高橋禎彦さんのつくるBEGINNINGのコップは、
・壁面が厚く、底は薄く
・壁面にBEGINNINGの刻印が入り
・底にうつくしくかわいいポンテ跡がある
という、高橋禎彦さんにとっても、
“はじめて”がいっぱいのコップになりました。
窯を焚き、ガラスを溶かし、吹き、形をつくり、
焼き鏝で刻印を捺し、底を丁寧に仕上げる。
そこまでを一気に行ないます。
もちろん、1点1点が
高橋さんならではの技法による、
完全な手づくりですから、
音楽でいえばライブ、
ニットで言えば手編み、
陶磁器でいえば「手びねり」のようなもの。
型に嵌めてつくる工業製品ではありませんから、
すこしずつ「ゆらぎ」「ばらつき」があります。
![](../images/ph7-120530_1.jpg)
しかも、1日の作業を終えて、
また翌日、あらたな気持ちでガラスに向かうと、
また、別の変化があるのだとか。
「いつもそうなんだけれど、
ぼくのコップには、
比較的まっすぐな子と、
だいぶユニークな子がいます。
人に個性があるように、
どっちがいいということではなくて、
どちらもぼくは好きなんです」
そして、今回、ほんとうに初挑戦になった
「焼き鏝による刻印」。
この捺し具合も、かわります。
「宙吹きでコップをつくるというのは
ぼくにとっては日常的な作業でもある。
それでも、ばらつきがあるんですね。
さらに、焼き鏝に向かうとね、
これが、すごく緊張するんです。
『力を入れすぎないように』なんて、
ちょっとたじろぐと、
もう、捺せなくなっちゃったりもする。
そうすると、もう、やり直しは効かない。
だから、だいぶ慣れてきたとはいえ、
ぐっと内側にめり込んだ刻印もあれば、
あっさりめのものもあります。
そうすると、コップの横顔の表情がかわるんですね。
ちなみにぼく自身は、めりこんだ感じのものも、
けっこう、好きなんですよ」
![](../images/ph7-120530_2.jpg)
ちなみに、内側が平坦になっている
バージョンもあるのですが、
これはまた別のテクニックを使っているのだそうです。
「瞬間的に捺した後に、
もう1回全部をあぶって終わりにするんだけれど、
その時に、クルクルクルって早く回転させる。
そうすると、遠心力で、
めり込んだ部分がヌッて出てきます。
内側が平坦な子は、
そのプロセスを経たコップです」
いろんな「はじめて」が入った
高橋禎彦さんのガラスのコップ。
わたしたちはこのコップを
「はじまりのコップ。」と名づけました。
それでは、その「はじまり」のようすを、
動画でごらんください。
高橋さんのすばらしい技法が
ごらんいただけますよ。
おじゃましてきました。