出したいと思ったの。 きれいなモデルさんとか 女優さんのおしゃれの本を見ても、 「あなたはきっと、 服に合わせて体形変えられる人でしょう?」みたいな。 だから、変えられない人のために、 騙し騙し着ている人のためのおしゃれの本がほしい。 |
岡戸 | いいと思います。 それは、是非ともお願いします。 |
── | 伊藤さん、白いシャツは、 お部屋で着るっておっしゃってましたよね。 |
伊藤 | そうですね。白いシャツは1年に何枚か買います。 ただ、それを外にあんまり着て行かないもんだから、 家で着てる。 |
岡戸 | なんで外には着て行かないの? 似合ってるのに(笑)。 ほら、今日みたいに。 |
伊藤 | 今日はお揃いにしたくて。ふふふ。 |
── | 岡戸さんは普通に買い物‥‥たとえば食材買いに行く時も、 同じスタイルなんですか? |
岡戸 | そんなことないですよ。 でも、そうね、夏場でも、Tシャツの上に 襟つきのシャツを羽織ってるかも。 それは、さっき伊藤さんが言ったように 「この辺がぼやけてる」年齢だから、 Tシャツ1枚だとちょっと自信がない。 ちょっと隠したいっていうとき、 襟つきのシャツって便利ですから。 |
伊藤 | ボタンを替えたりとか、 そういうことはしないんですか? |
岡戸 | しないですよ。『Olive』ではみんなに 「しましょう」って言ってたけど(笑)。 そうそう、この間、オレンジ色のTシャツを買ったのよ! |
伊藤 | オレンジ色? |
岡戸 | グレーみたいな顔で、白いTシャツ着てたら、 「いつもその色ばっかり」って言われて、 「じゃあ、赤買います」って。 重ねて着たらどうかしらと、 私の頭の中では、今、思ってるけど。 |
伊藤 | 白いTシャツと重ねるんですね。 どっちを上にですか? |
岡戸 | 白を上で。 |
伊藤 | やっぱり白なんだなぁ。 値段とかは、別に気にしない? |
岡戸 | してますしてます(笑)。 |
伊藤 | (ならんだシャツを見て) このシャツは、開襟風なんですね。 |
岡戸 | そう、開襟が一時好きだった時期があるの。 なんかの映画観て、きっと。 |
伊藤 | もしかしてオードリー・ヘップバーン? 『ローマの休日』? |
岡戸 | オードリー? どうだったかなあ。 でも昔のヒロイン、これですよね。 |
── | ベスパに乗るシーン、そうですよね。 |
PictureLux/アフロ |
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岡戸 | 開襟が好きだった。 ただ、もう開襟の形が、 当時のものは大きすぎて、着られないんですよ。 |
伊藤 | 白いシャツっていっても、 パターンも違えば素材も違うし、襟の形も違うし。 じゃあ、やっぱり白いシャツを選ぶにしても、 岡戸さんは「違う服を選んでる」んですね。 |
岡戸 | そうですよ! |
伊藤 | そうですよね。 岡戸さんにとってはすべて、違う服なんでしょうね。 他の人だと、色を変えたり、 デザインを変えたりするけれども、 岡戸さんにとっては、わずかな違いが大事。 |
岡戸 | そうそう。これは、ステッチがあるから買ったとかね。 わたしが選ぶ、白いシャツは、みんな違う服。 |
伊藤 | 「白いシャツは、みんな違う服」! 謎がとけた気がします。 |
岡戸 | ほんとう? こんな感じで、いいの? |
伊藤 | 写真撮らせてくださいね。 |
岡戸 | わたし、苦手なのよ。 お願い、そんなに近づいて撮らないで(笑)。 |
伊藤 | ううん、かわいい、本当に、本当に。 |
岡戸 | やり手だなぁ、まったく(笑)。あぁ。 |
伊藤 | 岡戸さん、きょうはありがとうございました。 |
岡戸 | こちらこそありがとうございました。 いやだ、まだ撮るの? 写真小さくしてね! (おわります) |
2013-03-22-FRI
写真:有賀傑 |
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