- 伊藤
- 作品によって、内側に木肌を残していたりとか、
あるいは逆に真っ白の部分をつくられたり、
あるいは何度も白漆を塗り重ねられたり。
- 山本
- この器の周りの真っ白な部分は、
白を重ねて奥行きをもたせているんですよ。
- 伊藤
- 白を重ねて?
- 山本
- 顔料の配合を変えて何色かの白を作って
塗り重ねていいきます。
重ねることで強度も増していくので。
- 伊藤
- なるほど。
こちらは刷毛目が残ってるような塗り方ですね。
ひとつひとつに、個性がありますね。
- 山本
- 同じように塗る技術が僕にはないっていうのが
一番の理由かもしれないんですが‥‥。
そもそも「同じもの」を揃えようっていう意識が
ほとんどないんです。
「同じようなもの」を
いっぱい作りたいと思ってはいますが。
- 伊藤
- うんうんうん。
- 山本
- 使う方が、その中から
選んでくださればいいと思っていて。
- 伊藤
- 工業製品を買う時とは違いますものね。
1枚1枚、味わいがあるので。
- 山本
- 自分が物を買う時、やっぱり、違ったものの中から、
「あ、これが好きだな!」と選ぶ時がすごく楽しいですし。
- 伊藤
- そう、楽しいですよね。
- 山本
- 特に刷毛目が残ったりしたものは、
傷が付いてもわかりにくいので、
気楽に使えるというのもいいところかもしれませんね。
- 伊藤
- なるほど!
ところで山本さんは料理もなさるんですよね。
ご自身のうつわに、どんなものを合わせますか?
- 山本
- 僕、そんなにしないですけど‥‥
あ、昨日はカレーを作りましたね(笑)!
- ──
- カレー皿としてもピッタリですよね。
漆のうつわが、カレーに合う。
ちょっと「洋」が入っている印象なんですよね。
- 伊藤
- 形はどうやって考えるんですか。
たとえば、陶器で古いもので好きなものがあって、
それを写したりとかもなさるのかなって。
- 山本
- それもあるかもしれない。
そういうものも、見たりはしますから。
このリム皿でいうと、
リムの部分が料理の額縁の役をするので、
料理が映える。
本当に忙しくて、
コンビニでお惣菜とか買って帰っても、
このお皿に盛ると、
「なんだかおいしそう」って思ってもらえると
嬉しいですね。
- 伊藤
- そうですね。盛りやすい。
中央に、キュッて、まとまる感じがします。
これは作ってどれくらいのものなんですか?
- 山本
- これは、ここ2〜3年の間ですね。
- 伊藤
- 家で使ってらっしゃるものですか?
- 山本
- はい、出番の多いお皿です。
ちなみに、使っていくと、多少は、
下地の漆が出てくる可能性があります。
僕はそれも好きなんですけど、
気になる方には、塗り直しています。
- 伊藤
- お客様にもいろんな方がいらっしゃるんですね。
使い方とか、料理の盛り方とかも違いますし。
- 山本
- 料理の盛り方は、本当にそれぞれですよね。
僕、うつわを作る時に、
いつも自分の感覚で、
自分の料理を盛るつもりで考えるんですが、
たとえば伊藤さんが盛ると、
自分の感覚とは違う盛り方をされますよね。
それを見ると、こんどは別のうつわの形が
イメージできて、とても楽しいんです。
「あ、僕以外の人は、こういう盛り方をするんだ。
この人のための器を作りたくなってきた!」
という感じです。
だから、この工房で持ち寄りの食事会をするとき、
器だけ提供して、それぞれの方に盛ってもらうんです。
- 伊藤
- へぇ!
- 山本
- 「まさか!」っていうようなものを、
盛る方もいます。
たとえば自分では飯椀だと思ってるものに、
「ここにデザートのせちゃうの?!」みたいな。
そこで新しい発見ができて。
- 伊藤
- なるほど。
- 山本
- 自分の固定観念の中でしか、
ものができなくなってしまうのが怖いので、
とても参考になるんです。
- 伊藤
- チコリの葉っぱに白いんげん豆のペーストを乗せたものを
お皿に並べてもいいし、
こんな風にボウルにラフに盛っても。
同じ料理でも印象がぜんぜんちがう。
器を見ながら盛りつけを考えるのはたのしいです。
- 山本
- そうなんです。そんなようすを見ると、
僕としても「あっ!」っと思うんです。
そして、そこから次のアイデアがわいてくる。
「じゃあ、口がもう少し開いてもいいのかな」とか。
- 伊藤
- 必要なものごとや、料理から、形を考えるんですね。
じゃあ、普段からいろんなヒントがありますね。
お友達とご飯を食べているときでも。
- 山本
- そうなんです。すごく参考になります。
- 伊藤
- 職業柄かもしれませんが、
私は、たとえば友達の家で
ごはんをつくることになったとき、
「え? そのうつわに、それを盛るの?」
と驚かれることがあります。
「それは菜箸を刺しておく用なんだけど」とか。
花瓶みたいな縦に長いものに
葉野菜のサラダを入れてみたりするからかな。
でもそういうのを考えるのも楽しくて。
- 山本
- 伊藤さんはどんなことを考えて
盛りつけをなさるんだろう。
- 伊藤
- 私は、座る人の目線で考えているかもしれないです。
並べ方もそうですし、
この葉っぱは立てたほうがいいな、とか、
凹凸(おうとつ)があるようにしたり。
リズムみたいなものでしょうか。
- 山本
- それですね。見ていて、すごく感じました。
- 伊藤
- ギュウギュウに盛り合せても楽しいな、とか。
- 山本
- あらかじめ、ひとつのお皿に、
何種類かの料理を盛ってスタートしましたね。
普通だと、何も乗せずにお皿を置くところを、
はじめからたっぷりめに盛りつけてあって。
- 伊藤
- チョコンってしようと思ったんですが、
ギュウギュウに乗った感じもかわいいなぁと(笑)。
- ──
- 「今日はたくさん食べてね」
っていう意思表示に思えますね。
- 伊藤
- そうかもしれない(笑)!
(つづきます)
- (つづきます)
2015-03-27-FRI