宮藤 |
しりあがりさん、
髪の毛切られましたよね。
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しり
あがり
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昨日床屋行ってきました。
たまに行くんですよ、ぼくも。
半年にいっぺんくらい。
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糸井 |
え、会社員時代は?
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しり
あがり
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会社員時代は
3ヶ月にいっぺんくらいです。
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糸井 |
しりあがりさんは
きれる会社員だったんですよ。
バリバリの社会人。
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宮藤 |
へえ! バリバリ!
それは知らなかったな。
かっこいいですね。
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糸井 |
ああいう、
「こーしてあーして、こーしてやるぞ!」
みたいな、「やり手成分」っていうのは、
今どこに?
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しり
あがり
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「やり手成分」は、今、テレビゲームで
『三國志』やったりして使ってますよ。
ふふふ。
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宮藤 |
ははははは!
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しり
あがり
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「アイツの弱点はここだ!」って
攻めたりして。
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糸井 |
(爆笑)
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しり
あがり
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今、すーごい役に立ってますね。
しかも年とると、あの成分って
どんどん出てきますね。 |
糸井 |
出てきますか!
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宮藤 |
えっ、「出てくる」んですか?!
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しり
あがり
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騎馬軍団の先頭に立って
子分たちを連れ立って‥‥!
いや、きっと宮藤さんにもありますよ。
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宮藤 |
どぉなんですかねぇ。
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糸井 |
あのさ、映画監督って、
役者さんより1時間くらい前に
現場に行きますよね。
ぼくなんか、そういうことを
大変だろうなぁ、
オレにはできないなぁって、
思っちゃうタイプなんですよ。 |
宮藤 |
あー。それはそうですね。
たしかに、ぼくら会社勤めとか
共同生活ができないからこそ
お芝居やってるっていう部分があるのに
意外と時間に厳しいんですよ。
考えてみたら、おかしな話ですよね。
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糸井 |
「社会性」というようなものが
求められてるじゃないですか。
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宮藤 |
そうですね。「大人計画」に、
ぼくや阿部くんが入った当時は
遅刻したら罰金っていう
制度があったんですよ。
松尾さんが言い出したんですけど。 |
しり
あがり
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(小声で)ええええ、つらい‥‥。
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糸井 |
あのね、
社会性のない人たちっていうのは、
遅刻にきびしいの。
じぶんの弱みは遅刻だって思ってるから。
だから、すーぐルールつくるんだよね。
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宮藤 |
そうそう。
そこで律しないと
本当にだれも来なくなっちゃう。
考えてみたら、
「遅刻したら人に迷惑がかかる」
ってことを学ぶまでに
時間がかかった人たちですね。
それを言ってたのが
25、6才でしたからね。
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糸井 |
いい話だ(笑)。
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しり
あがり
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うん。
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宮藤 |
だから、ぼくらって、
あんまりそういう「やり手成分」とか
「社会性」のない人たちの
集まりのような気がしますけど。
飲みに行くというだけでも
誰も仕切らないで劇場の楽屋で
ぐだぐだやってたりするくらいですから。
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糸井
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そうかー。
いや、でもそういう成分って
ぜんぜんないはずはないんだよな。
たぶんどっかにあるんですよね。
たとえばバンド*で
だれかがいい加減に
演奏をしてたときはどうですか?
(*編集部註:
宮藤さんは「グループ魂」という
バンド活動もなさっています) |
宮藤
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あ、それはイヤですね!
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糸井 |
ほら、あった(笑)。
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宮藤 |
ぼくは文句言うほうですね。
リハーサルの当日にピリピリしたり。
そういえばこの間、
バンドの本を出したんですけど、
そのなかの企画で
それぞれにパーソナルな質問をする
というのがあったんです。
「メンバーのなかで
ダメ人間はだれですか?」
という質問で、
バンドのメンバー7人中3人が
ぼくって答えたんです。
「彼はいちばんダメですねぇ」って。
人として、
ふつうにやれなきゃいけないことができてない
って意味だと思うんですけど。
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糸井 |
「基礎」が。
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宮藤 |
ええ。
「そのわりにはうるさい」みたいな感じで。
練習には間違いなく来るんだけど、
そこに来るまでが
相当ダメだ、みたいな(笑)。
道にタンはきまくって来てるような
印象らしいんですよね。
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糸井 |
実際そうなんですか?
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宮藤 |
実際わりとそうなんですけど。
‥‥いや、タンははかないですけど、
ある人のことを罵倒していて
すぐ後ろにいることに気づかない
っていうようなことは
よくやっちゃいますね。
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しり
あがり
・糸井
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あちゃーっ!
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宮藤 |
だれかに怒られて、その直後に
その人の怒りかたを
真似したりしちゃうんです。
そうするとすぐ後ろに立ってたり。
「うしろ、うしろ!」って言われて
振り返ると、その人と目が合って
「ああ、すいません」ってことは、
あの‥‥、よくあります。
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糸井 |
ばかだよ、この人は。ばかです。
その本の企画のおかげで、
社会性という意味で
オレは意外とイケてなかった、と
気づかされたんだ。
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宮藤 |
ええ。けっこうびっくりしましたね。
そう言われてみれば、映画の撮影のときも
それに近い感じがあったと
思うんですよね。
遅刻はしないんだけど、そこに来るまでが
多分すごくダメだったんじゃないかなと。
タクシーの運転手にものすごいキレて、
やっと現場に着いたりとか(笑)。
そういうダメさがあるみたいですね。
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糸井 |
バンドもそうですけど、劇団って、
ちょっとファミリーみたいなところが
ありますよね。
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宮藤 |
そうですね。
何年もやってると夫婦と一緒で
倦怠期みたいなところがあるんですよ。
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糸井 |
この役をよその劇団のだれだれが
やってくれたらなぁ、みたいなこと?
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宮藤 |
それもありますし、
よその人が客演で入ってきて
「この役オレじゃダメなんだ」
というのもあると思います。
ちょっとよその人を入れちゃったりすると
倦怠期っぽい空気がかるく流れたりとか。
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糸井 |
流れるでしょうね。
それはものをつくるときには
しょうがないことなんだけど
人間の感情ってよくばりですよね。
「欲望の三角形」っていう図があってさ、
1個のものを見たときに
ある視線が価値を認めてじろじろ見てると
その視線を感じて他のひとが
欲望をかきたてられる。
そういう三角関係があるわけです。
つまりみんなが
あいつがいい、あいつがいい、
って言うと興味なかったはずのじぶんも
「お、いいな」って思う。
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宮藤 |
それはわかりますね。
うちの役者がよその芝居に客演して
どっかんどっかんウケてるのを見ると
いい役者だなって思います。
倦怠期を乗り越えるんですよ。
「なんだよ、うちのカミさん、
けっこういいじゃないか」
みたいな(笑)。
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糸井 |
いい女っぷりじゃないか、って。
しりあがりさんは
映画監督とかお芝居とかのほう、
どうっすか。
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しり
あがり
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劇団のまねごとみたいなことは
しますけど。
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糸井 |
そういうときのしりあがりさんって
リーダーシップをとったりするの?
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宮藤 |
あのときはどうだったんですか、
「NAS」とか。
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しり
あがり
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あのときはぜんぶで3人でしょう。
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糸井 |
少なっ(笑)。
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しり
あがり
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安斎肇さんとなんきんさんとぼくとで。
あのときぼくは、2人がケンカしたら
「まあまあ」って言う役の
つもりだったんですけど、
集まってみたら全員
「まあまあ」の人たちで(笑)。
やたらゆずり合っちゃってました。
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糸井 |
そもそもケンカなんか
しないんじゃん。
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宮藤 |
みんなして「まあまあ」って!(笑)
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(座談会おしまい)
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