――
ほかには、どんな門を
つくっているんですか?
荒井
東京でもワークショップで門をつくりました。
その門をリメイクして、
最終的には
山形のビエンナーレ
に飾ります。
新宿・伊勢丹でのワークショップの様子。
――
じゃあビエンナーレに行けば
門がたくさん見られるんですね。
荒井
そうですね。
‥‥なんか、ずっと「門」のことを考えて、
いろんな「門」の写真を見たり
そのいわれを調べたりしたけど、そのたびに
「『門』っていいな」と思うんです。
しかも、ちょっと縁を感じるのが、
俺の実家近くに日本最古の鳥居があって。
――
えっ!
日本最古?
荒井
そう、縄文時代の土偶みたいな感じの
ずんぐりむっくりの鳥居(笑)。
ここから近いですよ。
いま俺たちがいる東北芸術工科大学の
キャンパスの裏に「瀧山(竜山)」という山があって、
「山岳信仰」の発祥の山とされているんですが、
そのずんぐりした鳥居は、
瀧山のためにつくった「山門」なんです。
日本最古といわれる「元木の石鳥居」
――
へぇ~!
それがご実家の近くにあるなんて、
かなりご縁を感じますね。
荒井
そうなんです。
しかも、余談だけど、
うちのおばあさんの名前も
「もん」だったんです。
――
うわぁ! すごい。
荒井
最近までそのことに全然気づかなかったけど‥‥。
ひらがなで「もん」だから、
どういう意味か知らないんです。
「門」の意味じゃなくて、
紋様の「紋」かもしれない(笑)。
――
(笑)
荒井
もう、門のことばかり考えちゃう。
――
荒井さんは「ほぼ日手帳」のカバー用に
描きおろしていただいた作品にも
門を描いてくださって。
「
ここをくぐると、願いが音になるんだそうです。
」
荒井
そうですね。
あのカバーは、糸井さんに「ユートピア」という
お題をもらって描いたんですけど、
門をひらくのって
すごくポジティブな行為だと思うんです。
手帳もなにげなく「ひらく」ものだし、
門と共通点があるように思って描きました。
しかも、
「この門をくぐったときに
願いが音になったら楽しいかも」と思って。
――
あぁ、素敵です。
荒井
だから、このカバーのあちこちにある
ピンクや緑や赤の丸いものは
音が鳴っているイメージなんです。
人それぞれ願いは違うから、音も違う。
誰かが通ると
「キラキラキラン♪」みたいな
きれいな音がするんだけど、
オレが通ると、「ドーン」って
激しい音がするんだよ、きっと。
――
(笑)
この丸いものは、
そういう、みんなの願いが
音になったイメージなんですね。
それにしてもこのカバー、
見れば見るほど想像がふくらみます。
新幹線が走っている側で、
馬に乗っている人がいたり。
荒井
これは、進歩する部分と戻る部分が
渾然一体となっている街をイメージしたんです。
ちょっと抽象的な話になっちゃうんですけど、
3.11の震災以降、なんだか
過去と現在と未来というのは
つながっているんだ、ということを
すごく実感するんです。
進んでいるはずのものが、
実はそうじゃなかったことに気づいたり
「未来っていうのは後戻りしなきゃいけないことも
たくさんあるんじゃないかな」と思ったり‥‥。
――
あぁ‥‥。
荒井
街のなかには、市場もあるんですけど、
どんなに時代が変わっても
人間って、やっぱり朝起きて
朝ご飯を食べて‥‥っていう生活は
変わらないんじゃないかな、と思いながら
描いたんです。
――
荒井さんの描く「ユートピア」には
いろんな思いが詰まっているんだなぁ‥‥って
あらためて感じます。
荒井
うん、でもまぁ結局、
これも駄洒落から生まれてるんだけどね。
――
え?
荒井
この手帳カバーの裏にある門、
よくみるとピアノの形になっているでしょう。
弾いているのは木で、この門の上に
「UTOPIANO(ユートピアノ)」って書いたんです。
これも、まぁ、いつもの駄洒落で(笑)。
(つづきます)
2014-09-19-FRI
取材協力:
東北芸術工科大学美術館大学センター事務局
大分県のオブジェ写真提供:NPO法人大分ウォーターフロント研究会/
NPO法人BEPPU PROJECT