高橋禎彦さんのつくるBEGINNINGのコップは、
・壁面が厚く、底は薄く
・壁面にBEGINNINGの刻印が入り
・底にうつくしくかわいいポンテ跡がある
という、高橋禎彦さんにとっても、
“はじめて”がいっぱいのコップになりました。
窯を焚き、ガラスを溶かし、吹き、形をつくり、
焼き鏝で刻印を捺し、底を丁寧に仕上げる。
そこまでを一気に行ないます。
もちろん、1点1点が
高橋さんならではの技法による、
完全な手づくりですから、
音楽でいえばライブ、
ニットで言えば手編み、
陶磁器でいえば「手びねり」のようなもの。
型に嵌めてつくる工業製品ではありませんから、
すこしずつ「ゆらぎ」「ばらつき」があります。
しかも、1日の作業を終えて、
また翌日、あらたな気持ちでガラスに向かうと、
また、別の変化があるのだとか。
「いつもそうなんだけれど、
ぼくのコップには、
比較的まっすぐな子と、
だいぶユニークな子がいます。
人に個性があるように、
どっちがいいということではなくて、
どちらもぼくは好きなんです」
そして、今回、ほんとうに初挑戦になった
「焼き鏝による刻印」。
この捺し具合も、かわります。
「宙吹きでコップをつくるというのは
ぼくにとっては日常的な作業でもある。
それでも、ばらつきがあるんですね。
さらに、焼き鏝に向かうとね、
これが、すごく緊張するんです。
『力を入れすぎないように』なんて、
ちょっとたじろぐと、
もう、捺せなくなっちゃったりもする。
そうすると、もう、やり直しは効かない。
だから、だいぶ慣れてきたとはいえ、
ぐっと内側にめり込んだ刻印もあれば、
あっさりめのものもあります。
そうすると、コップの横顔の表情がかわるんですね。
ちなみにぼく自身は、めりこんだ感じのものも、
けっこう、好きなんですよ」
ちなみに、内側が平坦になっている
バージョンもあるのですが、
これはまた別のテクニックを使っているのだそうです。
「瞬間的に捺した後に、
もう1回全部をあぶって終わりにするんだけれど、
その時に、クルクルクルって早く回転させる。
そうすると、遠心力で、
めり込んだ部分がヌッて出てきます。
内側が平坦な子は、
そのプロセスを経たコップです」
いろんな「はじめて」が入った
高橋禎彦さんのガラスのコップ。
わたしたちはこのコップを
「はじまりのコップ。」と名づけました。
それでは、その「はじまり」のようすを、
動画でごらんください。
高橋さんのすばらしい技法が
ごらんいただけますよ。
おじゃましてきました。