── |
うわっ!
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坂本 |
‥‥どうされました?
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── |
すごい!
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※画像をクリックすると写真が拡大します。
※個人情報保護のため画像を加工しています。 |
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紙永 |
‥‥あの。
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── |
いや、すみません、ええとですね、
ゼンリンさんの地図で
ぼくの田舎のあたりを見ていたら
実家の建物の後ろに
「山口材木店」てあったんですよ。
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坂本 |
何か‥‥間違ってます?
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── |
いえ、まったく正しいんですが
この材木会社、
それまで「空き倉庫」だったうちの建物に
つい最近、入ったばかりで‥‥。
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紙永 |
ええ、ええ。
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── |
看板とかも、お手製でつくった
ちっちゃなのしか出してないんです、たしか。
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坂本 |
そうでしたか。
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── |
その看板、超目立たないんですよ。 |
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写真の真ん中に見える(見えます?)のが「山口材木店」のお手製看板。 |
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紙永 |
‥‥はい。
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── |
前回、あのあたりを調査されたのが
何年前なのかわかりませんが‥‥。
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坂本 |
都市部では「毎年」調査をしていますが、
そのあたりですと‥‥2年から5年に一度です。
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── |
前回のときには立っていなかった
「お手製のちいさな看板」があるのを見つけて
最新版に反映したってことですよね?
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紙永 |
そうですね、ええ。
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── |
しかも、倉庫の建物じたいは
表の公道から見えない位置に建っているんです。
ええとつまり、ようするにですね、
何をそんなにビックリしているかというと
「表通りから見えないところに
ひそかに新しい会社ができていた」
ということを
あの「お手製のちいさな看板」を見て‥‥。
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紙永 |
判断したんでしょうね、調査スタッフが。
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── |
何といいますか、
ものすごく感動してしまいました。
「もう地図に載ってるんだ!」と。
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坂本 |
それは、うれしいです(笑)。
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── |
でも、よく見つけましたね、あの看板‥‥。
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坂本 |
それが、われわれの仕事ですから。
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ゼンリンの調査スタッフさんは、この看板が「立った」ことを見逃さなかった。 |
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── |
すみません、冒頭から取り乱しました。
では、気を取り直しまして
まずは「ゼンリン」さんという会社について
おうかがいしたいのですが
「なんとなーく知ってる名前」ではないかと
思うんです、みんな。
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坂本 |
そうですね、今ではさまざまなところに
地図データを提供していますので
「ゼンリン」というコピーライト表示は
目にされたことがあるかも知れません。
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── |
最近では、グーグルマップとか。
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紙永 |
ええ。
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── |
カーナビに入ってる地図も‥‥。
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坂本 |
国内シェアのおよそ7割が弊社のデータです。 |
── |
ゼンリンさんの、
そもそものはじまりというのは?
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紙永 |
1948年、大分県の別府市で創業しました。
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|
── |
第二次大戦後すぐ、ですね。
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紙永 |
もともとは『観光別府』という名前の
別府の観光案内の小冊子を
つくる会社が、はじまりだったんです。 |
── |
へぇー‥‥。
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坂本 |
その小冊子の巻末に
「市街地図」がついていたのですが
それが
本編の名所旧跡の紹介記事以上に好評だったため
創業者の大迫正冨が
「地図は添えものではない。
もっとも重要な情報源だ」と悟って
1軒1軒の家の名前が入った住宅地図を
つくろうと決意したんです。 |
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※画像をクリックすると写真が拡大します。 |
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── |
じゃあ「地図があと」なんですか。
|
紙永 |
そうなんです。
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── |
で、いちばんはじめは別府市から。
|
坂本 |
はい。
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── |
そこから「全国」へと。
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坂本 |
実際、全国をカバーすることができたのは
創業して32年後の、1980年でした。 |
── |
やはり、住宅地図を「全国ぶん」つくるというのは
一世代もの時間かかる大事業だったんですね。
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紙永 |
まだ一部の島嶼部が残ってはいるんですが
今では、全国市区町村の
99パーセントを網羅しています。 |
── |
あの、地図の調査というのは、
何人くらいでやっているものなんですか?
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坂本 |
年間でのべ28万人ですね。 |
── |
すみません、
にわかにイメージできないのですが。
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紙永 |
1日あたり1000人くらい。 |
── |
それだけの数の調査スタッフのかたが、
日本の道という道をくまなく歩き回っていると。
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坂本 |
はい。
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── |
こうしている間にも。
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紙永 |
もちろん。
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── |
調査というのは、どういった感じで?
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坂本 |
もう、ほんと単純なんですけど。
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── |
ええ。
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坂本 |
日本全国、すべての道を人海戦術で
ひたすら歩き、
基本的には、表に出ている
公開されている情報をチェックしていくという、
その繰り返しです。 |
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── |
「公開されている情報」というのは、つまり
「表札」とか「看板」とか、ですか?
|
紙永 |
そうですね。
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── |
ゼンリンさんの住宅地図を手に。
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坂本 |
今は積み上げてきた「元の地図」があるので
現行の地図内容が正しいかどうかを
チェックして歩いている、という感じですね。
|
── |
じゃあ、場所によっては
まったく変わり映えしなさそうなところを
えんえん歩いているなんてことも‥‥。
|
紙永 |
あります。
何時間も歩き続けて
やっぱり変わってなかったということを
確かめて帰ることなんかは、しょっちゅう。 |
坂本 |
でも、先ほどの
「山口材木店」さんみたいなことがあるから
やはり、
実際に行かないとダメなんですよね。 |
── |
どのくらいペースで調査されているんですか?
|
坂本 |
都市部でしたら
基本的に1年に1度メンテナンスしています。
「町」や「村」の場合には
2年から3年、最低でも5年に1度は、必ず。
|
── |
実際、調査では「何を見る」んでしょうか?
たとえば、渋谷みたいな都市部では。
|
紙永 |
都市では、まず建物の「形状」ですよね。
新しいビルができていないかどうか、
古いものが
新しく建て替わっていないかどうか‥‥。
|
坂本 |
お住まいのかたの情報が
変わっていないかどうかという点も重要です。
|
── |
なるほど、なるほど。
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紙永 |
「渋谷センター街」に
「バスケットボールストリート」という名前が
つけられましたけど、
そういった「名称の変更」もチェックします。
|
|
── |
先日、「C.C.Lemonホール」も
もとの「渋谷公会堂」に戻りましたよね。
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坂本 |
そうですね。
|
── |
住んでいるかたに声をかけたりとかは
されてるんですか。
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坂本 |
公開情報をチェックしていくという
原則はあるんですが、
もちろん、わからないことがあったら
聞かないといけないですよね。
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── |
つい、話し込んじゃったりとか?
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紙永 |
はい‥‥ありますね(笑)。
とくに、田舎のほうに調査へ行くと
みなさん、いいかたなので‥‥。
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── |
いいかた(笑)。
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紙永 |
はい(笑)、住んでるかたの平均年齢も
高かったりして
調査スタッフが
お孫さんと同い年くらいだったりすると
「上がっていきなさいな」みたいな。 |
── |
はー‥‥。
|
紙永 |
夏場なんかですと
わかりやすく「汗びっしょり」みたいな感じに
なってるんです、調査スタッフ。
すると、おばあちゃんが心配してくれて
麦茶を出してくれたり、
昼ごはん、食べていきなさいとか‥‥。
|
|
── |
そんなおもてなしが。
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紙永 |
お米とかくださったりして。 |
── |
すごい! ‥‥ちょっと重たそうですけど(笑)。
|
坂本 |
徒歩での調査ですので、少々‥‥(笑)。
でも、ありがたいことに
たまに、そうやってお土産をくださるんです。
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── |
へぇー‥‥。
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坂本 |
毎日のように
何かいただいてくる人とかいるよね。
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紙永 |
いますね、野菜とか果物とか卵とか。
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── |
それは「もらいやすい」ってことですかね、
キャラ的に。
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坂本 |
そうかも知れません。
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── |
ちなみに、調査中でなくても
何気なく町を歩いていたら変化に気づいた、
なんてこともありそうですね。
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紙永 |
あります、あります。
休日などに
郊外のほうへドライブに出かけたりすると
バイパスか何か、
とにかく
大きな工事がはじまりそうな気配を‥‥。 |
── |
感じるんですか!
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紙永 |
何かあるな、と。 |
── |
「気配」というのは?
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紙永 |
土地が造成されかかってたりとか、
道路が高架されかかってたりとか。
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── |
はー‥‥。
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坂本 |
バイパスができますよという情報が
公開されるより前に
そのことを察知することができたら
「勝った‥‥」みたいな。 |
── |
あ、それもう知ってるんで、と(笑)。
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坂本 |
けっこう、うれしかったりしますね。
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|
── |
おもしろいですねぇ(笑)。
他にも、調査スタッフのお仕事をやっていて
おもしろいというか、
楽しいことがあったら教えてください。
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紙永 |
大規模な道路が完成したら
その道路を地図に落としていく作業って
すごく大変なんですね。
|
── |
そうか、実際の工事が大変であればあるほど、
地図の「書き換え」も
それだけ大規模になってくるってことですね。
|
紙永 |
でも、その作業が完成したとき
「地図上で道を通したのは、わたしよ」
という気分になれます。 |
── |
「気分」に! ‥‥おもしろいです(笑)。
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紙永 |
わたしが道路をつくったわけでもないのに。
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── |
でも、なんとなくわかります。
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坂本 |
建設会社さんとかって
よく「地図に残る仕事」とか言われますけど、
われわれは
建設会社さんがつくった建物を
「地図に残す仕事」だと思っています。
※「地図に残る仕事。」は大成建設株式会社の登録商標です。
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── |
ええ、ええ、そうですね。
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紙永 |
入社してはじめて調査した町の住宅地図を
自分で買って、今でも大切に持っているんです。
自分が調査して、書き換えた箇所なんかも
はっきり覚えていて‥‥。
|
── |
はい。
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紙永 |
たまに見返したりなんかして。
|
坂本 |
うん、うん。
|
── |
でも、そうやって
紙永さんや坂本さんがつくった地図を
ぜんぶつなげたら
「日本になる」んですものね。
|
紙永 |
はい。
|
坂本 |
それが、この仕事の「誇り」だと思ってます。 |
|
<つづきます> |