「高さ12メートルの防波堤」(1月23日)

・東北で津波の被害を受けた海に近い土地は、
 この先、想定できる「最も大きな津波」が来ても、
 それを防げるような、ものすごい高さのある防波堤が
 計画されているようです。
 人の命を失わせてはならない、ということを考えたら、
 危険な波を防ぐことは最も大事なことでしょう。
 「高さ12メートルの防波堤」の話など聞くと、
 そこまでしないと安全は守れないのか、と、
 あらためて昨年の津波の大きさに、驚くばかりです。
 
 ただ、そこに住んでいて、家や工場や畑や田んぼや、
 親しい人たちの命まで失った人たちは、
 どうも、その「巨大な防波堤」という安全対策に、
 賛成しているわけでもないようなのです。
 ぼくみたいな、その場で生きるわけじゃない人間は、
 無責任なことも言ってしまいそうになります。
 「景観を生かしながら」「海との間に目隠し」は、
 あんまりいい知恵とは言えないんじゃないか、とかね。

 でも、その地に住む人、住んできた人たちは、
 じぶんの命、じぶんの財、じぶんの生き方の問題として、
 これから出合うかもしれない津波について、
 納得のいく方法を模索しているのだと思います。
 でも、ぼくが聞くかぎりでは、ふーむ‥‥
 海との間に「高い防波堤」をつくるという方法には、
 反対という人ばかりなのです。
 
 「津波に対立的に向わない、
  どう逃げるかという道をしっかり計画する。
  海とは仲よくしていきたいから、
  海が見えなくなるような壁はいやだ。
  できるだけ、緑化するような方向で海の景観を」
 大きな津波に、負けて勝つというようなことを、
 熱く語ってくれる人たちが多いんですよね。
 おそらく、行政が計画している防波堤のプランは、
 いまも進行中なのだと思います。
 ただ、そこにいる人の真剣な考えと、
 おそらく誠実にそこを守ろうとしている行政との間に、
 これほど開きがあるんだなぁと、ぼくは、
 いつも、首をかしげたまま東京に戻ってきています。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。

「今日のダーリン」より