人生の3分の1は、ふとんの中。1/3LIFE

Interview 02 宮尾俊太郎さんに聞いた眠りの話。

ほぼ日「ねむれないくまのために」PRESENTS
個人差はもちろんあるけれど、
人はだれでも、おおむね、
生活の3分の1近くをふとんの中で過ごします。
みんな、どんなふうに過ごしているんだろう‥‥? 
寝つきは? 目覚めは? 快眠法は? 
100人にたずねれば100種類の答えが返ってきそう。

様々な方々に、聞いてみることにしました。
「あなたの、眠りとのつき合い方を教えてください」

シリーズ2回目にお招きしたのは、
バレエダンサー・俳優の宮尾俊太郎さんです。
宮尾俊太郎さんプロフィール

第3回 
                            ストレスと第一頸椎。

──
寝具についても聞かせてください。
宮尾さんは、
どんなものを使われているんですか?
宮尾
羽毛布団は
日本のメーカーのものを使っています。
あと、枕カバーとパジャマがシルクです。
──
やっぱりシルクはいいですか? 
宮尾
いいですね。
寝ているときの動きを阻害しないから
体がラクになるんですよ。
シーツとベッドカバーもシルクにしたいんですけど、
お値段が高いからちょっと迷ってます。
──
枕はどんなもの?
宮尾
枕は、ふたつ使い分けているんですよ。
オーダーメイドで作れる
「まくらぼ」という枕と、
「ブレインスリープ」というメーカーのもの。
それはもう気分で、日によって選んでいます。
──
なるほど、使い分けていらっしゃる。

わたしたちも枕について
いろいろ勉強しているんですが、
ベストなものを選ぶのは難しいですよね。
上を向いて寝るとき高くなりすぎず、
立っているときの首の角度と
同じがいいと聞いています。
それはつまり、けっこう低い枕なんです。
宮尾
ああ、そうらしいですね。
バレリーナでも、
枕を使わない人がいっぱいいますから。
──
たしかに、バレエダンサーの立ち姿って、
後頭部と背中が一直線なイメージが‥‥。
それは枕が要らないかもしれません。

宮尾さんはバレエのお仕事などで
海外に行くことも多いと思うのですが、
環境が変わっても眠れますでしょうか? 
宮尾
それはねぇ、ぼくは環境が変わると、
ぜんぜん眠れないんですよ。
だからもう、あきらめることにしています。
──
あきらめる?
ずっと起きてるんですか。
宮尾
必ずベッドで横になるようにはしています。
眠れなくても体は休まるはずなので。
ただ、良質な睡眠はあきらめて、
無理に眠ろうとはしないんです。
──
わたしなんかは眠るのをあきらめたときは
起き上がってテレビを見たりしますが‥‥。
宮尾
「眠れなかったら起きちゃったほうがいい」
という説も耳にしますが、
ぼくはたとえ眠れなくても横になります。
横になって「ボーっとしていればいいや」
って思うようにしているんです。
体から力を抜いて、だらっとするだけでも、
脳と体が休まるんですよね。
──
大切なのはリラックスなんですね。
宮尾
そう、リラックス。
あ、そうそう、リラックスのための
いい方法がありますよ。
──
お。どういう方法でしょう。
宮尾
俳優の先輩に教えてもらった方法です。
一カ所ずつ筋肉の力を抜いていくんです。
たとえば「足の裏」「太もも」
という感じで、自分で場所を意識しながら
筋肉の力を順に抜いていくんです。
するとどんどんリラックスしていく。
ぼくはこれが得意で、
とくに第一頸椎の力を抜くのが気持ちいいんですよ。
──
え? 第一頸椎‥‥。
ごめんなさい、どの部分なのかよくわからず。
宮尾
頭蓋骨と背骨の間にあるのが頸椎で、
ぜんぶでたしか7つあるのかな。
いちばん上の部分が第一頸椎です。
──
どうやって第一頸椎だけ力を抜けるのか、
ぜんぜん想像がつかないのですが。
宮尾
いまやってみますね。
顎をちょっと引いて、
頭を重力に対して垂直になるように。
そうすると第一頸椎に
力が入っているのがわかるので、
そこをどんどん脱力していく‥‥。
──
(真似してみる)
これは、すごくむずかしいです‥‥。
宮尾
そうですね、そうとう修業をしないと、
うまくできないと思います。
ぼくはもう、これをやると、
よだれが出るくらい体が弛緩して、
頭もボーっとしてくるまで
できるようになりました。
──
はああ~。
力を抜くとリラックスできる、
という感覚はわかるのですが‥‥。
宮尾
肉体って、緊張とか恐怖とか、
何らかのストレスを感じると力が入るらしいんです。
ということは、逆にいうと、
意識的に肉体の力を抜けば、
心がストレスを感じてない状態になりますよね。
──
なるほど。
まずは力の入っていない身体にすることで、
心を平穏に持っていくような‥‥。
宮尾
そうですね、その感じ。
──
なるほど~。
緊張したりストレスを感じるのって、
なんにもいいことないですよね。
宮尾
ただぼくは、舞台に上がるとき、
ある程度のストレスがないと
集中力が高まらないんですよ。
人間の身体って、
ストレスを感じたときに
心拍数を上げて体を強張らせて、
本能的に戦えるような姿勢をとるらしくて。
だから本番に向けては
意識的にストレスをためて
体を緊張させるようにしています。
──
すごい‥‥。
具体的にどうやってストレスをご自身に?
宮尾
ぼくの中でいちばん手っ取り早いのが
「怒り」なんです。
怒っているときって、
すさまじく頭の回転が速くてミスが無いんです。
長時間はもたないですけど
爆発的に集中力を発揮するにはこれがベストで。
──
意識的に「怒る」ということですか?
宮尾
そうですね。
何かに向けて
怒りのスイッチを自発的に入れています。
だから、本番前の役者って
ピリピリした人が多いでしょう? 
──
その現場を体験したことはないのですが、
話としては聞いたことがあります。
宮尾
そうやって舞台に立って
体を動かす怒りのモードのままだと、
ぜったいに眠れないじゃないですか。
だからストレスを取り除くために、
ぼくはやっぱり第一頸椎の力を抜くんです。
──
なるほど。
すごい。さっきのお話とつながりました。
宮尾
キレイにまとまりましたね(笑)。
──
それにしても、
あえてストレスを溜めたり、
眠るためにストレスを抜いたり‥‥。
たいへんなお仕事ですよね。
宮尾
そのおかげで、こうしてお話しできるくらい
詳しくなってしまいした(笑)。
──
わたしたちも勉強になりました。
今日はありがとうございました!
宮尾
こちらこそありがとうございました。

(宮尾俊太郎さんの眠りのお話、終わります)

撮影:池ノ谷侑花(ゆかい)
  • 2023-06-09-FRI

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