あやや |
じゃ、荒井先生から1本どうぞ。
|
荒井 |
うーん。じゃあ、月9を行きましょうか。
|
|
あやや |
お、来ましたね
|
|
荒井 |
はじまってますが、観ました?
|
あやや |
観ました、観ました。
いわゆる「婚活」がテーマで、
ラブコメなのかなと思いきや、
そんなに軽くもないというか。
|
荒井 |
うん、まあ落ち着いてましたね。
|
あやや |
やっぱり、主演の香取慎吾さんがいいです。
あの、わたしが感じる香取さんの魅力を
言わせていただいていいですか。
香取さんってね、自分の体重を、
けっこうな幅で調整できるらしいんですよ。
で、今回は、かなりシュッとしてるというか、
「仕上げてきてる」感じがするんです。
このへんはプロだなというか、
ちょっとすごみを感じますよ。
いちおう、うだつの上がらない役どころなんで
いまはそんなふうに見えないですけど、
どこかでビシッとする瞬間が来るんじゃないかと。
|
|
森下 |
ああ、わかります、わかります。
|
あやや |
あと、この真面目な路線も
ちょっとうれしかったりしますね。
香取慎吾さんが恋愛ものを
ちゃんとやるのを観たいなと思ってたので。
けっこう、変わった役、多いじゃないですか。
|
森下 |
キャラクターもののインパクトも強かったし。
|
荒井 |
昔は『ハットリくん』とかやってましたよね。
|
あやや |
『ハットリくん』も、『こち亀』もやって‥‥。
だから、変な言い方ですけど、
ひさびさにふつうの役をやってくれてうれしい。
キャラクターもののドラマも
おもしろければ喜んで観ちゃうんですけど。
|
荒井 |
そうですね。
で、香取さんの相手役が黒木メイサさん。
|
あやや |
恋愛ドラマっぽい組み合わせで
すごくいいですよね。
黒木メイサさんは、
同性からの支持も高そう。
|
荒井 |
あと、ピースの人が出てるんですよね。
|
あやや |
そう、綾部祐二さん。
|
荒井 |
最近のお笑いの人って
演技ができる人が多いんですけど、
この人の演技はかなり自然で、
安心して観ていられます。
こっちが本業でもいけるんじゃないかなと。
|
あやや |
何年かしたら、ふつうに俳優さんとして
活躍しているのかもしれないですね。
|
森下 |
そうですね。
|
あやや |
それからこれは、読者の方にとっても、
森下さんや荒井先生にとっても、
まったくうれしくない情報だと思うんですけど、
香取さんと黒木さんが出会う場面、
なんとうちの会社のすぐそばなんですよ。
|
|
荒井 |
えー!
|
森下 |
そうなんだ(笑)。
|
── |
え、あやちゃん、ほんと?
|
あやや |
ほんとです、ほんとです、
ほら、そこのとおりの、そこ、そこ。
ほんと、そこなんですよ、観てたら。
|
|
森下 |
へぇー。
|
荒井 |
へぇー。
|
あやや |
で、わたし、個人的にこのドラマは
いっそう、応援しないといけないなと。
|
── |
地元として。
|
あやや |
地元、地元。
|
── |
地元じゃないけど。
|
あやや |
ほんとは大船だけど。
青山も、地元っちゃ地元。
ご当地ドラマを応援するぞと。
つぎも観るぞと。
|
荒井 |
実際、なんていうか、
つぎが観たくなるようなドラマに
仕上がってましたよね。
|
あやや |
そうそうそうそう、
丁寧で、いいセリフがたくさんあって。
|
荒井 |
うん、月9としての
安心感がうれしかったですね。
ただ、なんていうんでしょう、
「いまのこの時代の月9」って
考えてみると、すごく難しいんですよね。
|
あやや |
あ、それ、わかります。
この主人公になにをやらせて、
どこへ向かえばうれしいんだろうっていう。
|
森下 |
あー、なるほどね。
|
荒井 |
「月9的なもの」が、
時代としては、成り立ちにくいというか。
このドラマ単体の話じゃなく。
|
あやや |
そうなんですよ。
|
荒井 |
最近の月9は、その前提のところで
迷っているような感じがあるかな‥‥と。
|
あやや |
で、迷ったあげくに
とりあえず時代を追おうとして、
「いまこういう時代だよね」っていう
設定に、無理にしているような。
|
荒井 |
でも、どこかが、違うんですよね。
|
あやや |
そう、なんか、ズレてる感じはすごくある。
|
荒井 |
昔からのドラマファンとして
期待を込めていえば、やっぱり、
月9がドラマ界をリードしてほしいんですけど、
そうなってないですもんね、いま。
|
あやや |
そうなんです。
そうなんです。
|
|
荒井 |
地味にいいドラマ、っていうのでも
悪くはないんですけど、
でも、月9だしなぁ、っていう。
|
あやや |
そうなんですよね。
|
森下 |
ひとつひとつのドラマとしてよりも、
枠として、もっと期待しているというか、
やっぱり、応援したいんですよね。月9は。
|
あやや |
そう、そう。
|
森下 |
月9っていえば、やっぱり、
ラブストーリーじゃないですか。
でも、わたし最近のラブストーリーで、
もっともおもしろかったのって、
個人的には『モテキ』なんですよ。
|
荒井 |
ああー。
|
あやや |
ああー、そうですね、そうですね。
|
森下 |
だから、おもしろいラブストーリーって、
なくなったわけじゃなくて、
やっぱり、あるんですよね。
|
あやや |
あります、あります。
|
森下 |
さがせばちゃんとあるんだけど、
ただ、月9には、昔ながらの
ラブストーリーのフォーマットみたいなものが
どうしても残っているというか、
いくら新しい設定を探しても、
その伝統的なフォーマットを
守っているような感じがしていて。
もちろん、もっと時代が過ぎると
それがほんとうに伝統としての魅力に
なっていくのかもしれませんけど。
|
|
あやや |
いまは過渡期なのかもしれないですね。
昔のフォーマットと、いまっぽい設定が、
なかなかうまくかみ合わないというか。
観るほうも、両方を求めていたりするし。
|
荒井 |
うん、たしかに。
|
あやや |
で、視聴者としては、
そういう、四苦八苦したようなものよりも、
『おひさま』の井上真央ちゃんみたいな、
いまの時代とはぜんぜん違う世界での
わかりやすい笑顔とかがんばり、
みたいなもののほうに、よっぽど
リアルなシンパシーを感じるというか。
|
森下 |
そうですよね。
|
あやや |
だから、たとえば、いまって、
役者さんにとっては、月9に出るよりも
NHKに出るほうがいいって
思えてるんじゃないですかね。
いや、わからないですけど、
そういうふうに感じられるようなところが
いまの月9の難しさっていうか。
|
森下 |
うーん。
|
荒井 |
そうですね。
否定するわけじゃなくて、
「月9が難しい時代ですよ」的なことは
言ってもいいかなっていう気がします。
|
あやや |
逆に、ほかのいろんな枠は、
いろいろ自由にやって
育っているような気もしますし。
|
森下 |
その点、月9は、ちょっと
使命感みたいな感じに
なってるかもしれませんね。
ラブストーリーをやるっていう。
|
荒井 |
恋愛もので、そんなに重くなくて、
かつ、ヒットさせなきゃいけない、みたいな。
なんか、そういう閉塞感が。
|
── |
でもさ、あの、素人意見ですけど、
たとえば『モテキ』は、
ぼくのまわりの人たちもみんな褒めてるけど、
視聴率がよかったわけではないんでしょう?
|
あやや |
いってないです。
|
|
荒井 |
でも、あれは深夜のドラマでしたから、
数字はもともと取れないんですよ。
|
── |
そう、だから、真ん中で
誰もが認めるおもしろいものをつくることが
いまの時代の難しさであって、
あちこちでおもしろいものはあるのに
真ん中は元気ないぞっていうのは
ちょっと、話が別かなという気がする。
|
荒井 |
ああ、じゃあ、たとえば、
あの『モテキ』をそのまんま月9に
持ってきたらどうなるんだろう
っていうことですね。
|
森下 |
エッチシーンがなければいけるのかな。
|
荒井 |
いけるのかなぁ。
|
あやや |
いけるんだけども‥‥。
|
荒井 |
エッチ度を弱めれば弱めたで
いろんなバランスが‥‥。
|
── |
深夜のヒットしたバラエティ番組を
いい時間帯にもってきたとたんに、
持ち味がなくなっちゃうっていうことが。
|
あやや |
そうそうそう。
|
荒井 |
たしかにね。
|
森下 |
‥‥月9でやるとしたら、
男女を逆にしてやってみると、
合うかもしれない。
|
あやや |
ああー!!
|
|
荒井 |
おーーー。
|
── |
さすが。
|
森下 |
それは『モテキ』じゃ
なくなっちゃいますけどね。
ぜんぜんモテない女の子が
ある日突然モテだして、
でも、決められなくなったり、
あっちにもこっちにもいい顔しちゃったり。
私の私生活に「モテキ」が来たならば、
そりゃあ、もう、
どうしたらいいかわからなくなって、
やらかしちゃうと思う。
妄想レベルだなぁ。
|
あやや |
でも、そのままじゃなくて、
枠に合わせたドラマが必要なんだなっていうか、
枠とドラマの両方がぴたりと合って、
大ヒットするいいドラマって
生まれるような気がしました。
|
荒井 |
うん。
|
あやや |
『モテキ』の大根仁さんにしても、
宮藤官九郎さんなんかにしても
そうだと思うんですけど、業界内視聴率って、
きっとめちゃくちゃ高いと思うんですよ。
でも、それってやっぱり、
視聴率とは別のものだと思うし。
|
荒井 |
そうですね。
|
あやや |
長いあいだドラマをおもしろがって観てると、
「あ、これ、一般の人たちは
おもしろがらないんだ?」って
思うことってあるじゃないですか。
|
森下 |
ありますね。
わたしもすごくよくあります。
|
荒井 |
あります。
|
あやや |
ありますよねー。
|
森下 |
極端にいえば、
だいたい私が「好きだ」っていうと、
そのドラマはまず当たらない(笑)。
|
|
一同 |
(笑)
|
森下 |
最近だと、『TAROの塔』。
めちゃめちゃおもしろかったんですけど、
視聴率は一桁だったりとかね。
|
あやや |
『TAROの塔』、おもしろかったですよね。
うちの会社のドラマファンの分析では、
敗因は、かの子が怖すぎたからじゃないかと。
|
森下 |
かの子、怖すぎた(笑)。
たまらなかったですけどねぇ!
|
── |
かの子はどなたですか。
|
あやや |
寺島しのぶさんが岡本太郎さんの
お母さん役をやってるんですけど、
超エキセントリックな演技で、怖すぎて、
よくて、でも怖くて、一般の人は
ひいたのではないかと。
|
森下 |
めちゃめちゃよくできてたと思うなぁ。
私は、おもしろかったんだけど。
|
あやや |
だから、そこでわたしが
森下さんにお訊きしたいのは、
『JINー仁ー』なんですよ。
|
── |
うん、そうだ。
|
あやや |
『JINー仁ー』っていうのは、
その両方を、要するに、
とんがったのが好きな業界の人でも、
王道的なものが好きな人でも‥‥。
|
|
荒井 |
みんな巻き込んじゃってるんですよね。
|
あやや |
そう、みんな巻き込んじゃってる。
|
荒井 |
なかなかめずらしいですよ。
|
あやや |
めずらしいんです。
|
荒井 |
いろんなものが重なってないと、
それはできないでしょうね、たぶん。
|
あやや |
それは──
|
── |
いったい──
|
荒井 |
どうして──
|
あやや |
なんでしょうか?
|
|
森下 |
‥‥‥‥『JINー仁ー』ってね、
めちゃめちゃオーソドックスなんですよ。
基本的なつくりとして、
人物配置からなにから、
基本的にオーソドックスなんです。
ところが、起こる出来事が、
タイムスリップだったり、
江戸時代の外科手術だったりとかで、
非常にエキセントリックなので
そういうふうには思えないんですね。
でも、進行するドラマの構造というのは
ものすごくオーソドックスなんですよ。
|
あやや |
あー、なるほど。
|
荒井 |
なるほど。
|
森下 |
なにひとつ、奇をてらってないんですよ。
主人公はナイーブで、真っ直ぐで、
友だちは、華やかで行動力があって、
ちょっと変わってるけど、愛すべき人物で。
|
荒井 |
タイムスリップの設定だけが
変わってるんですね。
|
森下 |
そうなんですよ。
|
あやや |
わたし、森下さんってすっごいなと思ったのが、
『JINー仁ー』って、現代医術の話もあって、
歴史的な要素もあって、なおかつ、
とんでもないSFなわけじゃないですか。
これだけいろんなものが混ざってて、
なのに、人の本質的な話が中心にあるのが
ほんと、すごいなと思ってたんです。
要素を並べるとめちゃくちゃ複雑なはずなのに、
『JINー仁ー』自体は、すごく普遍的で、
ふつうに受け止められるっていうのがすごい。
|
|
森下 |
それはもう、原作の力です。
医療にしても、歴史にしても、
村上もとか先生がものすごく
描き込んでくださっているので。
さっきいったオーソドックスな魅力についても
もともと、もとか先生がつくりあげたものです。
だから、わたしの仕事って、
それこそ枠に合わせるじゃないですけど、
テレビのドラマに合うように
味つけするというか。
|
荒井 |
ああーー。
|
森下 |
あの、もとか先生の原作って、上品なんですよ。
すごくしっかりしてるんだけど、
人と人との関係について、
あんまり感情的に追わないんですね。
奥ゆかしいんです。
だから、私の仕事は、その原作を、
「盛り上げる話」に並べ替えることなんです。
|
あやや |
ああー、なるほど。
|
── |
うーん、なるほど。
|
森下 |
だからできたんですよ。
イチからなんて、絶対書けませんよ、私に。
無理、無理、無理(笑)。
|
|
あやや |
だから、わたし、今回、
『JINー仁ー』を観てつくづく思ったのは、
なにかの原作者の人が、
原作の世界を大切に守りつつ、
ドラマや映画にしたいと思ったら、
森下さんという脚本家は
ものすごくありがたいというか、
いてくれてうれしいだろうなと。
|
森下 |
いえいえ(笑)。
|
あやや |
だから、原作者のみなさん!
森下さんを指名したほうがいいですよ!
原作者のみなさん!
|
|
── |
オレに言うなよ。
|
あやや |
目線をどこに向けていいのか
わからないんです!
|
森下 |
まぁ、そういう話はともかく。
|
荒井 |
すみません、
『モテキ』をゴールデンにしたら、
みたいな話が広がっちゃいましたね。 |
── |
ええと、月9です。
『幸せになろうよ』。
もう一回、この帯を入れておこうかな。
よいしょっと。
|
|
荒井 |
脇を固める人たちの話が途中でしたけど、
小林薫さんとかがちゃんと
要所を締めてるんですよね。
|
あやや |
そうですね。
原田美枝子さんとかね。
|
荒井 |
こういう人が出てくると、
ドラマ全体が締まります。
|
あやや |
そのあたりは月9の
すごく上手なところですよね。
やっぱり、押さえるとこを押さえるというか、
何をすればいいかっていうことが、
わかってらっしゃる方たちですよね。
|
森下 |
そのあたりは、枠と伝統のよさ。
|
あやや |
ですね、ですね。
|
荒井 |
でも、うーん、どうしてテーマが
また「婚活」「結婚」なんだろう。
|
あやや |
そう、最近の月9って、
よく「結婚」をテーマしますよね。
前回のも結婚ものでしたしね。
『大切なことはすべて君が教えてくれた』。
三浦春馬さんと戸田恵梨香ちゃん。
|
|
荒井 |
そうですね。
たしかに「結婚」はリアルな
テーマかもしれませんけど、
リアルなぶん、ちょっと地味というか。
|
森下 |
実際に婚活してる友だちの話を聞くと、
すごく現実的なんですよね。
やっぱり、年収とか学歴で、
みたいなことになるらしくて。
だから、ほんとうの「婚活」っていうのは
ドラマにしにくいんだろうなあとは思います。
|
荒井 |
たしかに、ドラマでそれを
リアルに再現しちゃうと
生々しくなりすぎそうですね。
|
あやや |
逆に、あえてそこをリアルに追うと、
ちがったおもしろさは出そうですけど。
|
荒井 |
でも、それが月9かというと‥‥
あ、また同じ話をしちゃいそう(笑)。
|
あやや |
うーん、月9ってやっぱり
恋愛ものをやらなきゃいけないんですかね。
|
── |
要するに、いまは「恋愛もの」が
成立しづらい時代なんですね。
|
あやや |
そうですね。
|
── |
それは糸井さんが言ってた、
「いまは男が歌う歌詞が書けない時代だ」
っていうところと通ずるところが
あるような気がするなぁ。
|
森下 |
そう、わたし、すごい不思議なことがあって
話をしてるときに、
人の恋愛話っておもしろいじゃないですか。
|
あやや |
おもしろいです!
|
森下 |
おもしろいでしょ?
でも、なんでドラマでやると、
あのおもしろさがなくなっちゃうんだろうって。
そこが、永遠の謎なんですよ。
|
|
荒井 |
ああー、謎ですね(笑)。
|
あやや |
なんででしょうね。
おもしろい恋話もありますけどね。
昔はおもしろかったですよね。
昔の恋愛ドラマの恋の話って。
|
荒井 |
ドラマにするとそれほど見ないっていう。
|
森下 |
なぜなんだろう。
|
あやや |
あの、直接の答えじゃないんですけど、
わたし、最近、鎌田敏夫さんの
『金曜日の妻たちへ』を観たんですよ。
そしたら、めちゃくちゃおもしろいんですよ。
|
森下 |
ああー。
|
荒井 |
『金妻』ですね。
|
あやや |
つまり、恋愛ものをちゃんと描けば、
恋愛話と同じようにおもしろいんだけど、
それができていないのか、
ああいうふうに正面から書く人が
いなくなってきているのか‥‥。
もしかしたら、実生活での経験として
濃い恋愛をしている人が
少なくなってきてるのかもしれないなって。
その、脚本家だけじゃなくて、
こういうドラマをつくろうって
考える人たちとか、視聴者とかも含めて。
|
荒井 |
ああ、なるほど。
|
あやや |
あの、去年やった
三谷幸喜さんの『わが家の歴史』で、
佐藤浩市さんが柴咲コウさんと結婚してて、
佐藤浩市さんが浮気したときに、
柴咲コウさんが謝る佐藤浩市さんに対して
怒るでもなく、泣くでもなく、
「抱いてください」って言う場面があるんです。
糸井が三谷幸喜さんと対談したときに、
あのセリフがすごくいいって言ったら、
三谷さんが、
「じつはあのセリフはプロデューサーの
大多さんが提案したんです」
っておっしゃったんですね。
で、それにつけ加えて、
「ぼくにはあれは思いつかなかったけど、
大多さんは経験豊富な人だから」って
おっしゃったんですよ。
|
|
森下 |
はははは。
|
あやや |
っていうようなことが
もしかしたら、あるのかなとかって思って。
|
森下 |
そうかもしれないですね。
|
あやや |
リアルな恋愛のかたちも、経験も、
時代によって変わってきているでしょうし。
|
荒井 |
でも、昔は、たとえば、
『ロングバケーション』とか、
おとぎ話みたいなラブストーリーが
ものすごく人気があったわけですよね。
あれが当時のリアルな恋愛だったかっていうと
そうじゃないような気がするんです。
|
あやや |
ああー、そうですねぇ。
|
── |
でも、ああいう、おとぎ話みたいな恋に、
みんなが「リアルにあこがれてた」
のかもしれないですよ。
|
あやや |
あ、それはそうかも!
‥‥って、永田さん、
『ロンバケ』観てるんですか?
|
── |
じつは観てるんだ。
そう、そのいきさつも含めて
つながってくる話なんですけどね、
ドラマを観ないぼくがどうして観たかというと、
あるとき、ドラマ好きの友だちが、
「これを観てみてくれ!」って
ものすごく強くすすめてきたんですよ。
たぶん、実際の放送から何年か経ったころ。
男なんだけど、いいからどうしても観ろと。
で、そこまで言うならと思って観たんだけど、
よくできてるなあとは思うものの、
彼がそこまで強くおす気持ちは
よくわからなかった。
|
荒井 |
グサグサとはささらなかった。
|
── |
そうなんです。
でね、さっき森下さんが言った、
「恋愛の話を人と話すのはおもしろいのに
ドラマでやると魅力が薄れるのは
なぜだろう」という話とつながるんですが、
恋愛の話を人としゃべるときっていうのは、
その話の主人公が知り合いだったりするから
もう、入り込み方が違うじゃないですか。
ていうか、すでに入ってる。
しかも、恋愛話の特別なところって、
たとえば、人の話を聞きながらも、
「自分の経験も話すかもしれない」っていう
どきどきしたものがあるんですよ。
だから、話すにしても、
聞くにしても、超おもしろい。
|
あやや |
ああーー。
|
|
── |
たぶん、いい恋愛ドラマって
そういうふうに巻き込まれてると思うんですよ。
だから、いくらドラマがよくできてても、
ぼくが観た『ロンバケ』みたいに
ぜんぜん巻き込まれてない状態から
「とにかく観る」だけだと、
ちっともそのよさが伝わらない。
|
荒井 |
一方的だっていうことですね。
|
── |
そうです、そうです。
ドラマだけじゃなく、ゲームもスポーツも
娯楽はぜんぶそうだと思うんですけど、
ぐるぐる渦に巻き込まれている状態が
絶対におもしろいので。
|
あやや |
そうですね。
だから、そのもののクオリティーだけじゃなく、
関わり方の問題。そういう意味では、
恋愛ものの名作をつくる人は、
視聴者を巻き込むのが上手な人です。
北川悦吏子さんの名作ドラマに
巻き込まれるのはちょっとした快感だし、
内館牧子さんなんかも、
ふつうじゃない巻き込み方をしますよね。
|
荒井 |
ああ、ふつうじゃないですねぇ。
|
あやや |
もう、無理やりにでも、
その世界に引きずり込むような
おどろおどろしさが。
|
森下 |
迫力というか、情念というかね。
|
荒井 |
だから、いま、
『ロンバケ』的なものをやっても
巻き込めないですよね、きっと。
|
あやや |
そうですね。
あのころは、たしかに、巻き込まれたかった!
『ロンバケ』は話ももちろん
おもしろかったんですけど、
ドラマのよさをどうこう言うより、
木村拓哉さんにうっとりしたい!
みたいな感じでしたよね。
もう、観てるだけでキュンキュンくる。
|
森下 |
なにを隠そう、
うちのソファーはいまだに
ロンバケソファーですからね!
|
あやや |
ええ!
|
森下 |
『ロンバケ』観てて、
ちょうどそのころ結婚して、
『ロンバケ』のソファーを
買ったんですよ(笑)。
|
あやや |
ロンバケソファーですか!
|
|
森下 |
うん(笑)。
|
あやや |
すごい。
尊敬します、そういうの。
|
荒井 |
それ、どんなソファーなんですか。
|
森下 |
山口智子さんの家と木村拓哉さんの家に、
両方あったやつで、南んちのが赤で、
セナくんちが黒かな、茶色かな。
|
荒井 |
ふつうの形なんですか。
|
森下 |
ふつう、ふつう、ぜんぜん。
|
── |
巻き込まれてるわー。
|
森下 |
巻き込まれてるでしょう?
|
|
あやや |
だから、やっぱりたいへんですよね。
いま月9は、いまの厳しい時代の人たちを
巻き込まなきゃいけないから。
|
荒井 |
そうですねー。
「結婚」ものが多いのも
わかる気がしてきました。
|
あやや |
その意味では、大きく戻りますけど、
『幸せになろうよ』も。
|
荒井 |
うん、期待ですね。
いまのところ、観ちゃうと思います。
|
森下 |
なんか、ドラマ論みたいに
なっちゃいましたけど(笑)。
(つづきますー) |