私と芸術、私の友情。細野晴臣+横尾忠則 私と芸術、私の友情。細野晴臣+横尾忠則
音楽家の細野晴臣さんと
美術家の横尾忠則さんが出会ったのは
1976年あたりのことでした。
そこからはじまる長いつきあいで、
対談回数はお互い「最多」相手なのだそうです。

はじめて会ったその日に
「いっしょにインドに行こう」という話になり、
ともに病気になり、YMOを結成しようともしました。
濃く薄く、かなったりかなわなかったりの交流を経て、
それぞれの世界で伝説化しているおふたりが
いま考えていること、抱腹絶倒の思い出話、
どうぞたっぷりおたのしみください。
取材協力:堅田浩二

編集:ほぼ日
第8回 生まれ変わりたくない。
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横尾
細野さんは晩年って感じ、
しないよね。
細野
横尾さんだってそうでしょう。
全然しないです。
横尾
いやいや、全然するよ。
細野
いいえ、人の弱った感じって、
わかるじゃないですか。
横尾さんにはそういうものはない。
弱ってないです。
横尾
まぁ、そうかな。
細野
会ってない人でも、
弱ってる感じは伝わってきます。
そういうのは横尾さんには全然ないです。
弱ってない横尾さんを、
ぼくの10年先を行く人として
参考にしています。
横尾
でもね、細野さん。
細野さんがぼくの年になった頃には、
世の中も10年進んでいるわけでしょう。
細野
ああ、そうですね。
変わってますね。
横尾
いままでの10年とこれからの10年、
時間の進み方も違うと思う。
だから参考にはならないよ。
これからの10年は、ぼくには想像できないです。
細野
できない。ぼくもできないです。
横尾
ぼくは向こうへ行って、上から
「ああ、細野さん、まだやってるな」
って見ますよ。
いろいろ変わるよね、これから。
ぼくは最近‥‥まぁ、
昔からこういう考え方なんだけれども、
人には宿命というものがあるじゃないですか。
細野
うん。
横尾
生まれる前に決められた約束事があって、
その約束事に従って今生を生きるわけだけども、
それに対して運命というものも、またある。
運命がつねに宿命と並走しているわけです。
細野
そうですね。
横尾
宿命どおりに生きれば、楽なんですよ。
だって約束されて、
ここに来てるんだからね。
ところが、運命がそれに「ノー」と言う。
宿命どおりに行ったらアカンということで、
いろんなことやってみたりするわけ。
それで具合が悪くなったり、商売失敗したりする。
ぼくは横着なところがあるので、
わりかし宿命に従っている。
そのかわり、なるようにしかならない。
いじくり回してなにかすれば
自分の力ですごいことができる、
この考えは運命論者のものです。
ぼくは宿命論者だから、なにもしない。
細野
うん。その感じはぼくも持ってます。
ぼくは祖父がタイタニック号に乗って
生きて帰ってきたでしょ? 
横尾
ああ、そうですよね。
細野
祖父はまだ若かったんですよ、30代で。
帰ってきたあとに、末っ子の父が生まれた。
もし海で祖父が死んでいたら、
ぼくはいないわけです。
それは宿命だと思っています。
ぼくにとっては、どっちかというと
「そっち」のほうが大きいんですよ。
だからぼくは
「ああ、なんだか生まれちゃったな」と思って
生きています。
横尾
おじいちゃんがもし
タイタニックでそのまま溺れてたら、
細野さんはいま、ここに座ってないね。
細野
そうです。
おじいちゃんは帰ってきて、
世間にいじめられました。
「なんで生きて帰ってきたんだ」ってね。
大きくなってそのことを聞かされて、
「え、ぼくは生まれてきちゃったのに」
と思ったんですよ。
横尾
細野さんを存在させるために
おじいちゃんは生き延びたんだ。
三島(由紀夫)さんは徴兵検査に行って、
はじかれて帰ってきたでしょう。
黒澤(明)さんも、はじかれた。
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細野
ああ、黒澤さん、
そうなんだ。
横尾
そう考えると不思議なんだよ。
いまの日本は、三島さんがいたから、
こういう日本なんだ。
黒澤さんがいたから、
こういう日本なんです。
細野
それはつまり、はじかれたことが
宿命ですね。
横尾
そう。
彼らは徴兵に取られずに、
定められた宿命に従いました。
だけれどもね、いまは宿命という考え方は、
前近代的と言われます。
細野
うん、そうだな。
いまはあんまり聞かないですね。
横尾
でもいろんなことは、
科学でも運命でも解明できない。
解明したって、あんまり意味もない、
ろくなことが起こらない。
細野さんとだって、いままで
10回ぐらい対談やってるけど。
細野
宿命ですね(笑)。
横尾
なぜかはわからないけど、そういうものでしょう。
もっと20回ぐらい
やってもいいかもしれないね。
10年後にまた、やりましょうか。
でも10年後はぼくはいないだろうから
細野さんひとりになっちゃうね。
細野
いやいや、ひとりじゃ対談できないです。
10年後だと、
横尾さんは90越えてるんですね。
ぼくはいまの横尾さんと同じ歳。
いったいどうなってるんだろう。
横尾
まぁ90になると、
いかにもじいさんって感じがするだろうな。
80の細野さんは、
きっとじいさんって感じはしないと思うよ。
細野
いや、それはご自分のことでしょう(笑)。
いまの横尾さんは
おじいさんって感じはしないですよ。
横尾さん、制作はいまはどんなペースで? 
横尾
1日に、描かない時間のほうが多いかもしれないね。
絵を描くのは面倒くさいんだよ。
もう飽きちゃった。
音楽はいいよね。
細野
いやいや、音楽も面倒くさいです。
横尾
ああ、そうか。音楽も面倒くさいね。
絵より面倒くさいだろう。
細野
面倒くさい、面倒くさい。
もう、スタジオに行かないです。
横尾
そうですね、人を集めなきゃいかんし。
細野
そのとおり。
横尾
ぼくは生まれ変わったら、
もう絵なんか描きたくない。
細野
え(笑)。それはおもしろいな。
横尾
ぜんぜん違うことやりたい。
第一、生まれ変わりたくないよ。
細野
うん。生まれ変わりたくないです。
休みたい。
横尾
ああ、いいね。
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(終わります。ご愛読ありがとうございました)
2021-08-28-SAT


※細野さんと横尾さんのこれまでの対談をまとめた本
(いったい何回分の対談を掲載しているのでしょうか!)が
近日刊行予定だそうです。
発売日が決まったら、
ほぼ日のTwitterなどでお知らせします。
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『YOKOO LIFE』
横尾忠則(著)

糸井重里(聞き手)

1,320円(税込)



打ち合わせや旅のあいだのおしゃべりが、
宝もののようで、聞き逃がせなかった。
だから録音機をできるだけまわした。
どうおもしろいのか、説明はできない。
そんなふうにおそるおそるはじまった、
横尾忠則と糸井重里による
「ほぼ日」のおしゃべり連載は、
通な方々のあいだでじわじわと話題となった。

「あれ、本にすればいいのに!」
という声をいただくも、
編集方針について迷いに迷い、数年経過。
この記念すべきYOKOOイヤーに、
思い切って追加の対談を収載し、
奇跡のような本を誕生させます。
本になって、さらに宝もののような、
貴重な内容です。
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2021年7月17日(土)→10月17日(日)

東京都現代美術館 企画展示室1F/3F



2021年7月21日(水)→10月17日(日)

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3



2021年7月17日(土)→9月5日(日)

丸の内ビルディング、新丸の内ビルディング



ジャケットとパンツを
2021年7月1日(木)から順次発売

ISSEY MIYAKE SHIBUYA(渋谷PARCO2階)、
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / AOYAMA、
ISSEY MIYAKE SEMBA、
ISSEY MIYAKE MARUNOUCHI、
ISSEY MIYAKE ONLINE STORE