たのしきかな、家族。〜山田一家 取り調べ帳

『株式会社 家族』という、一冊の本があります。
(タイトルからして、ちょっと変かも?)
たまたまこの本を手にした「ほぼ日」乗組員は、
「ここに載っているたのしい家族の話は
 実話のように感じるけど、
 どこまでどんなふうにほんとうなのかな?」
と思いました。
そこで、著者とその妹(絵担当)を任意同行、
「ほぼ日」の和室で
事情聴取を行うことにしたのです。

登場人物紹介

証言13 父は新年、同じことを言います。さぁ、今年もええことありそうやなぁ! と。

ほぼ日 家族としていっしょにいたら、
その人のおもしろさには、
なかなか気づかないと思うんですが。
かおり うちは、かあさんが、けっこう
おとうさんのおもしろいとこを
教えてくれましたからね。
まき うん。
やっぱりもともとかあさんが
わたしたち娘側にいて、
いっぱい発見するから。
かおり うん。とにかく、かあさんがぜんぶ拾う。
わたしたちは幼いころ、
それを何気なく聞いてたけど、
大人になったら、
かあさんが笑ってるツボがわかってきて、
いまは、受け継いでる感じです。
ほぼ日 教育されて。
まき うん(笑)。
かおり かあさんが喜んでることって、
おもしろいもんなぁ。
まき うん。
 
ほぼ日 おかあさんが
おとうさんのおもしろいところを
どんなふうにおっしゃっていたか、
最初の記憶って、ありますか。
かおり ちっちゃいときのことで憶えてるのは‥‥、
とうさんが現場で作業して
服が濡れたから
何人かで焚き火して
作業着を干したらしいんです。
そしたら、とうさんの服だけ燃えて
ポケットだけしか残ってへんのよ、
と言って、かあさんが笑ってた。
まき はははは。
ポケットだけ?
かおり ポケットだけ残ってたんやって。
ほぼ日 想像するとすごいですね。
かおり 何かあったらまた、
とうさんポケットだけ残るんちゃうやろか、
とか言って笑ってました。
そんときは、ちいさかったから、
かあさんの言うことを
スーっと聞いてたけど
いまはおもしろいと思ってる。
ほぼ日 おかあさんの存在は大きいですね。
かおり かあさんおもしろいです。
ほぼ日 いま、かおりさんは
ブログもやってらっしゃいますから、
おとうさんはもう、パソコン使って
読んでますよね。
かおり 事務所にパソコンあるらしいけど、
使えるわけないと思います。
家にもあるけど、
使ってんの、見たことないもんなぁ。
まき ない。
でも、うちらが実家でやってたら
横にやってきて見ます。
かおり うんうん、見てくる。
まき 何か、すごくやりたそうだったから、
パソコンで、ねえちゃんの日記の
見方を教えてあげたんですよ。
そしたら、すごく
コメントしたがったんです。
「コメントを、ほな、しよか」
とか言って。
ほぼ日 かわいいですね。
まき 「こうやって、
 打つやろ、こやろ」
とか言いながら教えました。
かおり 「これは『わ』やな。
 『わ』なわけやな?」
とか言いながらね?
まき めっちゃめんどくさくて
30分ぐらいかかりました。
かおり そのコメントの投稿者の名前
「プロゴルファー」ってなってました。
全 員 (大爆笑)
かおり 「あ、あいつや!」
と思って。
ほぼ日 バレバレですね。
まき とうさんは
コメント入れた瞬間に、
ねえちゃんに電話して。
ほぼ日 コメントの意味がないじゃないですか。
まき 「コメント見てみたらどうや」
って言ってました。
かおり ははははは。
 
ほぼ日 最後の最後に、
肝心なことを訊いていいですか。
かおり はい。
まき どうぞ。
ほぼ日 おとうさんの
いちばん尊敬するところを
ひとつ挙げるとしたら?
かおり 純粋なところです。
純粋という言葉が
合ってるかどうかわからんけど。
まき それから、ポジティブですねぇ。
かおり そうやな。
ポジティブやなぁ。
ほぼ日 へぇえ。
かおり 毎年、年明け、
1月1日になったら、いつも
「さぁ、今年もええことありそうやなぁ!」
とか言ってるけど、
絶対ないもんな。
全 員 (笑)
まき めっちゃポジティブやな。
ほぼ日 その言葉は、おとうさん、
心から言ってるんですね。
かおり うん、本気で。
輝いてるもん、年初め。
ほぼ日 すごいなぁ。
‥‥いや、ぜったいそれ、
いいと思います。
だって、そう言われたとき、
近くにいる家族って
うれしいですもん。
かおり うん、そう思う。
「今年どうする?」
って言われるより
ぜんぜんうれしい。
ほぼ日 「今年もやるぞ」「がんばろう」
とかともちがう。
自分のことじゃないですもんね。
「ええことありそうやなぁ」には
何の責任もないですからね。
かおり まわりは「ほんまやな」って
言うしかないですもん(笑)。
まき とうさんには、
「ええことありそうやなぁ」
という気が。
かおり 気が、毎年してるところがすごい(笑)。
そのわりに、いつも
たのしくやってるよなぁ。
まき うん。
ほぼ日 来年の年初めには、
真似したいです。
全 員 (笑)
ほぼ日 いやぁ、たくさんのお話、
ほんとうに、ありがとうございました。
かおり いえいえ。
ほぼ日 『株式会社 家族』の山田家、
ほぼ真実でそれ以上である、ということが
判明いたしました。
これにて取調べを終了します。
みなさま、ご愛読ありがとうございました。
もしよろしければ、ご感想を
postman@1101.comまで
お送りいただけるとうれしいです。
いただきましたメッセージは
山田一家にお送りします。
それでは、最後ですので、
本日の取り調べの成果、
かつ丼、大盛りでふたつ分としましょう。
かおりまき ありがとうございました。
いただきます。
(おしまい)
本日の取り調べの成果

かつ丼、大盛りでふたつ分
※今回のこのコーナーのイラストは、父とまきさん合作です。
どちらがまきさんのかつ丼か、わかりますか?

2010-06-16-WED
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もくじ

証言1 父は毎日、空想の世界で
ゴルフのスイングをしています。
コースに出たのは、一度だけです。

2010-05-31
証言2 これは妹ではなく父の絵です。
父は原則、自分からすすんで
絵を描くことはありません。

2010-06-01
証言3 母は父の手帳だけでなく
動物も拾い、助けます。
そして克明に記録を取ります。

2010-06-02
証言4 父は携帯電話のメール受信に
毎回莫大なお金がかかると
信じています。

2010-06-03
証言5 最初の猫から数えて5匹、
何十年も猫の世話をしたせいで、
ふたりで旅行に出たことがありません。

2010-06-04
証言6 父は数年前、謎のプレハブを
建てました。毎日通っていますが
何をしているのかわかりません。

2010-06-07
証言7 おじいのビルの入居審査は、
目の前に出された黒いバナナを
平然と食べるか否かでした。

2010-06-08
証言8 父の事務所には、ひとりの
従業員がいました。
自転車で右折しかしない人でした。

2010-06-09
証言9 スーパーから出る瞬間の母の姿を
父がなぜ見たがるのか、
ほんとうのところは不明です。

2010-06-10
証言10 妹は、上京して
はじめて口をきいた男の人と
結婚しました。

2010-06-11
証言11 わたしたちだけでは
ないと思うんです。
どんどん食いつくべきです。

2010-06-14
証言12 父は、何か問題が発生すると
集中が高まり、とんでもない事態に
気づかない場合があります。

2010-06-15
証言13 父は新年、同じことを言います。
さぁ、今年もええこと
ありそうやなぁ! と。
2010-06-16
   

株式会社家族

山田かおり 著
発行:リトルモア
価格:1300円+税
Amazonでのご購入はこちら

父、母、自分、妹、そして周辺の人々。
それぞれのキャラクターが
あまりにも濃いと感じられるのは、
何も、尼崎の空気のせいだけではないだろう。
空想ゴルフと不衛生な定食屋さん巡りが好きな父、
近所の少年たち相手に
「ほんで誰がおばはんやの」とすごむ母、
ふすまの向こうの暗闇で
ひとり百人一首をくりひろげる蝉丸好きな妹。
読み進むうちに、
山田家とその周辺にぽつぽつ現れる
おかしくて不思議な人々こそが、
ほんまは世界の中心におるんちゃうかな、
という気持ちにつつまれていく。
今回の「ほぼ日」のインタビューは、
発行元のリトルモアさんにお願いして
実現しました。
著者の山田かおりさんは
「みんなの家族も、ほんまはものすごく
 おもしろいんとちゃうかなぁ」
とおっしゃいます。
ぜひ、この本を、
本屋さんで手に取ってくださいね。
ちなみに、装丁は
グラフィックデザイン界の鬼才、
祖父江慎さんです。

おしらせです。大阪で原画展やります。

2010年6月10日〜27日、
大阪のカフェダイナー「digmeout」で
『株式会社 家族』に掲載された
挿画の原画展が開催されます。
(まきさんの原画、驚くほど小さいです。
 お近くの方、どうぞ確かめてください)
6月19日には、山田かおりさん、まきさんによる
トークショーとサイン会もあり!
くわしくは「digmeout ART&DINER」のサイトをごらんください。