── |
はじめて「スジ屋」というお仕事の
存在を知ったのは
大学生のころに読んだ、猪瀬直樹さんの
『ミカドの肖像』という本でした。
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三井倉 |
はい。
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── |
もう10年以上前ですので
細かい描写は覚えていないのですが、
なにやら
「列車のダイヤを引く作業」には
職人的な技が必要とされ‥‥。
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三井倉 |
‥‥。
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── |
その「スジ屋」なる人の腕しだいで
列車が混雑もすれば
混雑が緩和もする‥‥というような。
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三井倉 |
なるほど。
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── |
とくに天皇・皇后・皇太后がお乗りになる
「お召し列車」には
・他の列車と並んで走らない
・他の列車に追い抜かれない
・立体交差において
他の列車が上を通過しない
といった決まりがあるということで、
通常ダイヤの網の目を縫って
1本のお召し列車を
目的地から目的地まで「通す」ために
腕っこきのスジ屋が
それ専用の特別ダイヤを引くのである‥‥
みたいなですね、
その恐ろしいまでの職人っぷりが
描かれていたんです。
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三井倉 |
そうでしたか。
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── |
わたくし、いわゆる鉄道関係については
まったくの素人なのですが
そういったわけで「スジ屋」さんには、
以前から
お話をお聞きしたく思っておりました。
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三井倉 |
ありがとうございます。
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── |
それではすみませんが、さっそく‥‥。
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三井倉 |
スジ屋にも、いろいろ種類があります。
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── |
種類、といいますと。
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三井倉 |
まず、ダイヤ改正などを通じて
日々の輸送を改善する業務に従事する者。
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── |
つまり、毎日運行している電車の時刻を
ご担当されているかた‥‥ですか?
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三井倉 |
はい。次に、臨時列車の担当者。
これは、夏休みやゴールデンウィークなどの
繁忙期における
定期列車の補完輸送を担当する者です。
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── |
なるほど、はい。
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三井倉 |
そして、団体専用列車を担当する者。
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── |
それって、修学旅行とかで乗る‥‥。
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三井倉 |
ええ、「集約臨」と言うのですが。
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── |
シュウヤクリン?
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三井倉 |
集約団体輸送臨時列車の略です。
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── |
その光景って
なんとなく昭和な感じがしますけど、
今でもあるんですか?
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三井倉 |
あります。
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── |
三井倉さんは、それらみっつのうち‥‥。
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三井倉 |
ひととおり、経験してまいりました。
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── |
えっと、そちらが実際のダイヤですか?
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三井倉 |
正確には列車運行図表と言います。
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── |
ちょっと見せていただいても‥‥。
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三井倉 |
どうぞ。
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── |
うわー‥‥。
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三井倉 |
これは埼京川越線のダイヤグラムです。
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── |
つまり、いわゆる「埼京線」の。
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三井倉 |
はい。
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── |
なんとなく「ダイヤ」というからには、
菱形っぽいというか、
もっと整然とした見た目のものを
イメージしていたんですが
実際はかなり錯綜していて、複雑なんですね。
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三井倉 |
整然としたものもあります。
山手線のダイヤグラムなどは、その例です。
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── |
ほんとだ! 超整然としてる!
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三井倉 |
山手線には快速や急行がないからです。
つまり、
追い越しもしなければ、追い越されもせず、
一定の間隔・速度で列車を運行しているために
こうして、
きっちりときれいなダイヤになるんです。
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── |
なるほど、では、埼京線には
追い越したり追い越されたりがあるから
あれほど
見た目が複雑なことになってるんですね。
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三井倉 |
埼京川越線には快速電車が走っています。
大宮駅を出たあと、
武蔵浦和、戸田公園で追い越しをしますので。
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── |
ははぁ。
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三井倉 |
(スジを人差し指でたどりながら)
732Kという各駅停車が
武蔵浦和の上り一番線に入って停車していると
ほら、ここで、川越から来る
708Sが追い越しをしていくんですよ。
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── |
なるほど、そうやって読むんですか‥‥。
ちなみに、いまの「上り一番線」というのは、
どこでわかったんですか?
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三井倉 |
配線は頭に入っていますので。
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── |
それはつまり、ここに書いてあることではなく?
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三井倉 |
武蔵浦和は2面4線になっています。
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── |
武蔵浦和駅にはホームが2面あり
それぞれ上下の4線あって、
快速の通過待ちをする上りの各駅停車は
1番線に入るということが
頭のなかに入ってるということですか?
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三井倉 |
そうでないとダイヤを組めませんので。
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── |
つまり、担当する路線の構造を
すべて暗記されている‥‥。
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三井倉 |
当然です。
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── |
し、失礼しました。
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三井倉 |
もっとも、新人を指導する場合などには
配線図を見ながら
ダイヤを組んだりはしておりますが。
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── |
実際にひと駅ひと駅、足を運んで。
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三井倉 |
できることならば1ヶ月にいちど、
少なくとも季節ごとには見てくるようにと、
担当には指導しています。
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── |
ともかく、この紙の上に引かれた複雑な線が
列車の運行をあらわしている‥‥と。
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三井倉 |
はい。
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── |
そして、スジ屋さんは、そのダイヤをつくり、
必要に応じて改正をしている‥‥と、
基本的には、こういう理解でよろしいですか?
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三井倉 |
そうですね、基本的には。
毎日の列車の運行を担当する基本計画、
臨時輸送、そして団体輸送‥‥
それぞれに
列車を設定する任務にあたっています。
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── |
三井倉さんは、実際に
どういった路線を担当されてきたんですか?
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三井倉 |
たとえば、平成7年から2年間ほど
この埼京川越線のダイヤを担当しておりました。
その間、平成8年3月に恵比寿開業があり、
そのときのダイヤを組み直しております。
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── |
恵比寿開業。
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三井倉 |
埼京川越線の終着が新宿駅だったものを
恵比寿まで延伸したんです。
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── |
それは、どのような観点から?
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三井倉 |
直通サービスの向上および
山手線の混雑緩和です。
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── |
なるほど。
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三井倉 |
当時、新宿着が1時間あたり18本でした。
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── |
はい。
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三井倉 |
その18本のすべてを
恵比寿まで延伸する必要があるかどうか。
延伸した場合、お客さまに
どれくらいご利用いただけるかを予想し、
延伸本数を決定いたしました。
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── |
なるほど、闇雲にスジを増やすのではなくて
「需要を想定する」というのも、
スジ屋さんの重要な任務のひとつなんですね。
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三井倉 |
もちろんです。
当然、担当である私個人の意見だけではなく、
部署として、
埼京川越線をどのように改善していくべきかを
計画にまとめ、本社に上げるわけですが。
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── |
ちなみに、埼京線でいちばん混雑するのは‥‥。
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三井倉 |
池袋・新宿間ですね。
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── |
やっぱり。
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三井倉 |
ですので、ここに埼京川越線を20本入れ、
さらに平成16年に
湘南新宿ラインを増発し新たに6本プラスして、
現在では合計26本、入っております。
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── |
1時間に26本。
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三井倉 |
はい。
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── |
間隔で言うと、3分ないんですか。
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三井倉 |
そうなりますね。
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── |
はー‥‥超過密ダイヤというやつですね。
ちなみに、
三井倉さんがご担当になられた時点では
1時間に18本だったわけですが、
それを26本に増やす場合、
具体的には
どのようなご苦労があるんでしょうか?
列車の増発というのは
ただ単にスジを多く引けばいい‥‥のではない、
ということなのかなと
お聞きしていて、なんとなく、思ったのですが。
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三井倉 |
混雑を解消するということに対しては
列車本数を増やすことで
より多くのお客さまを運ぶことができます。
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── |
つまりそれは、ダイヤ上で言うと
「スジを多く引く」ということですよね。
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三井倉 |
ところが設備的な問題で、
増やしたいのに増やせないという状況が
あるんです。
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── |
設備的な問題‥‥というのは?
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三井倉 |
ひとつの例が、信号設備です。
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── |
信号設備がどうなると‥‥。
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三井倉 |
簡単に言いますと、
信号機の間隔を短くすることができれば、
より多くの列車を走らせることができます。
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── |
信号機の間隔を短くする‥‥というのは
信号機の数を増やす?
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三井倉 |
ええ。
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── |
そうするとどうして、
多くの列車を走らせることができるんですか?
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三井倉 |
列車は、鉄の車輪であるがために、
ブレーキをかけてから停止するまでの距離、
いわゆる「制動距離」が長い。
そのため、衝突事故を防ぐために、
わたくしどものあいだで「閉そく」と言うのですが、
1閉そくに
1車両を占有させるという決まりがあるのです。
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── |
‥‥ははぁ。
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三井倉 |
ひとつの閉そく区間内に車両が存在すると、
ようするに、
その区間に入るための信号が青にならないんです。
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── |
つまり、後続の列車が動けないわけですね。
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三井倉 |
ですから、信号設備の間隔が短くなれば
それだけより細かく
進行・停止の指示を出せるわけです。
その結果、
ムダなく列車を運行できることになります。
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── |
なるほど、つまり信号の数が少ないと
個々の「閉そく」が長くなり、
後続列車は、前の列車が
長い「閉そく」を抜けるまでのあいだじゅう
待っていなければならない‥‥。
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三井倉 |
逆に、信号がこまめにあれば、
個々の閉そくの開閉がスピードアップし、
より多くの列車を
走らせることができるようになるのです。
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── |
なんとなーく、わかりました。
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三井倉 |
ちなみに、
埼京川越線のダイヤを改正するにあたっては
平成16年の
池袋駅の設備改良が大きかったです。
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── |
池袋ですか。
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三井倉 |
山手貨物線、具体的には宇都宮線・高崎線と
埼京川越線の
立体交差化工事により
現在の信号設備を整えることができたのです。
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── |
線路を立体交差にすることによって‥‥。
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三井倉 |
それまで、平面で交差していたときには
3分30秒ほどかかっていた
交差支障時分を
立体化によって解消することができたのです。
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── |
つまり、立体だから
他の列車の通過を待つ時間がゼロになったと。
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三井倉 |
結果、列車の設定本数を増やし
混雑の解消に寄与することができました。
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── |
なるほど、なるほど。
ようするに、いくら紙のダイヤ上に
スジを引く余地があったとしても
信号などの設備はじめ
現場の状況と逐一照らし合わせをしないと、
スジは引けない‥‥と。
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三井倉 |
その他にも
駅の構造やその路線を走っている車両の形式、
今後の整備計画、
運転士や車掌、駅員の対応にいたるまで。
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── |
「駅員の対応」! はぁー‥‥。
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三井倉 |
それらの要素がすべて整ってはじめて、
スジは成り立つのです。
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── |
お聞きするに、もしかして
それらの信号の増設や改良工事については、
三井倉さんたちが
スジ屋として提案されている‥‥んですか?
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三井倉 |
はい。
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── |
‥‥ここに来るまで、
「スジ屋」とは
「ダイヤを引く」という職能に特化した人だと
思っていたのですが‥‥。
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三井倉 |
それだけはないです。
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── |
つまり、スジ屋さんの引くスジというものは
どこか密室的な場所で
熟練の職人さんたちが引いているものだと
勝手にイメージしていました。
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三井倉 |
机上だけでは、絶対に引けません。
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── |
コンピュータでも‥‥。
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三井倉 |
無理です。ゼロからダイヤを引くのは。
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<つづきます> |