1929年のミッキー&ミニー。
日本におけるディズニーライセンス商品の キャラクターアートの開発や商品の監修をおこなっている ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社の 神田茂樹さんに ディズニー社との協業により開発されたカバーの イラストについてお話をうかがいました。 1929年のミッキーとミニーから知る ディズニーキャラクターデザインの 進化の過程とその意味。 そこには当時のアニメーションに関わるスタッフたちの 作品への探求心と熱意が溢れていました。
神田茂樹さんプロフィール
1928ではなく1929
ほぼ日 このたび「ほぼ日手帳2011」の
ミッキーとミニーの手帳ができあがりました。
神田 はい。
 
ほぼ日 すごくかわいらしくできたと思っております。
神田 うん、私もそう思います。
ほぼ日 で、今回使わせていただいた
ミッキーとミニーのイラストについて、
神田さんにいろいろと
お話を聞かせていただければと思いまして。
 
神田 了解しました。
この「Gray Cotton 1929」の
ミッキーとミニーはその名のとおり
1929年に描かれているものが基になっています。
ほぼ日 はい、ディズニーさんの資料室で
今回使わせていただくイラストを捜していたら
偶然出会えたんですけど、
クラシックミッキー、クラシックミニーの中でも
ちょっと雰囲気が変わっていて
すごくかわいかったんです。
神田 これは『カーニバル・キッド』(※)という作品の
ワンシーンが描き起こされて
このイラストになっています。

※カーニバル・キッド
1929年公開の短編作品。
ミッキーはカーニバルのホットドッグ売り、
ミニーはカーニバルの歌い手として登場。

 
ほぼ日 よく見るクラシックミッキーと違って
目の印象がまるで違いますよね。
 
神田 まず目の上の部分に
眉毛と間違えてしまいそうな
アイラインが入ってますよね。
ほぼ日 そうなんですよ。
これがすごく珍しくて。
このミッキーはまったく見たことなかったです。
あとは、独特の形をした黒目ですね。
神田 この目は、
ホールのパイをカットしたような形なので
「パイカットアイ」と呼ばれています。
たとえば‥‥これとか。
 
ほぼ日 わぁ、かわいいー。
神田 これはディズニー専属のコミック作家、
フロイド・ゴットフレッドソンが描いた
コミックです。
1929年のものではないのですが、
パイカットアイなのがわかりますか?
ほぼ日 わかりますわかります。
神田 彼はディズニーの
レジェンドアーティストのひとりなんです。
パイカットアイミッキーは、
アニメーションのほうでは2、3年程度
部分的にしか使われていないんですが、
出版部門ではこのように継続的に使われたんです。
ほぼ日 へぇー。
神田 個人的なことを言うと、
この時代のこの絵ってすごく好きですね。
細かい書き込みなんかを見ると、
描き手がノリにのっている様子が
手に取るようにわかるんです。
ほぼ日 細かいところまで描いてありますもんね。
神田 あと、いまのマンガと違って、
コマの構図がほぼ横に固定なんですよ。
でも、明解なパースがキッチリとついていて
奥行きがしっかりと再現されている。
ほぼ日 ホントだ。
神田 ひとコマがもう「絵」なんです‥‥
おっと、つい熱くなっちゃいました。
1929年のイラストについてでしたね。
ほぼ日 (笑)。
神田 これは1930年ごろのミッキーなんですけど
アニメーターが描きやすいように
ミッキーというキャラクターは
当初から正円ふたつで構成されているんです。
 
ほぼ日 顔と身体で正円がふたつなんですね。
神田 1928年作品開始当初は、
10分弱の短編アニメーションの中で、
前半と後半でミッキーの顔が違う、
なんてこともありました。
今回の1929年のミッキーは
キチンとミッキーのセオリーどおりの
正円による描かれかたになってますし、
まさにアートスタイルやクオリティを
確立し始めたころのミッキーと
言ってもいいでしょうね。
あとは‥‥。
ほぼ日 あとは?
神田 ふつう、クラシックミッキーって1928年、
つまりミッキー誕生の年のイラストを
使うことが多いんです。
それこそイラストといっしょに
1928という年号が書いてあるものを
よく見かけます。
ほぼ日 はい。
神田 でも、ほぼ日さんはそこをあえて1929年の
このミッキーとミニーを選んだわけですよね。
正直、非常にいい絵を選ばれたと思います。
ほぼ日 ありがとうございます。
神田 その絵を選んだと聞いたときは
「ほぼ日、やるな!」と思いましたもの(笑)。
 
  (やぁ、みんな! つづきは次回だよ!)
2010-12-10-FRI
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