宮藤 |
しりあがりさんが原作の漫画を連載中、
たとえば
『真夜中の弥次さん喜多さん』から
『弥次喜多
in DEEP』に
うつったときとか、
映画化の話はあったんですか?
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しり
あがり |
あ、ありましたよ。
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宮藤 |
今だから言えることなんですけど、
この漫画を映画化したいなんて
なかなか思わないだろうな、
と思うんですよ。
その人、勇気あるなと。
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糸井 |
それ、じぶんのこと?(笑)
いや、「勇気あるなぁ」は
こっちが聞いてみたかったよ?
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宮藤 |
あ、いやいや、えーーっと。
ぼくはもともと小劇場でやっていて、
そこではしりあがりさんの漫画から
影響を受けた、いわゆるナンセンスや
シュール系のものが多かったんです。
だから『弥次喜多』のお話が来たとき
今までどおり
やっていいんだなぁと思ったんです。
それと、だれかがやるくらいなら、
オレがやるぞという気持ちもありまして。
しりあがりさんとはもともと知り合いだし、
もしなにかあっても
「もうこれきりだ!」みたいなことには
なんないだろうなって。
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糸井 |
ケンカにはならなそうだよね。
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宮藤 |
ええ。
場合によっては原作の人から‥‥。
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糸井 |
「なんなんだ、あれは!」
と言われることがあるでしょうね。
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宮藤 |
映画化するということを
すごく期待している
原作者の人がいますよね。
じぶんの作品を
映画化したいと思っている人。
聞くところによると
モメて撮れなくなったとか
公開できなくなったということも
たまにあるらしいんですよね。
ぼくはありがたいことに
今までにそういう経験はないんですけど。
だから、原作もののときは、
原作者の人柄が
いちばんと言っていいくらい
重要なんですよねー。
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糸井 |
(笑)大事ですよねー。
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宮藤 |
はい。しりあがりさんとか、
みうらじゅんさんとか。
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糸井 |
それ、共通のなにか
ヘンなものを感じますね(笑)。
どこが似てるんだろう、
「いい、加減」だってことですかね。
こうでなければならない、
たとえば「花といえば赤なんだ」とか
「にぎりめしの具は梅干しなんだ」
とかさ、そういうことは
言わないでしょうね。
どっちでもいいと思ってますよね。
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宮藤 |
ええ。
必然的になんでしょうけど、
ぼくはだんだんやさしい人とばかり
組むようになってきて(笑)。
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糸井 |
ぷっ。
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宮藤 |
究極ですよね、『弥次喜多』がもう。
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しり
あがり |
たいせつなことかもしれない。 |
宮藤 |
けっこう、もう、
‥‥(しみじみと)モメたくない。
だって、おんなじものつくるんだったら、
人柄のいい人のほうが
いいに決まってますもんね。
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しり
あがり |
モメていいものつくるより、
モメないで
ちょっとつまんないものを
つくるほうがいいな。
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糸井 |
‥‥(笑)それ、すきっ。
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宮藤 |
そこまで言う!(笑)
ま、ま、わかりますけどね!
ちょっとつまんないものは、
忘れることができますもんね、
モメてなければ。
モメてつまんないものは、
かなりきついですけど。
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しり
あがり |
モメればぜったいにいいものができる
っていう保証があれば、モメますけど。
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糸井 |
保証、ないもんね。
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宮藤 |
ないですよね。
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糸井 |
あと、本当につまんないものって
つくるのむずかしいですもん。
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宮藤 |
逆にむずかしいですよね。
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糸井 |
アウトになるために
バッターボックスに立てと
言われるようなものですからね。
そんな練習してない。
いちおうショートの頭抜こうとかさ、
ゆるい打球でセカンドの上
通っていこう、とかさ、
そういうこと考えますからね。
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宮藤 |
そうですよね。
長いことやっていれば
一発くらいあてなきゃ、と思いますよね。
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糸井 |
そういう意味では
つまんなくなるってことは、
人柄がよければ、ないよ。たぶん。
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宮藤 |
そうだといいなぁ。
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糸井 |
よっぽどいい気になってね、
人柄のいい人どうしが
酔っぱらっちゃった場合ね、
「さいっこうだ、しりあがりちゃーん」
みたいになっちゃったら。
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しり
あがり |
「ちゃん」はヤバイですよね!
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糸井 |
うん。「ちゃん」がついて
歌なんかうたっちゃったら、
まずいかもしれない。
でもお二人は
そういう方々じゃないでしょう。
おたがいに「さん」がついてますよね。
‥‥昔はこうじゃなかったんだよな。
一般論として
「ぶつかりあって、議論してこそ!」
みたいなさ。
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宮藤 |
そういうのは
今、変わってきてますよね。
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糸井 |
変わってきてます。
みんなが同じものをおもしろいって
思わなくなったときに
変わるんでしょうね。
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宮藤 |
ああ、なるほど。
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糸井 |
米の飯しかないときには
炊き方にもうるさいけど、
おかずがあったら、
「ご飯、ちょっとやわらかかったけど
まぁいいか。
トンカツも食べてね」
って言って食べるよね。
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宮藤 |
「大丈夫大丈夫」って。
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糸井 |
そういう時代にいてよかったね。
オレも間に合ってよかったよ。
昔はやっぱり居心地わるかったんですよ。
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宮藤 |
あ、やっぱりそうなんですか?
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しり
あがり |
議論になるんですか、その都度。
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糸井 |
やっぱりねぇ、陰であいつは
ただの無茶なやつだ、
みたいに言われてる雰囲気っていうのが
花粉のように飛んでるんですよ。
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宮藤 |
なるほどなぁ。
なんか想像できる気がします。
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糸井 |
ときどきは、ちいさく、
「ぶつとぶつからね!」みたいなことを
言い返しつつ。
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宮藤 |
「ぶつ」って、ちっちゃいですね!(笑)
いやー、つらいですねぇ(声が裏返る)。
ぼくはもう、
放っておかれてる感じでちょうどいいな。
ぼくの周りには
花粉なんて飛んでない感じ。
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糸井 |
そうでしょう。
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宮藤 |
ぼくは、その花粉が
飛ばないようにすることに
エネルギーを使ってるかも
しれないです。
ぼくが映画を撮ったときに、
映画の人からなるべく‥‥。
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糸井 |
「映画の人」!(笑)
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宮藤 |
映画界の花粉をなるべく
花粉を吸い込まないように‥‥。
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糸井 |
マスクして。
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宮藤 |
ええ、花粉症じゃないふりして
息止めてるようなとこはありましたね。
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糸井 |
うちへ帰って
「ハーッハーッ」って息するような。
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宮藤 |
それでなんか、批判めいたことを
わーって言われたら
ぼくなんてダメになるし、
嫌われたくないですもん、やっぱり。
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(つづきます)
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