ほぼ日 | 祖父江さんのいちばん好きなキャラクターは? |
オタマン! オタマンって、知らない? |
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ほぼ日 | 『レッツラゴン』に出てくるんですか? |
『レッツラゴン』の 最後のほうに出てきます。 オタマジャクシのキャラクターで、 妙にでっかい黒いかたまりなの。 |
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ほぼ日 | 黒いかたまり。怖いですね。 |
いえいえ、オタマンかわいいんですよ。 オタマン♪オタマン♪ オタマンはね、こういう顔してます。 |
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ほぼ日 | あ、かわいい。 |
ねぇ、かわいいでしょう、オタマン! でかいけど。 |
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ほぼ日 | どういう性格なんですか。 |
『レッツラゴン』のマンガの性質そのままで、 リアリティも性格もない。 げっそり痩せちゃうときもあるんですよ。 名前が決まった回で登場も終わっちゃうし。 |
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ほぼ日 | こんなにまるっこいのに‥‥。 (ほかの図録資料をめくる) あ、ここには 3頭身のオタマンもいますよ。 これはちょっと、あまりにも違いますね。 |
がーん。 いいかげんだぁ‥‥。 さすが『レッツラゴン』の 最終キャラだけありますね。 そういえば、赤塚不二夫さんって 自分の作ったキャラクターを 忘れることがあるんですよ。 ファンの方から サインとキャラクターの絵を求められても 描いてるうちに 「あれ? どうだっけ?」 って、なんだか違うキャラクターに なっちゃうこともあるんですよ。 もしかすると、オタマンも、 途中で忘れちゃったのかな。 出番、少なかったし。 |
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ほぼ日 | 「オタマン」以外にも、 なんだか違っちゃってる キャラクターが‥‥。 |
ありゃ。 ‥‥という、わりと、 「だいたい」を大事にしてたのかも。 |
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ほぼ日 | 「だいたい」を大事にしてた‥‥ |
うん。 赤塚さんは、まわりの人にはすごく繊細だけれど、 自分には、「だいたい」な人だったと思うんです。 トキワ荘の頃は特に、メインには回らずに 年下の石ノ森さんたちの アシスタント的な役まわりだったようだし。 座布団の数が足りないと、 自分だけいらないって使わなかったし、 向かい合わせでマンガを描くときも 電気スタンドの位置は、 相手にとっていい位置に置いて 自分は手暗がりで描いてたそうです。 「まわりの人たちがいかにうれしいか」が、 いつもいちばん大事で、あんまり 「俺が」「俺が」を出さない タイプだったんですね。 |
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ほぼ日 | フジオ・プロはチームプレイだったと おっしゃってたそうですね。 |
そうなんですか。 『天才バカボン』の表紙に 「俺の名前は要らない」と言ったのも そうだし、 タモリさんをベッドに寝かせて 自分は床で寝ていたのもそんな感じですよね。 結局、赤塚さんは一貫して そういうところがあったようです。 ギャグだって、キャラクター設定の縛りは 「だいたい」でよかったのかもしれませんね。 それよりも、おもしろさや、 みんなが喜んでくれることが最優先なのかも。 あまり自分が前には出ない人だったんです。 おまかせパワー爆裂ですね。 |
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ほぼ日 | お弟子さんをたくさん 世に輩出されたことでも有名です。 |
うん、うん。 アシスタントさんたちが ひとり立ちできるように アシスタントさん名義で 新作を描いて、 「つづきは、やっとけ」って こともあったらしいんですよ。 |
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ほぼ日 | そうなんですか。 |
おもしろがってもらえることがすべてで、 自分という存在なんて どうでもいい、 「だいたい」でいい、って 思ってたんじゃないなかぁ。 グレート「だいたい」ですね。 あそこまですごい人は いないですよね。 |
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ほぼ日 | はあぁー(ため息)。 |
だからね、だからというかどうなのか、 なかなかぼくの名前を 憶えてもらえなかったんですよ。 |
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ほぼ日 | 赤塚さんが。 |
なぜかずっと、 「オカマちゃん」って呼ばれてたんだ。 |
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ほぼ日 | ええええ? |
電話してもね、 「祖父江です」 「ん? えぇーと?」 「あ、オカマちゃんで〜す♪」 「ああ、オカマか。何だよ」 とかで(笑)、 もうオカマちゃんでないと だめなんだな、と思って、 ずっと「オカマちゃん」で通しました。 赤塚さん、ほんとうに ぼくのこと、オカマだと思ってたみたい。 |
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ほぼ日 | あだ名というだけじゃなく? |
うん。 ぼくが隣に座って話してると、 「ちょっとな、俺は違うからな、俺は。 俺は女装とかもするけど、違うから」 って一生懸命、遠退いてたの。 |
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ほぼ日 | 祖父江さん、きれいな奥さまが いらっしゃいますが。 |
そーそー。 「僕には、妻も子どももいますから」 って言っても 「わかる、わかる。カモフラージュだろ? カモフラージュのやつ、多いんだよ」 だって。 だから、ぼくは一生 「オカマちゃん」だったんだ、 赤塚さんのなかでは。 |
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(つづきます) |
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