永田 |
はい、はじめましょう! |
糸井 |
よろしくお願いします。 |
西本 |
明けましておめでとうございます! |
永田 |
おそすぎるわ! という声が
全国から聞こえるようですが。 |
糸井 |
そんなに待たれてもないでしょ。 |
西本 |
いやいや、地味にメールが届いてましたよ。
「いったいいつ更新するんだ?」と。 |
永田 |
だって、放映翌日(1月4日)には
「まだですか?」的な
メールが届いてましたからね。 |
西本 |
弊社は1月10日まで正月休みでしたからね。 |
永田 |
「早く更新してください」と言われても、
みんなまだ休んでいるという状態で。 |
糸井 |
こればっかりはね。 |
西本 |
ぼくも今年の休みは
直島に行ってましたからね。 |
永田 |
ほう。 |
西本 |
それも、三が日からちょっとずらして、
1月4日から旅立つという
スケジュールで‥‥。 |
糸井 |
おい、またいつの間にか
西本の「自分話」になってるぞ。 |
永田 |
あ、ほんとだ。
『新選組!!』の話が
あっという間に「直島」の話です。
これはもう、芸ですね。見事です。 |
西本 |
いや、だから、そういう状況ですから、
すぐに更新できなかったという意味ですよ。 |
永田 |
そういうわけで
お待たせしてしまいましたが、
ご容赦くださいませ。 |
糸井 |
でもまあ、そんなに待たれてもないでしょ。 |
西本 |
いやいや、地味にメールが届いてましたよ。
「いったいいつ更新するんだ?」と‥‥。 |
永田 |
そのやり取りは、もうしましたよ。 |
西本 |
ぼくが直島に行ったという話も? |
ふたり |
しました。 |
西本 |
じゃあいったい
なんの話をすればいいんですか。 |
永田 |
『新選組!!』です。 |
糸井 |
わけのわからない戻り方をしたところで
ぼちぼちはじめましょうか。 |
永田 |
はい。まずは、例の話を
しておかないといけません。 |
糸井 |
あ、あれですね。 |
永田 |
あれです。
いやぁ、びっくりしました。 |
西本 |
やられました。
今回の「テレビガイド」のMVPは、
年表を制作した茂木ちゃんです! |
糸井 |
つまり、乳製品ですね? |
ふたり |
乳製品です! |
糸井 |
まさか乳製品があれほど、
ドラマの重要な
ファクターになっていようとは! |
永田 |
今回の記事をはじめて読む人のために
解説しておくと、
『土方歳三最期の一日』を観る前の雑談で、
鑑賞の際の資料として、
「ほぼ日」きっての歴史ファン、茂木に
糸井さんが年表の制作を依頼したと。 |
西本 |
そしたら、なぜかそれが、
「乳製品の歴史」について
妙に詳しい年表になっていて‥‥。 |
糸井 |
ぼくが茂木を怒ったわけですね。
「おれは乳製品の歴史を
知りたいわけじゃないんだ!」と。 |
永田 |
そのあたりのやり取りは
こちらをお読みください。 |
西本 |
で、いざ、ドラマを観てみると‥‥。 |
糸井 |
やたら乳製品の話が出てくるじゃないか!
榎本が、牛乳やバターの夢を語るじゃないか! |
永田 |
つまり、茂木の年表、ドンピシャ! |
西本 |
そして、「テレビガイド」あてに
届くメール、届くメール、茂木絶賛の嵐! |
永田 |
「茂木さん、すごいです!」
「茂木さんの読みがすばらしい!」
「これはもう運命です」とまで‥‥。 |
糸井 |
‥‥‥‥どうかと思いますよね! |
ふたり |
わはははははははは。 |
糸井 |
あれってさ、どういうことなの?
なんか茂木は知ってたの? |
永田 |
いや、ぼくもそれを本人に
訊いたんですけどね。
まあ、茂木ちゃんいわく、
「明治といえば、
四つ足を食うようになったんだよな」と。 |
糸井 |
はあ。 |
永田 |
で、まあ、牛とか調べてたら、
「乳製品の歴史」みたいなのがあって、
「あ、これでいいや」と。
「明治といえば、食文化の変化だよね」と。 |
糸井 |
つまり? |
永田 |
早い話が、偶然です。 |
糸井 |
ぐ、偶然なのか、ほんとうに。 |
永田 |
完全に偶然なんですよ。
あやうく、年表から
「乳製品」にまつわる部分を
ぜんぶ取っちゃうところでしたよ。 |
西本 |
ていうか、まえの記事では、編集の都合上、
「この年表は妙に乳製品に詳しすぎるぞ」
くらいの甘い指摘になってましたが、
現場ではけっこう厳しく指摘してましたからね。 |
糸井 |
そうだった、そうだった(笑)。 |
永田 |
いや、それどころか、
糸井さんは茂木ちゃんを呼びつけて
「茂木さぁ〜、これさぁ〜、
こういうんじゃないんだよぉ〜」
みたいに直接文句言ってましたからね。 |
糸井 |
「どうなんだ、これは!」とね。
いやぁ、まいったなあ。
実際、茂木もつくり直したんだよね? |
永田 |
つくり直してましたが、
まあ、乳製品部分を削除することもないかと
いうことで、そのままに。 |
西本 |
結果的に、茂木年表、ドンピシャ! |
糸井 |
まあ、あえて違う見方をすると、
三谷さんと茂木が、ともに
「歴史ファン」であるというところに
カギがあるのかもしれませんよ。
つまり「ざんぎり頭をたたいてみれば」という
歌のようなことは、年表に書くと、
一行で終わってしまうけれども、
「乳製品」には歴史があるぞ? と。 |
西本 |
「これは、ひっぱれるぞ」と? |
糸井 |
そうそう。 |
永田 |
ていうか、「歴史ファン」というだけで
三谷幸喜さんと茂木ちゃんを
並列に並べちゃいますか。 |
西本 |
かたや新春ドラマの脚本で、
かたや雑談記事のおまけの年表ですよ? |
糸井 |
だって、そうでも言わないと、
「乳製品について詳しすぎる」と言った
オレらの立場がないだろうよ! |
永田 |
あと、考えてみれば、一昨年の後半、
ぼくらは『新選組!』について、
かなりの時間を費やし、熱く語り、
それこそ何万字もコンテンツに
してきたわけじゃないですか。 |
糸井 |
そのとおりですよ。 |
永田 |
ところが、コンテンツの最後の最後で、
「茂木ちゃん最高!」という結論ですよ。 |
西本 |
オレたちの半年間はなんだったんだ。 |
糸井 |
‥‥‥‥どうかと思います! |
永田 |
腹が立つから宣伝しておきます。
そんな茂木が毎日ちょっとずつ
趣味のようにしてつくっている
歴史コンテンツが、
「歴史ごめんなさいクイズ」です。 |
西本 |
腹が立つからほめておきましょう。
おもしろいですからぜひどうぞ! |
糸井 |
腹が立つなあ。
‥‥ぜひ、お読みください! |
永田 |
ま、それはそれとして。
そもそも糸井さんが注目していたのは
当時の日本と欧米列強の関係、
みたいなものだったわけですよね。 |
糸井 |
うん。まあ、ようするに、
当時、アメリカというお兄ちゃんを
金で雇って独立国を作るということが
榎本の国際的視野だったと思うんですよ。
あんまりたとえはよくないですけど、
外国のマフィアを使って
日本のやくざを退治するみたいなことですよね。
いま、歴史の結果を知ってると、
まるっきり夢物語みたいに聞こえますけど、
そのビジョンは、当時、
夢物語じゃなかったんじゃないかと
ぼくは思うわけです。
で、そのあたりが年表になってれば、
ドラマを観るまえに
おもしろいかなと思ったのですが‥‥。 |
西本 |
「乳製品」だったと。 |
永田 |
乳製品の話はもういいってば。 |
糸井 |
ま、官軍が率いているのだって
できたばかりの軍隊なんですから
そんなに強いわけないんですよ。
ドラマのなかでも土方軍のことを
「軍隊としては最強」って言ってましたけど
やっぱり脅威だったはずなんですよ。
そこにね、雇われた
アメリカの黒船が加わって、
旧徳川の勢力が集ったら、
独立国がつくれると信じられたと思うんです。
つまり、アメリカ&徳川?
アメリカ&佐藤B作?
アメリカ+B? |
永田 |
なにを言ってるんですか。 |
西本 |
つまり、「A+B」ですね! |
糸井 |
そう! A+B!
それをE(榎本)がまとめるわけだ! |
永田 |
どうして記号にしたがるんです。 |
糸井 |
つまり、(A+B)×Eだ!
※編集部注:(アメリカ+佐藤B作)×榎本 |
永田 |
こんなくだらない話してていいんですか。 |
糸井 |
しかもそこにHが加わるわけでさ。 |
永田 |
Hってなんですか。 |
西本 |
「HIJIKATA」ですよ、土方! |
糸井 |
いわば、(A+B)×E/H!
※編集部注:
(アメリカ+佐藤B作)×榎本/土方
それが矢印となって、
新政府を攻めるわけだよ。
つまり、(A+B)×E/H→S!
※編集部注:
(アメリカ+佐藤B作)×榎本/土方→新政府
これはね、勝てると思っただろうよ。 |
永田 |
さんざん待たされたあげく
わけのわからない記号を読まされる
読者の身にもなってください。 |
西本 |
もとはといえば
佐藤B作さんの「B」が罪ですね。 |
糸井 |
実際、信じて突っ走っていれば、
どうなったかわからないよね。
まあ、ぜんぶ推測ですけど、誤算だったのは、
自分たちがオトナになっていたことですよ。
これはあぶないんじゃないかとか
こうだとすればこうなるとか。
戦術の話ばっかりしてたじゃない。 |
西本 |
模型の充実ぶりが
机上の空論を見事に象徴してましたね。 |
永田 |
ものすごいジオラマだったよね。
大鳥圭介が、細かく模型をつくってるシーンが
一瞬入ってるから成り立つんだよな。
あのあたりの見せ方はあいかわらず
周到だなあと思いました。 |
糸井 |
あの模型をつくるところはね、
三谷さん自身の姿だと思うんですよ。
つまり、三谷さんに代表される歴史ファンの姿。 |
永田 |
あああ。
「ここがこうなら、こうだったかも」を
考えるたのしみを持ってるという。 |
糸井 |
そうそうそう。
あそこの吹越満は三谷さんなんだよ。
つまり、H=M! |
永田 |
そういうのはもういい。 |
西本 |
もとはといえば
佐藤B作さんの「B」が罪ですね。 |
永田 |
数式抜きでお願いします! |
糸井 |
あ、「オレの愛した数式」? |
永田 |
こんなくだらないこと話してていいんですか。 |
西本 |
渋谷陽一の「ロック因数分解」ならぬ、
糸井重里の「新選組因数分解」ですか。 |
永田 |
だから、分解しなくていいって。 |
糸井 |
因数分解はともかく、
あのあたりの連中のなかで、
変わりゆく外圧の影響を
いちばん身にしみてわかってたのは
あのヒゲワインだと思うんだよ。 |
ふたり |
ぶははははは、「ヒゲワイン」! |
糸井 |
そう。 |
西本 |
「カマキリ将軍」なみのインパクトですね。 |
永田 |
うん。連載中だったら
あっという間に浸透しただろうな。 |
糸井 |
まあ、ともかく、歴史ファンの三谷さんが
ああいう歴史を凝縮したような模型を準備して
それをかこんで土方たちが
話し合うという論争劇、
あそこは見応えがありましたよねえ。 |
永田 |
はい。というか、『土方最後の一日』の、
ドラマの核があの場面だったと思います。 |
糸井 |
おもしろかったよなあ。
攻めてくる側も自信がなかったということも
表されているわけでさ。
官軍の必死さが
山越えをさせてしまったんだよね。
あれがねえ。痛かった。 |
西本 |
あの上陸の絵、
官軍の山越えだとは思わなかったんですよね。
そのあたりがうまいなあと思いましたが。 |
永田 |
そうそうそう、あれ、
「官軍が総攻撃の準備をしてるのね」
くらいに思ってた。 |
西本 |
じつは、ドラマのはじまりから随時、
「山越えを準備してた官軍」
が描かれていたわけで。
土方と視聴者がともに
「しまった!」と感じる見事な演出でした。 |
糸井 |
じゃ、そういう、記憶に残った
場面やセリフを各自、挙げてみましょうか。 |
永田 |
うわぁ、びっくりした。 |
西本 |
びっくりさせられますね。 |
糸井 |
どういうことですか。 |
西本 |
糸井さんがめずらしく
ふつうの進行役をやるからですよ。 |
糸井 |
失礼な!
ぼくがこれまでいくつの対談の
仕切りをやってきたと思ってるんですか。 |
西本 |
外で大事な対談の仕切りをしっかりやるぶん、
テレビガイドは、やりたい放題じゃないですか。 |
永田 |
そのとおり。野放図とはこのことです。 |
糸井 |
印象に残ったシーンを
挙げるのか! 挙げないのか! |
ふたり |
挙げます、挙げます。 |
糸井 |
じゃあ、にしもっちゃんから。 |
西本 |
オレですか!
そういうの、弱いんですよねえ。
ええと、いろいろあったんですけどね‥‥。 |
糸井 |
もっと、ポンポン来いよ、
めずらしく仕切ってるんだからさ!
ほら、あるだろう、たとえば、
「写真をあずかった少年が
草原を走っていくシーン」とかさ! |
西本 |
って、それ、思いっきり、
ラストシーンじゃないですか! |
糸井 |
いや、まあ、たとえばの話だよ。 |
永田 |
あそこの、スタッフの
クレジットのエンドロール、
めちゃめちゃ速かったよね!
ずらずらずらーーーって。 |
西本 |
ドラマの尺が1時間半だから、
ぎゅっと詰め込んだんでしょうね。 |
糸井 |
みんな忙しかったんだよ。暮れだから。 |
西本 |
なんスか、それ。 |
永田 |
意味わかんない。 |
糸井 |
印象的なシーンを
挙げるのか! 挙げないのか! |
永田 |
挙げますってば。
ええと、じゃあぼくは、
ちょっとベタかもしれませんが、
永井さまの、
「『ごめんなさい』でいいじゃないか」
ですかね。 |
糸井 |
Bね。 |
永田 |
記号の話はもういいです。
「死んだ近藤勇に申しわけがたたない」
っていう土方を前にして、
「『ごめんなさい』でいいじゃないか」
っていうのは、すごいなあと思いましたね。
脚本の力というか、ことばの力というか。 |
糸井 |
なるほどなるほど。
じゃあ、にしもっちゃん。 |
西本 |
ぼくが気になったのは
南野陽子さんの出番って、
あれだけだったのかなあということですね。 |
永田 |
え? |
糸井 |
どういうことですか? |
西本 |
ほんとは南野陽子さんのシーンって
もっと多かったんですよ。
ちょっとしたラブストーリーというか、
最初は大鳥圭介が
南野陽子さんに惚れているんですけど
いつもないがしろにされてると。
そこに土方がやってきて
土方にもっていかれる的な展開がね‥‥。 |
永田 |
え、あったんですか? |
西本 |
‥‥あったんじゃないかなぁと。 |
永田 |
なんだそりゃ! |
糸井 |
志の輔さんの枕じゃないんだから。 |
西本 |
「ホタテがぶわーっと海面に‥‥」 |
永田 |
「‥‥そういうことが
あったらおもしろかろうなぁと」 |
糸井 |
こんなこと言ってていいんですか? |
西本 |
というわけで
糸井さんの印象に残ったシーンを! |
永田 |
さあ、来い! |
糸井 |
言いましょう。
「あんた、
死に場所を探してるんだろう?」
という榎本のセリフですよ。 |
西本 |
え! ずりー! |
永田 |
ど真ん中じゃないですか! |
糸井 |
ど真ん中でなにが悪い! |
永田 |
てっきり、
「意外にここが好きだった」とか
そういう話だと思いましたよ。 |
糸井 |
しかしながら、ちょっと視点が違いますよ。 |
西本 |
といいますと? |
糸井 |
あれはね、三谷さんが、
視聴者に向けたことばでもあると思うんですよ。
つまりね、視聴者に向かって、
「あなたたち、ようするに、土方歳三の
死ぬところを観にきたんでしょう?」
ということなんですよ。 |
永田 |
あ! |
西本 |
なるほどぉ。 |
糸井 |
土方歳三が死ぬ話なんだな、
泣かせてもらうよ、とみんなが思ってるなかで、
それだけを期待されてる三谷さんがね、
「これは、土方歳三が死ぬドラマじゃなくて、
土方歳三が生きようとするドラマなんだ」
と言ってるわけですよ。
だって、ぼくもそうだったけど、
みんな、そうだったでしょう?
「どう死ぬんだろうか」って思いながら、
「さあ、泣かせてもらうぞ」って思いながら
観てた自分がいるでしょう?
そしたら違ったじゃないですか。 |
永田 |
そうですね。
あの軍議の場面から、
いろんなドラマの要素がガラッと変わって、
わくわくする展開になりましたからね。 |
西本 |
ぼくは、あの戦闘では
土方が死なないのかな?
死ぬのはもうちょっと先なのかな、
というふうにさえ、思いましたよ。 |
永田 |
そうそう。ありえないんだけど、
一瞬、そんなふうに思った。
『新選組!』の本編でもそうだったけど、
三谷さんって、
「え、ここは歴史を曲げちゃうのかな?」
って不安にさせておいて
最後は歴史どおりっていう
盛り上げかたがうまかったじゃないですか。
あの軍議の場面も、
ただの憎まれ役だったと思った榎本が
いったん土方をやり込めたりして、
これは大鳥が裏切ったりとか
しちゃうのかなと思ったら、
がっちり握手したりして。 |
糸井 |
あそこでいろんなポイントが
ガラッと変わるんですよね。 |
永田 |
そうです、そうです。
よくできたミステリーの
クライマックスを観てるようでした。 |
糸井 |
『12人の優しい日本人』、ね。 |
永田 |
まさにそうですね。
『十二人の怒れる男』もそうでしたけど。 |
糸井 |
舞台に思えたよね。 |
西本 |
役者さんたちも、
あれをできる人たちをそろえたんでしょうね。
舞台だと吹越さんのリアクションなんかも
楽しめるところですよね。
机の下にじっといて、
細かく芝居する吹越さんとか
実際のお芝居だったら、
きっとすっごいおもしろいはずですよ。 |
糸井 |
だから、いままでの『新選組!』とは
ぜんぜん違う味のおもしろさだよね。
三谷さんの劇場に行った感じ
みたいなものがあったよね。 |
永田 |
ありました、ありました。 |
糸井 |
そういうこともあって、
『土方歳三最期の一日』というのは
「そう来たか!」という外伝として観るには
ものすごくおもしろかった。
観るまえって、やっぱり
『新選組!』の続きとして
観たがってたじゃない? |
西本 |
ああ、そうですね。 |
永田 |
『新選組!』のエンディングとして
観たがってたという。 |
糸井 |
そう。
もうエンディングはとっくに終わってるのに。
ぼくも、観るまえの雑談で、
「『新選組!』に続きがあるんだから観たい」
と言ってたけど、そんな自分に
コラ! とゲンコツを入れたいですね。 |
永田 |
あの、『ツインピークス』の
映画版ってあったじゃないですか。
『ローラー・パーマー最後の七日間』。
あれって、本編のものすごい謎解きが
一気にされるのかなと思ったら
ぜんぜん違う作品だったじゃないですか。 |
糸井 |
あー、そうだったね。 |
永田 |
あそこまで違う方向性のものじゃなかったけど
しっかり外伝として
つくられてたなと思いましたね。 |
西本 |
とはいえ、『新選組!』を期待する人への
サービスもきちんと盛り込んでありましたよ。
土方の「待たせたな!」だったり、
山南さんや沖田をまじえた
朝食の場面だったり。 |
永田 |
そうそうそうそう。
あのあたりのサービスはさすが。 |
糸井 |
その朝食に香取くんがいないことまで
きちんと説明してたりね。 |
ふたり |
そうそうそう。 |
糸井 |
重苦しくないあたりに
きちんとバランスをとってるんですよね。
あのコルクにしても、
続きとして観てる人には泣けるし、
ひとつのドラマとして観てる人には
「なんかあったんだろうな」って
思わせるくらいのレベルで
調整して出してるじゃないですか。
あのへんのさじ加減というのはもう、
三谷さんの資質なんだろうな。 |
西本 |
そのへんを両方やりながら、
1時間半におさめてるのは
すごいですよね。 |
糸井 |
うん。あれをね、
長々と書き込んでいったらね、
重くなったりする部分もあったと思うよ。 |
永田 |
土方の最後のシーンも
もっと長く、もっと泣けるように
つくれるはずですからね。 |
糸井 |
そこだけを
「これを待ってたんだろ?」
というふうに書いて、『新選組!』ファンが
「泣けました!」っていうふうにすることが
いちばんわかりやすいやりかたでしょうから。 |
永田 |
だから、ぼく、
土方の最後のところは泣かなくて、
意外に、蟻通が死んだところで
不意打ちで泣いちゃったんですよ。 |
糸井 |
不意打ち? |
永田 |
「土方が生きるドラマ」になって、
そっちがわくわくしはじめたころに、
蟻通が死ぬでしょう?
で、あの人だけ、ちゃんと死ぬじゃないですか。
四方から官軍に突かれて、照英さんが絶叫して。
あそこだけ、『新選組!』のエンディングの
記号のようになってる感じがして、
急によみがえって泣けちゃったんです。 |
糸井 |
ああ、なるほどね。
そういえば、オープニングに
「♪いとしき〜」もなかったよね。
まあ、時間の都合もあるんだろうけど、
『新選組!』のエンディングをつくるつもりは
きっとなかったんだろうね。 |
西本 |
最後の「‥‥かっちゃん」も、
泣かせようとするものじゃなくて、
挨拶のような、記号的なものでしたし。 |
糸井 |
あれくらいで、いいんだよ。
「これとこれとこれは、
絶対に登場しますよね!」
というユーザーからのリクエストを
いちいちすくってたら、それを入れてるだけで
1時間半がすぎちゃうんだよ。
そこの味つけを変えるために
「死に場所を探してるんだろ?」
を入れることによって
バーン! と向こうに押しやったわけで、
その、「つくり手としての戦い」はね、
多少なりとも、つくり手をやっている
ぼくなんかからしてみると、
ほんとうに偉いなと思うんですよ。 |
西本 |
ぼくは、自分の仕事が
プロデューサー的なことが多いんで
感じるんですけど、
待っているお客さんだけじゃなく、
つくっているスタッフも
ば〜りばりに『新選組!』を引きずりながら
現場にいるはずなんですよ。 |
糸井 |
ああ、そうだよね。 |
西本 |
小道具さんも美術さんも
見えないところでこっそりと、
「これがあると、いいっすよね」みたいな
仕事の準備ををしてると思うですよ。 |
永田 |
何も言わずにコルクを準備してるみたいな。 |
西本 |
そうそう。
「じつはここのセットでは
3話のあのシーンでのものを
使ってるんですよ」的な。 |
永田 |
捨てずに取っておいたりね。 |
糸井 |
たとえばこの旗はどこで焼けたか、
っていうのを
美術さんは説明できますよね。 |
西本 |
きっと、できるんですよ。 |
永田 |
だから、ものをつくる人に必要なのは、
それを美術さんに言われたとき、
ここでは必要ないんだと感じたら、
「その旗はいらない!」
と言う強さなんでしょうね。
それを、ぜんぶ
「せっかくつくったから」とやっちゃうと、
言いたいことがなにも表現できない
1時間半になっちゃう。 |
糸井 |
そうなんだよー!
それにいちいち応えていっちゃうと、
『2』だろうが『3』だろうが、
誰もおもしろくないものになるんだよ。
お客さんのために
よかれと思ってやってるにも関わらず
結果的に誰もよろこべなくなる。
だから、「受け手としてたのしむ」
ということを、純粋にやり続けてないと、
つくり手にはなれないんだよ。
「うわーっ、オレはここで喜ぶんだ!」
ということを知ってないと。
あの、どちらかというと濃いと思われる
『新選組!』ファンの期待を一身に受けながら、
荒波を乗り越えて、
あれをつくっちゃうんだから、
もうすごいな三谷幸喜。
だから、今回のドラマは、
「泣くんだろうな」と期待してた自分が
バーン! と叩かれたわけだけど、
そのぶん、真剣には観てたよな。 |
永田 |
そうですね。 |
西本 |
遅まきながら確認ですけど、
おふたりは、泣いたんですか? |
永田 |
物理的に?
ぼくは、さっき言った
蟻通のところだけですね。
土方の最後も、冷静に受け止めました。 |
糸井 |
ぼくは、物理的には泣いてません。
そのぶん、思った以上に真剣に観てました。
それこそ、歴史のことなんかを考えながらね。 |
西本 |
ぼくは例によって泣けない男なので
泣いてませんが、
テンションとしては、
3人ともいっしょということですね。 |
永田 |
うん。泣かずに真剣に観てた。
あの、個人的なことでいうと、
ぼくの「泣く」という意味でのピークは、
本編の最終回1コ前、「流山」を観おわって、
最終話の予告が流れた瞬間なんですよ。
近藤が加納に話しかけて、予告が流れて、
なんか龍が描いてあるみたいな座敷牢に
無精ヒゲの近藤が座ってたり、
野際陽子さんが叫んでたりするなか、
斬首される近藤がつねをチラッと見上げる瞬間。 |
糸井 |
あーーー、あれね、うんうん。 |
永田 |
あの瞬間以降というのは、もう、
エンディングを観てる感じなんです。 |
糸井 |
最終回もエピローグっぽかったよね。
だからあれに対して
まだ続きを見せろというのは、
土方の動きも同じだけど
まったく違う視点がないと無理なんですよね。
それが、まあ、今回は、
乳製品的なものにいったと。 |
西本 |
「あっぱれ茂木!」ですよ。 |
糸井 |
ケガの功名に近いものだけどな。
あいつに「ケガの功名」という
Tシャツを着せたいよ。 |
永田 |
大喜びで着そうですね。
茂木ちゃん、
徳川の葵の御紋のTシャツとか
しれっと着てますからね。 |
糸井 |
たんなる偶然なんだけどなあ、
乳製品の年表は。 |
永田 |
偶然でいうならば、にしもっちゃんが
何人もの『新選組!』関係者に
街で出会ってるというのも
ものすごい偶然なんだけど、
そういうのはちっともほめられなかったね。 |
西本 |
ええ。まるで反応がなかったですね。 |
糸井 |
そりゃまぁ、そうだろ。 |
西本 |
でも、オレ、『新選組!』の
メインの人たちは、ほぼ観ましたよ。 |
永田 |
だからさぁ、そこで「ほぼ」とか言うから
いけないんだよ。
「ほぼ」観てるわけないじゃん! |
西本 |
いや、ほら、山本耕史さんも観ましたしね。 |
糸井 |
そりゃ街で出会ったんじゃなくて、
「スタジオパーク」の収録のときに観たんだろ。 |
西本 |
あのね、山本さんって、意外に背が高いんです。 |
永田 |
そうそう。ドラマだと、ほら、
香取さんがデカいから、
そんなにデカく感じないんだけど、
実際にお会いすると背が高い。 |
糸井 |
あ、なるほどね。
逆に意外に小さいのは山本KIDさんだよね。 |
西本 |
ああ、あの人は小さい。 |
永田 |
『新選組!』コンテンツをしめくくる
最後の最後でどうして
山本KIDさんの話になるんですか。 |
糸井 |
だって山本つながりじゃん! |
永田 |
そんなん、ほとんどつながってない! |
西本 |
あと、両方とも強いしね。 |
糸井 |
そうそう、両方とも筋肉質。 |
永田 |
こんなんでいいのか。
終わりますよ、ついに。 |
西本 |
おつかれさまでした! |
糸井 |
ありがとうございました! |
ふたり |
ありがとうございました! |