「白いシャツに詳しい人といえば、あっ‥‥!」

われわれが思いついたのは、こんなかたがたでした。

「ほぼ日」でもお世話になっている、
有名なスタイリストのかた。
きれいなシャツをつくっている、
ファッションデザイナーの、あのかた。
白いシャツが制服みたいになっている、雑誌編集長の女性。
白いシャツをいつも上手に着こなしている、
クラフト作家の男性。
シャツ専門のお店をつくった、あの社長。
老舗のテーラーの、ベテラン店長さん。
‥‥などなど。

「いいねえ!」
「話を聞かせていただこうよ?」
「すぐにアポイントメントをお願いしてみましょう」
‥‥と、なったのですけれど、
「ちょっと待てよ」。
いっぽうでこんな意見も出てきます。

「その方と、白いシャツの話でもりあがったとして、
 じゃあ白いシャツを一緒につくりましょう!
 ‥‥ってなっていく‥‥のかなあ?」
「そうなると、1着の究極のシャツをつくる、
 みたいなことになっちゃわない?」
「それが『正解』かどうかって、
 まだ、わからない状態で発進することになりそう」
「その方のつくりたい方向に、進んじゃうのかなあ‥‥」
「そもそも、ぼくらのやりたいことって、そうだっけ?」

そうなのです。
「ほぼ日」で「白いシャツ」を考えるって、
「ものづくり」の側からの発信、ではあるのですが、
それより前に、ぼくらも「いち消費者」。
白いシャツを楽しんでつくる人であると同時に、
白いシャツを楽しんで着る人でありたい。

「それよりもまず、私たちって、
 どんな白いシャツがあるのかすら、
 よく知らないじゃない?」

そうなのですそうなのです。

そのときたまたま白いシャツを着ていた西本が言います。

「おれは、MUJIのものが多いかなあ」

ああ、ありますよね、MUJIの白いシャツって、
けっこう、いい感じなんだよねー。

「白いシャツ、好きでよく買うんです。
 でも、同じMサイズのボタンダウンシャツでも
 MUJIとユニクロとH&Mでは
 シルエットがけっこうちがうんですよ。
 このごろはわりと全体的にタイトなんだけれど、
 ぼくの体型には、MUJIがいちばんしっくりきます。
 形も気に入っているから、
 『これでいっかな』って思うけれど、
 着続けるとくたびれた感じが出ちゃうんですよねえ」

きっとMUJIなどの
「白いシャツ」を多くそろえているブランドって、
それを研究し尽くしているんでしょうね。
シルエットもちゃんと「今」のものなんだと思う。
そして、手に入れやすい価格であるべきなので、
「長く大事に着続けるもの」としては、
つくられていないのかもしれません。

「それで、ブルックス・ブラザーズで買ってみたんですよ。
 えいやっ! って」

そうそう! 弊社のすぐそばにあるのです、
ブルックス・ブラザーズの大きなお店が。

ちなみに、ブルックス・ブラザーズの
オックスフォード地(ざらっとしたやつです)の
ボタンダウンシャツ(襟にボタンのついている)って、
男子にはちょっとした「憧れ」。
個人的な話をしますと、
中学生のとき、すごく欲しかったんですよ。
(↑1970年代の終わりです。雑誌『POPEYE』の黄金期!)
うちの中学は比較的自由な校風だったんですが、
制服はあって、詰襟に白いシャツでした。
が、それこそ「てろんてろん」系。ださいの。
だから上級生で、ちょっと格好つけてる先輩は
「ボタンダウンシャツ」を着るのです。
それを着てると、一目置かれる感じがした。
音楽やってるちょっと不良っぽい連中も着ていたし、
あるいは「バスケ部主将で、しかも優等生」とかも。
もちろんぼくはどっちでもなかったんですが、
ボタンダウンだけは着たかった!
せめてものオシャレがしたかった!
なので中2の終わりだったか、
中3の始めだったかに買って、
思い切って着ていくことにしました。
ドキドキしたなあ。地元の商店街で、
お小遣いを貯めて買える額のものだったけど、
オックスフォード地のボタンダウン、
というだけで嬉しかった!
あのときくらい、買うのも着るのも
「嬉しかったシャツ」って、なかなかないです。
「ぼくも、いいオックスフォード地のよさが、
 やっとわかりましたよ」

西本によれば、
「アイロンをかける必要がないこと」が大きいらしい。
ちょっと高いだけに、生地がいいので、
ノーアイロンで着ても、かっこわるくない。
そして、さらに高級ラインである
「ブラック・フリース」のシャツになると、
もっとシルエットがいいそうです。

じゃあ、「ほぼ日」がコラボしてつくりたい?

「もちろんつくってみたいことはみたいけど‥‥」
「コラボするにしても、
 『こうしてください』っていうイニシアチブが要るよね」
「その『こうして』が、ぼくらには、まだ、ない」
「やっぱり、白いシャツのこと、
 全然知らないんだと思う!」

たとえば「ほぼ日手帳」でもコラボレーションをしている、
「ARTS&SCIENCE」というブランドがあります。
クリエイティブディレクターは
スタイリストのソニア・パークさん。
「ほぼ日」の近くに
ファッションからライフスタイル全般を
提案するショップがあり、
ここんちの白いシャツは、
すごくかっこいいデザインで、ほかにない感じ!
「着てみたい!」っていう印象がある。
そして、着るとやっぱりかっこいい!

でも「ARTS&SCIENCE」のシャツを紹介する、
っていうことは、
やっぱりこの旅のゴールじゃない。
そんな気がします。

やっぱり、自分たちは
「どういうシャツが欲しいのか」ということすら、
漠然としたわかっていないのでした。

「これだ!というシャツが見つかるまで、
 一度、徹底的に白いシャツばかりを着たおす」
というのはどうだろう?
みんなの欲しい白いシャツはバラバラかもしれないけど、
それぞれが着て、いいなって思ったシャツについて、
「どうしてこのシャツがしっくりきたか」
ということを掘っていけば、
最大公約数的に白いシャツの本質が
浮かび上がるかもしれないじゃないか。

「うん! それはいい!」
「でも、そんな、『徹底的に着たおす』って、
 それができる場所ってあるんでしょうか」
「白いシャツ屋さん、なんてないしね」
「それがあったらこの旅、意味ないもんね」
「ブランド、メーカー、体型、性別も問わず、
 世界中から白いシャツが集まってきている場所?」
「そんな都合のいいワードローブ、
 どこにもないよー」

‥‥ないですよねえ。しかし、あったのです。
試着がいくらでもできる、
いろんな白いシャツが集まっている場所が。

「コンテンツでいろいろお世話になっている、
 あのデパートはどうかなあ?」

それって、いせたん? 伊勢丹? ISETAN TAN TAN?

しかし。いろんなフロアに展開している
あらゆるブランドの白いシャツを
片っ端から試着させてくれ、だなんて、
いくらなんでも、わがまますぎやしないだろうか。

「ていうか、それぞれ1枚、
 買うつもりで行きましょうよ」
「そうよね、じぶんで買うつもりでいないと、
 選ぶとき真剣になれないものね」
「競馬で100円でも賭けると、
 レースを真剣に観ちゃうあの感じ?」
「こらこら」

というわけで、伊勢丹に企画書を書くことになりました。
「フロアを縦断して、
 白いシャツを試着させてください」
と。めいわくかなあ。どうかなあ?

(さあどうなったか?! 来年につづきまーす!)
2014-12-30-TUE