前回につづき、
樹齢200年のオリーブの木を
プラントハンターの清順さんが植樹するようすを
お伝えいたします。
前回はオリーブをクレーンで
地面に着地させるところまで、でした。
今度は土の袋を吊り上げ、
穴をあけて土を地面にザーッと落とします。
(こんなふうに袋を開封するのですね!)
スコップの柄で
植木鉢を落として木を取り出します。
伊川さんも手伝います。
ごんごん、とたのしそうです。
そして‥‥。
植木鉢から木が抜けて
根っこがあらわれました。
木のイメージとは違う、なんだか繊細な根です。
清順さんは言います。
「この根っこ、見てください。
この細い根っこ、これが
『めちゃめちゃいい根』なんです。
世界中からもってきた木を
あずかって養生して、
こういう根っこをどれだけ出させるかが
ぼくらの腕の見せどころです」
ここで土をくぼませて、
オリーブを置く位置を決めていきます。
清順さんは話しながら
サッサッサッと整地しています。
「木にもオモテとウラがあるんですよ。
育った場所で、陽にあたっていたほうがオモテです。
ぼくがいま、ある程度、木の位置を決めるので
最後の調整は持ち主の伊川さんがやってください」
伊川さんは木の表情をじっと見つめます。
▲入口から見るとこんな感じです。
▲ご夫婦でも相談中!
「ここの通路は、歩きたいですか?
オッケー、じゃあ、そういう考え方にしよう。
あっちから見たときに、
この枝の表情が見えるのもいいね」
清順さんのアドバイスを受けて、
最後の調整を伊川さんが行いました。
これからずっとここに根づいていく植物ですので、
大切な「ポジション決め」です。
▲木の位置を決める瞬間を
奥様がパチリ。なんと仲のよいご夫婦!
ロープをといて、土をかぶせていきます。
さいごに、土を踏み固め、
盛土のまわりに溝を作って整えます。
清順さんは土を整えながら
この木について教えてくださいました。
「このオリーブは、スペインのオリーブ園で
200年前に芽を出して
果樹として活躍してきました。
しかし、年が経つと収穫量が減少します。
そういう木を
現地のパートナーである植木屋さんに運び、
木を選んで輸入します。
ふつう、長生きの木といえば針葉樹です。
果樹のなかでは、オリーブは
ぶっちぎりの寿命を持ちます。強いです。
1000年の樹齢のものもありますよ」
そして、清順さんは幹の下のほうに生えている
小さな枝(ひこばえ)を抜きました。
「植物を植え替えたりすると、
ひこばえが生えてくることがあります。
これは何かしら危険を感じたりすると、
木がびっくりして子孫を残そうと、とる行動です。
しかし、ひこばえが成長すると
そこに養分が分散してしまうので
こうして抜いて、活かすべき枝に
養分を集中させるんです」
「最初だけ、水やりしておきます。
オリーブは乾燥に強く、葉っぱもあまりない状態だし、
地植えなので、これ以降はもう
水はやらなくていいですよ」
この水やりが、植樹のしあげとなりました。
伊川さんの息子さんが
学校を終えて
オリーブの木を見にやってきました。
木が、あたらしい家族です。
(200年オリーブも、
なんだかうれしそうに写っていますね)
「あとは、石を置いたりして、自由に
好きなように遊んでください」
こうして、200年オリーブは
伊川家の一員となりました。
さて、最後に、清順さんが
なぜこの植樹に少しだけ遅刻をしたのかというと‥‥
じつは、予定していたクレーン車と植樹の用具が
用意できていないことがわかったのです。
清順さんは、福岡に到着後、
クレーン車をレンタカーで手配し、
土屋さんに行き、ショベルカーで土をトン袋に詰め、
また、スコップを持って飛行機に乗れないことが
搭乗直前に判明して、
スコップを持ち込むのをあきらめて
福岡に着いたあとに道具を揃えました。
清順さんの対応力、すごいです。
「ふだん、海外ではアドリブしかありません。
何が起こるか予想がつかないので、
その都度の対応ばっかりです。
海外から植物を仕入れるのは、じつは
お金がたくさんかかるし、
植物に虫がついているかもしれないし
病気になっているかもしれない。
金銭的、精神的リスクがとても大きいです。
ですから、こんなふうにしていても、
毎回切実なんですよ。
だからこそ、いつ失敗したとしても、
笑わなしゃあないんです。
どんな仕事でも同じやと思いますが、
夢とロマンをもって、みんなやってます。
この仕事は、植物が好きな人ばっかりと会えるし
幸せな仕事やと思います。
だから、現実的なことは、陰で業者としてやればいい。
そう思ってます」
オリーブの持ち主となった伊川さんは
「清順さんって、もっと芸術家タイプの方だと
思っていました。
こんなに地に足のついた方だなんて‥‥」
とおっしゃっていました。
そして、この木の持ち主になったことを気にかけて
「自分、(持ち主として)どうですか?」
と真剣に清順さんに訊ねていらっしゃったのが
印象的でした。
清順さんはもちろん、こう答えていらっしゃいました。
「バッチリじゃないっすか!」
これで、200年オリーブの
植樹のレポートはおわりです。
今後、BEGINNINGでは
清順さんの「そら植物園」と
あたらしい植物のプロジェクトを
ふたたび計画しています。
ぜひ、みなさんもご参加ください。
(facebookのほうも、のぞいてみてくださいね)
それでは、また!
おもしろい植物がいっぱい!