矢野×糸井
第4回 嫌いの中に、
    好きが混ざってた。
── 糸井さんが最初は、
矢野さんのことを嫌いから始まったと。
糸井 俺は、もう、何回でも
その話をさせられるんだけど(笑)。
矢野 ふふふふ。
糸井 こないだも、坂本くんとも
その話になった
んだけど、
わかんないものは、嫌いなんですよ(笑)。
人って。で、わかんないのに、
安定してるものって、それが安定してるとすれば、
俺は不安定なんじゃないかって
気持ちにさせるわけだから、やなんですよ。
矢野 気に障るよね。
糸井 自分じゃない人は、
それがいいって言ってたりするわけだから、
ますます自分は不安定になるわけで、
困っちゃうんですよ。
さっきの香りの話じゃないけど、
最初に、うわ、困ったな、嫌だなあ、
そんなものが出てこなきゃよかったのにって
気持ちがあることが、
逆に、後でおもしろくなる下ごしらえ、
下地ですよね。
矢野 うん。
糸井 ‥‥やあ、困りましたよ。ほんとに。
それをさ、坂本くんは音楽家だったのに、
同じようなことを言ってたのがおかしかった。
矢野 ふふ。
糸井 つまり、自分が崩壊するっていうことですよ。
あれがいいんだったら、
俺が否定してきたものは何だったんだ、みたいな。
矢野 うん。
糸井 で、こっちともつながってるし、
つながってないし、みたいなところで
ぐらぐらさせられるから、
困っちゃうわけですよね。
本人は、不安がらずに歌歌ってるわけだから。
矢野 何も考えてませんからね? うん。
糸井 そうそうそう。サルだから。言わば。
矢野 そうなんです。そ。キッ! とか言って。
糸井 困っちゃうんだよ。
考えてやってることだったら、
意地悪もできるし、
足元をすくうことだって何だってできるけど、
矢野 こっちだって、じゃあ応戦するわって。
糸井 そう(笑)。そうそうそう。
矢野 なんもないんで!
糸井 筋肉がピアノ弾かしてるみたいな風に
見えちゃうわけだからさ。
矢野 しょうがないよねえ。ほんとに。
糸井 しょうがないんだよ(笑)。
で、そのうちにはもう、
そうなったらつきあうしかないなってどっかで、
カチャっと(笑)何かが変わるんだよ。
矢野 ほほほほほ。
糸井 (笑)。
矢野 もう、いいかと(笑)。
糸井 カチャっと変えるきっかけが
CM音楽プロデューサーの
大森昭男さんて人なんですよ。
矢野 うん。
糸井 「糸井さん、アッコちゃんと仕事をしませんか」
って言うんで、えええ? と思いながら(笑)。
すごく優しいポン引きなわけだよ(笑)。
大森さんは、悪い人じゃないし、
危険なことさせるはずないし。
矢野 そうだね。
糸井 自分が悪かったのかなあと。
矢野 (笑)。
糸井 心が狭かったんだろうなと思って、
組んでみたんです。そしたら、
いや、すごい、すごい、‥‥すごいですよ。
その圧倒され方は。今でもそうですけど。
── 糸井さんが音楽の世界の人ではないから
よかったんでしょうか。
糸井 ‥‥や、僕、もし音楽の世界にいてもね、
アッコちゃんと違う意味で不勉強家だからね、
案外痛くなかったかもしれない。
考えるタイプじゃないんですよ。根っこがね。
で、後で取り繕うのに説明してるだけだから、
素は意外に、ちょっとおサルなんですよね。
矢野 違う種類の。
糸井 違う種類のおサル。
不安になると勉強するだけで、
ほっとけば、「もうそれはそれだから」って、
棲み分けちゃうと思うんですよね。
矢野 決断が早いんだよ。
糸井 早い早い(笑)。
矢野 ね。
  2006-11-29-WED

(明日に、つづきます!)
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