矢野顕子さんが、
(糸井重里もお手伝いしますが)
気仙沼で「稽古場」という名の
ワークショップを開くことになりました。
開催日は、12月16日(日)。
いったいどんなものにするか
矢野さんと糸井がふたりで話し合いをしています。
しかし、ここにきて
「ワークショップ」という、
いかにもイベント的で
意味のよくわからない言葉が
どうやらふたりとも
お気に召さなくなってきたようで‥‥‥。


アッコちゃんって、もともと
「なにかを教えたい」って人じゃないもんね?
ぜんぜん、教えられないよ。
コツっていろいろ
あるとは思うんだけど。
「座ったらいきなり
 『エリーゼのために』がすらすら弾ける」
とかね(笑)、そんなことはちょっと‥‥。
そんなことって、ホントは
誰も求めてないんだよね。
うーん‥‥。
こうして話していると、やっぱり
「矢野顕子といっしょに曲をつくろう」
というのがいいんでない?
そうだね。そんで、
打ちあげみたいにして、
いっしょにめし食うのも、いいかもね。
それはいいね!
でもね、こういうワークショップにありがちな
「できました」「よかったね」
というのが、おれは嫌なんだ。
うん、うん。
「できた」と言えば、なんでもできるでしょう?
お題をもらったら
アッコちゃんはすぐに
歌がつくれちゃうでしょう。
だけど、観念でどうにかしようと思って
いいものをつくるなんて
ほんとうは無理だよね?
そうなのよ。
実力とクリエイティブが重要です。
たとえば、アッコちゃんが
どんだけすごいかということの
一部をお話しますとね。
お願いします(笑)。
あの「気仙沼においでよ」という歌を
例に挙げましょう。
聴いたことない人は聴いてみてくださいね。



あの歌は、ぼくたちにも、地元の人たちにも
とてもウケたのです。
それは、歌に
「自分」が入っているからではないでしょうか。
そうね。遠くの人も現地の人も
「おれたちの歌だ」と思えた。
だってみんな、泣くもの。
そして、歌えるメロディーである。
そこが重要です。
ね?
あの歌をつくる前から
矢野顕子はそう思っていたはずです。
つまり「歌える歌にする」というモードに
入ってから、つくってるんですよね。
あの「気仙沼においでよ」は
自分のための歌ではなく、
みなさんに歌っていただくための歌です。
そういう意味じゃ、この仕事こそ、
10年前はできなかった。
昔のわたしには、とてもできない。
そうなんだ。
たぶんね。
それができないと、きっと
ほんものじゃないのかもね。
そうかもね。
だから、このワークショップも
アッコちゃんのそういうすごみを
感じられるようなものにしたいのです。
アッコちゃんが
ふだんひとりでやってることがわかるような
ワークショップがいい。
そんなこと、したことないよ。
でしょう?
そこでできたものが、
なんだか、ものすごくいいものだと
うれしいよね。
それでないと、嫌だね。
嫌ですか(笑)。
こういうことってだいたいが、
さきほど糸井さんが言ったように
「お題拝借」のようなことになります。
それで、
「矢野顕子がお料理いたしますわ」
ということになるんだよね。
それは芸として見せれば、
すごく感心されるだろうけど、
脂汗をたらして歌をつくるのとは
違う話です。
つまり、いいものをつくるって
簡単じゃないんだよね。
簡単じゃないよ。
そこを、言葉で関わってもらいながら
いっしょに見て体験してもらう。
遊びじゃない、本気のワークを見せる。
やってみるのはいいね。
2部構成にしてみようか。
(つづきます)
2012-10-26-FRI


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