「それらしい単語」(10月20日)

・たとえば、料理の専門用語をたくさん使って、
 あれこれ文章を書けば、
 いかにも料理に詳しいと思われるでしょう。
 文例を記したくても、ぼくにはできないんですけどね。

 また、いかにももったいつけた文学的なことばで、
 なんとか文法だけはまちがわずに文章を書けば、
 本気で読まれさえしなければ、
 高尚な文学趣味と思われるかもしれません。

 若い人が使っていることばをちりばめて、
 流行している映画や音楽やファッションのことなどを、
 軽く口語体でテキストにしたら、
 若者文化に詳しいということになるんじゃない?
 
 「それらしい単語」がたくさん盛ってあると、
 その世界に精通しているかのように誤解されたりします。
 いや、その誤解されることを願って、
 「それらしい単語」で飾りたてている人だって、
 きっといるにちがいありません。
 でも、「それらしい単語」をいくら大盛りにしても、
 でたらめだったり、うそだったり、無内容だったり、
 という文だっていくらでもあります。
 そして、語られていることの真偽が、
 「それらしい単語」の煙にまかれて、
 見えにくくなってしまうということも、よくあります。
 
 ものすごく単純に記号で言ってみます。
 2+5×10=70 って、小学一年生には、わかりません。
 ほんとは、2+5×10=52 ですよね。
 「それらしい単語」が、人を誤らせるというのは、
 こんなふうなことなんじゃないかと思うのです。

 あの震災から一年半の間、
 見慣れてなかった「それらしい単語」や数字が、
 たくさん出てきました。
 「それらしい単語」で、まことしやかに語られる噂に、
 ずいぶん惑わされてたなぁという気がします。
 この期間、「科学的な態度」とはどういうものか
 ということについても、学ばせてもらいましたよねぇ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
なんにせよ、「よく生きる」ための理論でなくちゃねー。

「今日のダーリン」より