<ヨダ先生はヨーダだったのか?
ジョージ・ルーカスに直接きいてみたぞ物語!>
1.どえらくタイヘンな状況。
「ヨーダのモデルはヨダ先生なのか?」という
くだらないといえばくだらない質問を抱えて、
なんとか新宿パークハイアットホテルの
記者会見会場に潜入したdarlingであったが、
すごい違和感を感じていた。
前日というかこの日、床についたのが午前8時過ぎで、
10時半に起こしてもらって、
塩じゃけと味噌汁ひじきの煮物など食わせていただいて、
同居のカグチさんに向かって
「原稿書かないかなぁ、この人」などとは
口に出せないまま、行って来まーす。
11時30分に、「very」連載の打ち合わせを、
記者会見会場にもなっているパークハイアットホテルで。
眠いよー。
ロビーのティールームには、
明らかに映画関係者といった風体の人が
スタンバイしている。
すっごく緊張してきた。
俺は気が弱いんだ! と怒鳴りつけてやりたい気分。
なんでこんなにナーバスになっちゃっているのか。
打ち合わせが終わって、記者会見の会場へ。
特別に歓迎されている様子もないし、
粗末に扱われているということもなく、
中に入れてもらう。
「あなたには優先的に質問させますからね」
などと耳打ちしてくる広報部員も
特にいるわけじゃないので、
ここからはひとりぼっちだ。
ますます緊張してくる。
どうしてって、ぼかぁねぇ、
記者会見で取材されたことはあっても
取材をしたことはなかったのです。
さらに、これって「映画の関係者」の集まりですからね、
普段会ったことないんですよ、ここにいるタイプの人々に。
テレビ番組で、この映画がいいだの悪いだのについて
よく語っている評論家の人とかが、
喫煙所で大声で話している。
彼らは、ここが地元なんだもんな。のびのびしてるぜ。
ふ。俺は、エトランジェ・・・。
しかし、タバコを吸っていると席が確保できないので、
「すいませんすいません」と呪文のようにつぶやきながら、
空いている席を探して、そこにたどりつく。
席は自由らしく、前のほうはもういっぱいだし、
カメラマンがぎゅうぎゅう詰め状態で
ポジションを争っている。
「ああ、つくづく俺って、場違いだなぁ」。
小さくなって、とりあえず、この文を書きはじめる。
「宝くじ抽選会会場」で似たようなことを
やっていたっけなぁ。
でも、あの時は「冠二郎ショー」を
見に来たお客さんがほとんどだった。
今日は、ちがう。
みんなどっかの媒体を背負った「記者」なんだろう。
おいおい、それじゃ、競争相手じゃねぇか。
ぼくが、「あのー、ヨーダのモデルはですねぇ・・・」
なんてことを聞こうとしても、
他の記者たちには迷惑になるのかなぁ。
だって、彼らは、もっとちゃんとした「いいこと」を
質問しようとして、前の晩くらいから
挙手の練習くらいしているかもしれないじゃん。
どうしよう?
ぼくの席は、前から15列目くらいのところで、
壇上にあるマイクは近眼の目には
かすんで見えるくらいの距離だ。
ということは、「ルーカス様」のほうからも、
「ほぼ日刊イトイ新聞」の記者イトイ
の姿は見えにくいということだ。
こんな種類のサミシイ感じは、かつて味わったことがない。
果たして、ぼくは、
「ヨダ先生」について質問できるのだろうか?
2.はじまっちゃうぜ。
決死の覚悟なんかではないけれど、
少なからぬ「ほぼ日」読者に
頼まれ事をしてここにやってきているのだ。
責任と誇りのある立場なのだ。
それに、この機会を逃したら、
こんな些細な質問をするために、
とんでもなく気が遠くなるような
手続きを踏まねばならなくなる。
やっぱり、質問したいなぁ。
恥ずかしいけどさ、答えが知りたい気持ちは
どんどん深まっていく。
そこにやってきたのはルーカス本人、あ、ウソウソ、
映画ライターで「元・萬流コピー塾」の
持永昌也くんだった。
彼が今回の記者会見の情報をメールでくれたのが、
そもそも、ぼくがここにいるきっかけなのだ。
「イトイさん、もし、よかったら、
前のほうに席とってありますよ」
なんてイイやつなんだ、
この場にキミは現われるべき人物である。
運命の人だ。いまは。
万歳! 萬流コピー塾!
会場のライバルたちが、
気のせいか挙手すべき右手をさすって
ウォーミングアップしているような気がする。気のせいか?
持永くんは、こういう場所にはいつも来ているらしい。
「質問の内容からいうと、4番目くらいに当てられて、
ちょっとボケをかます感じというのが理想ですよねぇ」
おお、なんてツウな発言なんだ?!
「4番目もなにも、指名されることの保証さえないんだぜ」
「そうですねぇ。いつもより
質問とか多そうな感じですねぇ」
「もうこまでくると、
聞けませんでしたって言えない気持ちになるねぇ」
どきどきするじゃねぇか。
俺はあらかじめ決まったことをしゃべろうとすると、
極度にアガルんだ。
3.はじまったぞう!
襟川クロさんという押し出しの強い方が司会席に。
諸注意と、段取りの不手際についての謝罪とをはじめる。
今日の佳き日の晴れがましさを、自然に演出している。
これは、国際社会に通用するタイプの人だ。
引っ込み思案や言葉足らずは、国際にフィットしない。
あいさつ、写真撮影(フォトセッションと、
襟川司会者は言っていた)も無事に終わる。
「それでは、さっそく質問を受け付けたいと思います」
おいおい、そんな急に!
急にっていっても、それは司会者には
当然の予定だったのだろうが、
ぼくのほうの心の準備ができていなかったのだ。
はいはいあはいあひあはいはいひあひあはい。
手の数は20本くらいだったかなぁ。
そうか20だったら、当たる可能性もあるかもしれないぞ。
指名されたのは、白いワンピースの
「ちょっとあのコ、かわいいんじゃない?」
とか言われそうな、
ルーカス登場の時点から手を振ったりしていた若い女の子。
『ルーカス御大、ようこそいらっしゃいました』が出だし。
これは、この言い方は前々から考えていたね、絶対。
この「御大」という尊称に、
「あの言い方はどうなんだろ?」的な、
やや批判めいた空気が流れる。
御大って呼びかけもナンだが、ま、いいじゃないの。
あの子はあの子なりに一所懸命なのさ。
エトランジェは、無言で彼女をかばっている。
だって、俺なんか、もっとマヌケなことを言うんだぜ、
しかも、うまくいったら、だけど。
その次は、ぼくも手を挙げた。遠慮がちだったけれど。
当然、ハズレである。
2番目に指名されたのは、持永解説員によると、
いつも最初の質問をする「ベテラン」らしき人だった。
ベテランが何を聞いたのか、忘れた。
なんか立派そうな内容ってことだ。
持永指導員は、4番目くらいがいいって言うけれど、
そんなことこっちで管理できないのだから、
手は挙げ続けるしかない。
要はタイミングとインパクトだ。それはわかった。
ベテランの人の質問が終わったところで、
ぼくは勢いよく立ち上がり、大きく挙手をした!
ぼくの前の席のナイス系日本語堪能な外国人記者も、
勢いはあったが、なんのなんの、ぼくのほうが真剣だった。
「責任と誇り」なんだもんんんんっ!
「はい、そちらの立ち上がった方」と襟川司会者。
やったーっ。俺だぜ。
エトランジェ、指名されるの巻。
ごく小さなさざ波があった。
「あ、イトイだ」「ほんとだ。なんで?」って感じ。
2名くらいの規模の拍手も聞こえた。
4.やっちまったぜ。
気も弱い、銭もない、睡眠も足りないぼくですが、
開き直る力と運が、俺をここまで生かしてくれたんだ。ふ。
前日に質問用の原稿をつくっておこうと考えたのだが、
もっと切実な原稿書きがあったので、結局できなかった。
読者のメールのプリントアウトを持って来ていた。
まだどきどきする。
「ほぼ日刊イトイ新聞のイトイシゲサトともうします。
(この所属についての前ふりは、
言わないのがしきたりらしかった)
質問は、非常に簡単ですので、
イエスかノーでお答えいただければ、
すぐに終わります。
今度の<エピソード1>には、
若いヨーダが登場しているとのことですが、
そのヨーダが、もともと日本人であるという話題が
うちのサイトで盛り上がっています。
その日本人とは、有名な脚本家で、
大阪芸大で教授もつとめられ、
1991年に死去された依田義賢氏であるという説が、
なかば真実として伝わりつつあります。
なんでも、ルーカスさんのことはルカちゃん、
スピルバーグ氏はスピちゃんと
呼んでいたくらいの仲であったと、
聞いておるのでありますが。
この方がヨーダのモデルであったということは、
いくらご本人や周囲の人々が
「そっくりだし、親しかったんだから間違いない」
と言っても、
ルーカスさんが「そうです」と言わない限り
証明されないのです。
どうか、依田さんがヨーダのモデルであったか否か
について、ご本人の口からお答えください。
ありがとうございました」
こんなにちゃんとしゃべれたかどうかわからないけど、
こういうことを言ったのだった。
通訳としてルーカス氏の横におられた
あの戸田=字幕=奈津子さんが、
ちょっと微笑んでおられたようなので、
「なんだ、あいつは?!」
というほどの顰蹙を買ったわけではなさそうだな、
と、ちょっと安心した。
ほんの少しの間があって、ルーカスは答えた。
この答えが「ほんとうの真実」かどうかは、わからない。
そう答えたほうが映画のためにいい、ことは確かだが、
こういう場合、真実であるかどうか決定できるのは、
ルーカス本人しかいないのである。
「yes」
「no」
どちらでもぼくらはかまわない。
ルーカスの口から発せられたたった一言が、
「ヨーダのモデルは依田先生」という噂の
決定的なジャッジになるのだ。
(つづく)
この続きは、あした、掲載します。
第2回は、たった1単語です。
怒るなって。もう一日たのしめるじゃないの。
でも、スポーツ紙とかに、先に出ちゃうかなぁ?
そしたら、それはそれでいいか。
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ここでお知らせです。
ほぼ日刊イトイ新聞では、いま金と銀のガツガツ大作戦と銘打って、
「拡張」と「登録」のキャンペーンをやっています。
読者全員が「センサー会員」として登録してくれるのが、
理想です。どうか皆さま、サイトのあちこちに邪魔なくらい置いてある
「登録用バナー↓」
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未来の「ほぼ日」を支えてくださいませ。
えー、いま急に考えたキャンペーン用のキャッチフレーズ。
◆キミは全裸の僕の、たった一本のふんどしだ。
だめだこりゃ。
でも、金のガツガツ大作戦も、銀のガツガツ大作戦も、
ご協力よろしくお願いいたします。
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