秋元康さんと糸井重里は、
どのくらいやり取りがあるのでしょうか?
糸井本人のことばを借りると、
「なにかの収録のときとかに挨拶したくらい」。
しかし、作詞やテレビなど、時代は微妙に違えど、
活動には重なっている部分も多く、
もちろんお互いにお互いのことを知っている。
「ほぼ日の學校」の企画として、
ぜひ会って話しませんかとお誘いしたところ、
よろこんでとご快諾いただけました。
クリエイティブの話、社長業の話、人間関係の話、
たっぷりいろいろ話して盛り上がったのですが、
おもしろかったのは、秋元康さんが糸井に、
つぎつぎに質問するかたちになったことでした。
- 秋元
- で、いま、ほぼ日は、
なにを一番やろうとしてるんですか、これから。
- 糸井
- やっぱりコンテンツなんですよ。
ものが売れるにしても、企画がヒットするにしても、
イベントが賑わうにしても、
ぜんぶけっきょく誰かが考えた
「こういうのがいいよね」が決め手になるわけで。
- 秋元
- はい。
- 糸井
- その「こういうの」をつくる人が、
いつも一番足りないわけですね。
それをつくってるのは、会社の開発部だったり、
社長だったり、テレビとかのメディアだったり、
代理店の誰かだったりした時代もあるし、
いろいろなんだけど、いろんなジャンルぜんぶに
橋を架けながらコンテンツを考える会社があったら、
最高におもしろいなと思っていて。
ほぼ日は、そういう場所に向かいたいんです。
だから、自分たちの資本でできる範囲のことは
自分たちでやって見せるから、
いいなと思った人は、個人でも企業でも、
もうちょっとほぼ日のことを見ててくださいと。
そしたら、この会社と何ができるかとか、
この会社と一緒に新しい会社をつくるとか、
そういう遠景が見えてくるんじゃないかなと。
いまは、すこしずつ、そういう
「なにが乗ってもいいんだ」というお皿を
つくっている感じだと思います。
- 秋元
- ああ、そうですね。
おもしろがれる仕組みをつくってしまえば、
なにが来てもいいわけですね。
- 糸井
- なんでもいいわけです。
だから、いまもこうして「ほぼ日の學校」で
配信するためにカメラを回してますけど、
動画を見せるかたちなんかもどうすれば
一番いいのかといろいろ試行錯誤して。
最初はぼくもやっぱり頭が固いから、
「テレビとなにが違うんだ」とか、
そういうことをずっと考えてたんですけど、
そんなこと説明する必要なんてないんですよね。
「それならやれるよ」とか「それおもしろいな」
っていうことはためらわずどんどんやって、
ダメだったらやめればいいやっていう。
- 秋元
- そういう意味でいうと、
あたらしい場所に向かえば向かうほど、
自分の「老い」との戦いになってきませんか?
- 糸井
- ああ、なるほどね。
秋元さんって、おいくつですか?
- 秋元
- 64です。
- 糸井
- ああ、それはたしかに考えたりするかもね。
- 秋元
- 考えるでしょう?
- 糸井
- ぼくはもうすぐ74ですから、
10コ違うんだね。そうか。
- 秋元
- ぜんぜん昔から変わらないですけど、糸井さん。
- 糸井
- 変わってますよ。
- 秋元
- そう? 何が変わりますか。
- 糸井
- 体力(笑)。
- 秋元
- ああ、体力(笑)。それはまあ、
昔みたいに徹夜がきついとかはあるでしょう。
でも、なんかまわりを見ててもね、
すごく元気な84歳、90歳とかいて、
いまって、「マイナス20歳」
じゃないかなと思うんですよね。
- 糸井
- むかしの年齢より?
- 秋元
- うん。だって、ぼくが小学生ぐらいのときに、
祖父が還暦のお祝いをやるとかっていうんで、
そこに行った記憶があるんですけど、
やっぱり「おじいちゃん」だったし、
言い方はよくないですけど、子どもごころに、
「死んじゃうんだな」って思いましたよ。
- 糸井
- わかる、わかる。
- 秋元
- でしょう? でも、それって60歳なんですよ。
で、じぶんのまわりの先輩たちを見ると、
84歳とかでもぜんぜんもうバリバリ元気だし、
90歳とかでもぼくと同じぐらい食べるし。
だから、「マイナス20」くらいじゃないかなと。
- 糸井
- なるほど(笑)。
- 秋元
- だから、自分も44歳だと思おうと。
まあ、44歳まで行かなくても、
10歳でもいいからマイナスしないと、ねぇ。
- 糸井
- ぼくもそれはよくわかるんですけど、
個人名の仕事と、会社の仕事で分かれる気もする。
秋元さんの仕事がどういう割合かわからないけど、
ぼくは、たとえば記名の原稿って、
仕事としてはほぼ受けていないんですよ。
でも、ときどき受ける個人の原稿を書くときは、
自分個人の年齢に合わせてる自分がいる気がする。
でも、「ほぼ日です」ってつもりで、
自分が仕事しているときは年齢はよくわからない。
- 秋元
- ああー、なるほど、そうか。
- 糸井
- その意味で自分の年齢を意識するっていうのは、
割合としてはじつは少ないんですよ。
ただ、やっぱり、ここ2、3年かな、
ぼくがどいていたほうが、
この空間をうまくつかえるだろうな、って、
そういう気持ちは自然に出てきましたね。
- 秋元
- ぼくも、最近よくあるのが、スタッフに、
こうじゃないんだっていうことを伝えるのに、
「こういう言い方すると
老害のように思われるかもしれないけど」って、
一生懸命エクスキューズしちゃうんですよ(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 秋元
- 上からものを言ってるわけでもないんだけど、
でもこうしたほうがよくなるって
わかっている部分もあって、
そういうときに、すごく気をつかってしまう。
なんかこう、裸の王様になりたくないというか、
「また秋元さん、こんなこと言い出してるよ」
と言われるのが嫌、みたいなとこないですか。
- 糸井
- そこはもう、なんというのかな、
一番気をつけているかもしれない。
つまり、インターンで入ってきた子とかだと、
まだ二十歳とかなんですけど、
そういう子たちがたのしくやってるところに、
たとえばぼくが入っていった瞬間にパッと黙る、
みたいなことがあったりしたら危ないですよね。
- 秋元
- そう、そうなんですよ(笑)。
だから、「メシ食いに行こうぜ」って
気安く言えなくなってるんですよ。
- 糸井
- (笑)
- 秋元
- 若いころは、「メシ食いに行こうぜ」は
ただの「メシ食いに行こうぜ」じゃないですか。
だけど、いまぼくがそう言ったらね、
言われたほうからすると、
「ああ、言われちゃったよ。
今日は予定あったのに‥‥」とか。
- 糸井
- 秋元に言われちゃったよ、と(笑)。
- 秋元
- そうそうそう(笑)。
ということが、実際にあろうがなかろうが、
気をつかうこと自体がもう歳なんだなと思って。
- 糸井
- それは、そんなことを思いながら、
やってればいいだけじゃないですかね。
- 秋元
- ほぼ日のスタッフの皆さん、
糸井さんとみんなでご飯食べたりするんですか。
- 糸井
- する。
- 秋元
- そのときはほんとうによろこんでますか?
- 糸井
- ちょっと聞いてみて(笑)。
- 秋元
- (笑)
- 糸井
- (まわりにいるほぼ日の乗組員に)
「○」か「×」かちょっと表してください。
- 秋元
- まあ、ここで「×」は出せないですから(笑)。
- 糸井
- まあね(笑)。
ただ、たぶん、うち、ほかの会社よりは
忖度しない人たちだから(笑)。
あと、ぼく、実際に何度か
文章で書いたことあるんだけど、
自分より若い年の人たちとなにか
おもしろい仕事をしたあとに、
「遊んでくれてありがとうね」
っていうのは本気で思ってますね。
だから、「嫌がらないでね」っていう以上に、
「ありがとうね」って。
- 秋元
- ああ、なるほど、そうですよね。
- 糸井
- それは、昔の自分だったらどうかな?
って考えたときに、やっぱり、
嫌だった人と嫌じゃなかった人がいたのは
はっきり覚えてるんです。
で、嫌じゃなかった人については、
ぼくはほんとうにたのしかった。
- 秋元
- うん、そうそう、そうなんです。
おもしろい先輩といっしょにいるのは、
すごくたのしかったですよね。
- 糸井
- うん。
だから、「おいでよ」って言われたときに、
向こうもその「おいでよ」を
すごく気軽に言ってたのがわかるし、
教えたいことがあれば教えてくれたし、
それはなんか、うきうきしたんですよ。
- 秋元
- ほんとうに、おもしろい先輩には
ついて行きたかったし、話を聞きたかった。
- 糸井
- うん。
(つづきます)
2023-01-06-FRI
(C) HOBONICHI