第9回 『谷川俊太郎質問箱』
糸井 ぼくの本の話ばっかりしちゃいましたが、
『谷川俊太郎質問箱』
おかげさまでロングセラーになっていて、
どうもありがとうございます。
谷川 いえいえ、こちらこそ、ほんとうれしいです。
糸井 ぼくらも、うれしいんですよ。
谷川 編集もデザインもとってもよくて、
イラストもすごくかわいくてね。
ほかの出版社から出る自分の本で
パクろうと思ってるくらい(笑)。
糸井 ああ、じゃあ、手伝いましょうか?
一同 (笑)
谷川 そういえば、
ぼくのこの本(『谷川俊太郎質問箱』)は
糸井さんの2冊の本
(『小さいことばを歌う場所』
 『思い出したら、思い出になった。』)と
共通する点がすごく多いんじゃないですかね。
糸井 ああ、そうです、そうです。
谷川 ね(笑)。
糸井 そう思ってつくったわけじゃないんですけど、
そうなってますね。
どちらも、自由に軽く語っていて‥‥。
谷川 それでいて、一種の人生論のようにも読めたりね。
糸井 はい。
読んだ人の感想や評判も近いものがあるというか、
同じように喜ばれているという気がしますね。
谷川 そうでしょうね。
糸井 あの、こういうと変かもしれませんが、
どちらの本も、
著者が渾身の力を込めた本ではないというか。
谷川 うん。ない。
一同 (笑)
糸井 もっというと、本業ではない部分で
本としてまとめられていて、
でも、そこには、ニーズがあったという。
谷川 そうかもしれませんね。
糸井 人生相談みたいなものって、
過去にやられたことはあるんですか。
谷川 ないんです。
ぼくは『谷川俊太郎の33の質問』
っていう本を出したことがあるぐらい、
人に問いかけるのは好きなんですけど、
自分からはあんまりしゃべりたくないから(笑)。
だから「問いかけられる」っていう行為自体に、
ちょっと興味を持ったんですね。
まあ、朗読会なんか行くと、
いろいろ質問されたりするんだけど、
それはだいたい詩とか、
そういうことについてですからね。
人がやってる人生相談みたいなものは、
ときどき好きで読むんだけど、
自分は全然自信がなかったんです。
「みんな、よくちゃんと答えられているな」
と思いながら読んでた。
糸井 ああ、そうなんですか。
じゃあ、自信がないままに?
谷川 そうなんですよ。
だから、自信はなかったけれども、
自分がどれだけこういうものに答えられるだろうか
っていう興味はあったんですね。
糸井 なるほど。
でも、できちゃいましたよね。
谷川 いや、どうでしょう。
糸井 いや、もう、「できてます」よ。
谷川 ああ、そうですか(笑)。
よかった、よかった。
まあ、こういうふうに本にもしていただいて、
人生相談のようなことも、
ある程度はできるようになったんだな
っていう感慨はありました。おかげさまで(笑)。
糸井 いえいえ(笑)。
あの、自分の本にもどって言うと、
ぼくにもおんなじ気持ちがあるんですよ。
本にするつもりでもなく、ただ書いてたものが
こうして一冊になったっていうのは、
予想外に、なんかのコンテストで優勝しちゃった、
みたいなうれしさがあるんですよ。
谷川 ふふふふ。
糸井 だって、本来は消えていっちゃうものですからね。
それが集まって、誰かに渡るっていうのは
ハッピーなことですよね。
だから、こういう本を、もしも若いときに
「出しなよ」って誰かに言われたら、
きっと断ったと思う。
谷川 あ、そう?
糸井 ええ。
「そういうつもりで書いたわけじゃないし」って。
「失礼でしょ」みたいなことを言うかもしれない。
谷川 ふぅーん。
糸井 正直にいうと、その気持ちはいまでもあるんです。
やっぱり、ひとつひとつのことばは
本で読ませるために書かれたものじゃないから。
谷川 ああ、だからね、そういう気持ちって、
伝わるんですよ、読み手に。
それが一種の魅力にもなってて、
そういった書き手の素直なてらいのようなものは
やっぱり文書にあったほうがいいんですよ。
糸井 ああ、なるほど。
  (続きます)

2008-04-30-WED



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