伊勢丹新宿店で、
「紳士物のシャツが一堂に会しているコーナー」
‥‥うーん、あったっけな?
あ、なんとなくわかってきました。
たしかにシャツだけが
ずらりと並んでいるコーナーがありますよね。
メンズ館の1Fですよね。
でもあそこって、ビジネス用じゃないかなあ。
ぼくは、ふだん、
ネクタイもジャケットもつけないので、
そういうシャツは縁がないなあと、
いつも通り過ぎちゃうんです。
それに、白いシャツってありましたっけ。
あそこって、ストライプとかチェックとかの
柄物が目立ちませんか?
「そうですよね。
棚にずらりと色・柄もののシャツが並んでいます。
でも、その、最下段の列は、
基本的に白いシャツなんですよ」
△ これを聞いて、あとで行ってきました。
メンズ館のシャツ売り場、たしかに最下段は「白」だ!
し、知らなかった!
そこには、佐藤さんたちが
選び、買い付けたシャツが
ならんでいるわけですね。
「そうなんです。
国産のメーカーさんのものもたくさんありますし、
イタリア、アメリカ、イギリスなど
海外からも買い付けたものもありますよ。
なかには伊勢丹のオリジナル商品や、
海外の仕様を、日本人の体型に合ったものに
調整をしてもらったものもあります。
そういうシャツのなかから、
それぞれの体型をすっきり見せるシャツを
探せると思いますよ」
「なら、ぼくの腕の短さも解消するでしょうか?!」
と、横から西本が叫びます。
そう、西本は、マラソンをやって
体型はシュッとしているのですが、
もともと腕が短いことがコンプレックス。
もちろんそれも個性だと思いますが、
ぼくのなで肩同様、本人はちょっと悩んでいるのです。
「じょうずにシャツを選ぶと、
その人の体型をいかして、
その人らしさをのこしたまま、
バランスよく見せることができますよ。
どんなメーカーのシャツが合うのか、
どこをどうお直しすればいいのか。
現場で、そんなアドバイスもさせていただきたいです」
こ、これは! 紳士物は、けっこう解決の糸口が、
見えてきた気がする!
ていうか、すごくほしくなってきました。
佐藤さん、岡田さん、
ぼくらがじっさいに買い物をするのに、
おつきあいいただけますか。
「もちろんです。
それから、5階になりますが、
シャツのオーダーメイドのコーナーがあります。
そこは私の担当部署ではございませんが、
合わせて、ぜひごらんください」
お、おーだーめいど!
それは、まだ足を踏み入れたことのない場所、
なんというか、聖地っぽいです。
オーダーメイドって、
一流のビジネスマンとか、
政治家とかがやることじゃ‥‥?
「(笑)いえいえ、堅苦しくお考えにならずに。
それに、とてもリーズナブルに
おつくりいただくこともできるんですよ。
ぜひ見学だけでもしていってください」
わかりました。おそれずに、のぞかせていただきます!
すみません、
ついつい紳士物ばかりの話になっちゃいました。
婦人服でも同じように、
白いシャツが一堂に会しているコーナーって、
あるんでしょうか。
伊勢丹さんは、あらゆるデニムを集めたコーナーを
つくっていらっしゃるくらいですから‥‥。
「いいえ、残念ながら、婦人服のシャツは、
紳士物とは、ちょっと考え方がちがうんです」
婦人服商品担当の林さんが言います。
「紳士服のようにシャツが一堂に会するような
コーナーはないんです。
ブランドごとに全体のコーディネートのなかで、
シャツをひとつのアイテムとして、
提案しているんです」
つまり、紳士もののシャツは、
ビジネスウェアの必需品。
細かく分類されたシャツのなかから
お客さまが希望する型を提案することが
求められるのだそう。
いっぽう婦人もののシャツは、
紳士ものに比べたらそういう用途への要望はすくない!
そうですよね。
そもそも紳士服の「ネクタイ、ジャケット」のように
大勢の人が同じ方向を向いた制服的な服装文化って、
婦人服には、ほとんど、ないですし。
だから、シャツも、ブランドごとの展開になるんだ!
だから「シャツ単体」でというよりも、
全体のコーディネートのなかで、
シャツをファッションに取り入れる、
それが婦人ものの特徴なんだろうなあ。
アシスタントバイヤーの小島さんが言います。
「婦人服は、ひとくちにシャツといっても、
かたちのバリエーションが、
紳士服にくらべて圧倒的に多いんですよ」
「そうですよねえ、
エレガンス系、モード系、ナチュラル系、
いろいろな表現がありますよねえ‥‥」
と、ゆーないと。
「男性がうらやましい~。
どんな人にも似合いそうで!
女性は、そうはいかないだろうなぁ。
女性はとにかく、それぞれに好みのブランドがあり、
ブランドによっては洋服の形も素材も
大きくちがっちゃうから、むずかしい。
でも、もしかしたら、ジャンルの壁を乗り越えて、
多くの人に似合うシャツって、あるような気もします。
いや、あってほしい。奇跡のシャツ!」
そうですよね、シャツにかぎらず、女性の服って、
布いちまいがドレスになるような自由さがあります。
シャツには「襟がある」「袖がある」
「前をボタンで留める」みたいな、基本形はあるにしても、
紳士服にくらべたら、そのバリエーションは、
たしかに(想像できないくらい)多いしね。
同行した、ももも言います。
「シャツ選びってすごくむずかしいな、
って思っちゃうんです。
似合うって言われても、じぶんは着たくなかったり、
まだその年齢じゃないなって思ったり、
合わせるほかの洋服を持っていなかったり。
『なりたい自分』のイメージに合わないと、
お財布のひもがゆるまなかったりします‥‥」
ええ、そうなの?
似合うって言われたらその気になったりしない?
すると、ゆーないとは、
「女性というか、わたしがなのかもしれないけど、
もしも人に薦められて買ったとしても、
実際に自分が納得しないと、なかなか着ないんです‥‥。
でも、プロの方に、
『あなたこれ似合う、ぜったいこれよ。
これを着れば、新しいあなたになれるわよ!』
なんてお薦めされたら、ちがうかも?」
そっかあ。男子がわりと「必要」を感じて、
なで肩にしても腕の短さにしても、
具体的に「解決したい問題」と
「ほしいシャツ」のイメージがあるのに対し、
女子はそういうわけじゃなく、
あくまでも「アイテムのひとつ」だから、
こんなふうな躊躇がうまれるんだ。
つまり、この日の打ち合わせの結論は、
「男子と女子、別々の機会をつくって
試着&お買い物ツアーを」ということ。
ノリノリの男性陣と
まだまだピンと来ていない女性陣。
(ミーティングが終わってもなお、
彼女たち、「いく気満々だけど、あるかなぁ‥‥」
「白いシャツで新しい自分、見つかるかなぁ」
「かっこよく着れたらうれしいなぁ」
と、つぶやいておりました。)
まずは男子編からやってみましょう!