- 武井
- さて! 試着レポートが終わったので、
みんなに感想を訊いてみようと思います。
まず──このなかでいちばん「白いシャツ」経験が
長いのは、じつは、田路くんなんですよね。
- 田路
- はい、以前の勤め先では、
スーツを着て、ネクタイをしてました。
中は当たり前のように白いシャツです。
毎日着るわけなので、
枚数を持っていないと回らないから、
ファストファッションの店で数を揃えて。
だからシャツは「消耗品」っていう感覚でした。
- トミタ
- 夏でも?
- 田路
- 夏でもスーツ、白シャツ、ネクタイです。
- 廣瀬
- 「ビジネスマンとしてのおしゃれ」というのかな、
そういう気持ちにはならないものだった?
- 田路
- スーツ勤務の人はよく
「おしゃれする所がない」って言うんですよね。
ましてやぼくのように若いと、
たとえばカフスをしてみたいと思っても、
僕が買っていた価格帯のところでは、
そもそも、そういうシャツがないんです。
どれを買っても一緒だし、その代わり安いから、
忙しくて洗濯とかクリーニングに出せなくても、
数さえあればなんとかなる、って。
そういう仕事をしてると、
クリーニング屋さんが開いている時間に
住んでいる街にはいないことも多くて。
- ゆーないと
- きっとそうですよねえ。
- 田路
- そこにお金もかけられなかったですし。
- 武井
- 今回、田路くんは久しぶりに白いシャツを買いましたね。
「ほぼ日」での仕事は、基本的にノーネクタイで、
ふだんはTシャツでもかまわない。
お客さんに会う時も襟付きのシャツで、
という程度だった。そんなところから、
久しぶりに「いい」白いシャツを見に行ったわけですが、
どんな気持ちになりましたか。
ずいぶん驚いていたみたいだけど。
- 田路
- 仕事用のスーツのシャツっていうと、
あんまり高いものじゃないっていうイメージが
僕の中には、もうできちゃっていたんですが、
「ああ、それとは、ちがうんだな」と。
あの場では、店員さんもお客さんも、
みんながきれいにしていましたよね。
そういう場所で、自分がどういうシャツを着たら、
そこにうまくしっくりくるだろうか、
その場にふさわしいかなって、すごく考えました。
仕事用のシャツっていうより、
本当にハレの日のシャツっていう感じで。
- ゆーないと
- 武井さんは、伊勢丹新宿店が好きで、
よく行かれていると思うんですが、
メンズ館の1階も「庭」みたいに‥‥?
- 武井
- そんなことはないです。
僕はネクタイをつけたり、
スーツを着る仕事をしてこなかったので、
服が好きといっても、カジュアルウェアばかりで。
だから伊勢丹新宿店メンズ館の1階は、
ビジネスマンのオシャレのフロアだなあと思っていて、
いつも通り過ぎていたんですよ。
歩いていても、目に入ってこなかった。
- ゆーないと
- たしかに、自分の世界じゃないと思うと、
スルーしちゃいますよね。
- 武井
- そうなんです。だから、シャツのコーナーで、まず、
棚の一番下の段が全部白いシャツだっていうことを知って
ほんとうにびっくりしました。
「あ、こんなにいっぱいあったのに、見えなかった」
と思って。今までは、デザイナーの名前であるとか、
今年はこんな感じだとか、かわいいチャームがあるとか、
そういった個性でシャツを選んでいたんですよね。
ジャケットを選ぶ、シャツを選ぶ、Tシャツを選ぶ、
それはあまり変わらない感じだった。
けれども、ちゃんとシャツを選ぶってなると、
SMLじゃなくて、
身体のサイズをメジャーで測るところからなんだと。
それがものすごく新鮮で。これまでは試着しても、
「ちょっと大きいけどいいか」とか考えていたのが、
まるで違う世界でした。
肩の縫い目が、内側か外側かとか、
ウエストがどのくらい絞られているかとか、
こまかなチェックポイントがたくさんあって、
「じぶんに合う」ということがどういうことかを
教えてもらった感じです。
- もも
- 見ていても楽しそうでしたよ、試着。
- 武井
- 僕はなで肩っていうのが
いちばん目立っちゃう特徴なんですが、
さらにお腹がちょっと出てるとか、
トレーニングしすぎで厚みがあるとか、
身長のわりに首が太いとか、
なかなか厄介な体型のはずなんです。
けれどもそれをまったく否定されずに
受け入れてもらったのがすごくうれしくて。
だって、デザイナーものの服だと
「お客さまに合うサイズはございません」で
終わりだったりするから!
- 一同
- (笑)
- もも
- だから楽しかったんですね。
- 廣瀬
- でもね、ほとんどの人がそうだものね。
みんなモデル体型なわけじゃないし、
そもそも、シャツ王国のイタリアに行くと、
イタリアのおじさんたちなんて、
ほんとにたっぷりしててもかっこいいじゃない?
そういうことなのかなと。
「その人に合ったシャツ」があるんじゃないかなと。
- 武井
- 面白かったのは、男は、同じシャツでも、
着る人によって全部表情が変わること。
それがいいなぁと思って。
僕と廣瀬さんは全然体型が違うんだけれど、
同じシャツを試着することができるんですよ。
- トミタ
- 男の人は、ぴたりとくるシャツを着ると、
急にシュッとするんですよね。
- 西本
- あ、そうです。背筋が伸びるっていうか。
- ゆーないと
- やっぱり、正してる感じがするんです。
背筋をこう、ちゃんとみんな。
- 田路
- それはファストファッションのシャツでは
味わったことのなかった感覚です。
- トミタ
- 男子編では、襟の形も特徴的でしたね。
- 西本
- 「カッタウェイ」。
廣瀬さんのシャツが、台襟が高くて、
いちばんわかりやすいかな。
僕のほうが鋭利な感じですね。
- 廣瀬
- 全体的にタイトなんですけど、
首もとでキュッと引き締めている感じがありますね。
なんだろうな、靴で言うと、
靴ひもをグッと絞めて、タイトに履くと、
靴のラインがきれいに見えるでしょう?
それと似ているかもしれない。
あと、僕ら、普段はシャツの裾を出して、
ずっとダラダラしてるんだけど、
このシャツに関しては、入れたいんです。
ふだんデニムを履いてるし、
出したほうがカジュアルっぽいんだけど、
入れたくなるんですよね。
- 武井
- 出すと、ちょっと長いんですよ。
その「ちょっと」が、だらしなく見えることがある。
出してもいい裾の長さというのがあるんですね。
なんでもかんでも出せばいいってもんじゃない。
- 廣瀬
- それと、シャツをインしていると、
動いているうちにボコボコ出ちゃって、
それがまただらしなく見えるのが嫌だった。
それが、このシャツに関しては、
「出ない」んですよ。だらしなく出ない。
- ゆーないと
- そうか、だから長いんですね!
- 武井
- 昔は、股の下まであって、
ボタンで止めていたらしい。
それがセパレートになって
「トランクス」(下着)になったという。
だからトランクスはシャツ生地が基本なんだよね。
- ゆーないと
- ロンパースのような!
- 武井
- 男子のシャツにはその文化はなくなったけれど、
女子のシャツには、デザインの遊びとして、
残っていたよね。
シャツがそういうふうに使われていた時代、
英国ビスポークの名残を、あえて使って、
それがチャームになっているような。
- トミタ
- シャツって、これまで、
なんとなくしか選んでなかったんですけれど、
今回初めていっぱい見せてもらって、いっぱい話して、
いっぱい試着して。
やっぱり伊勢丹の方の見立ても上手というか、
説明もすごくおもしろくて!
着方ひとつで、見え方がかわる。
- もも
- ほんとうにそうでしたね!
- トミタ
- 襟のあけかた、ボタンの留め方、腕のまくり方、
そして、裾を入れるか入れないか。
さらにそれだけじゃなくて、
ボトムスを着替えさせてもらったりとかしたので、
それによって、またシャツの見え方が変わるんですよね。
- 廣瀬
- 変わったね!
- トミタ
- 「白いシャツ」一枚でも、
こんなに表情が変わるものだっていうことを、
初めてちゃんと理解したように思います。
その上で、着てみて、好き嫌いがある。
- 武井
- 女子は、そうなんですよ、
トータルコーディネートの中のシャツなんですよね。
男子はそれはあまりなくって。
「ズボンを変えてみましょう」はなかった。
もちろん、ないわけじゃないんだろうけれど、
女子はそのバリエーションがものすごい多い。
そもそも、女子のみなさんは、
最初、どんなことを考えていたの?
- ゆーないと
- 今までの自分とは違う、
ちゃんと似合う白いシャツと出会いたいということ。
そういう人になりたいな、っていうか。
- 武井
- ちゃんと白いシャツが似合う女性って、
どんなイメージ?
- ゆーないと
- ジェーン・バーキン。
- 廣瀬
- わ! また大きく出たね!
たしかに似合うね。
- ゆーないと
- ああいう、カッコいい女性。
- 武井
- ジェーン・バーキンは
生き方から含めて
全部カッコいいからなぁ!
2015-07-16-THU