糸井 | ぼくの本の話ばっかりしちゃいましたが、 『谷川俊太郎質問箱』も おかげさまでロングセラーになっていて、 どうもありがとうございます。 |
谷川 | いえいえ、こちらこそ、ほんとうれしいです。 |
糸井 | ぼくらも、うれしいんですよ。 |
谷川 | 編集もデザインもとってもよくて、 イラストもすごくかわいくてね。 ほかの出版社から出る自分の本で パクろうと思ってるくらい(笑)。 |
糸井 | ああ、じゃあ、手伝いましょうか? |
一同 | (笑) |
谷川 | そういえば、 ぼくのこの本(『谷川俊太郎質問箱』)は 糸井さんの2冊の本 (『小さいことばを歌う場所』 『思い出したら、思い出になった。』)と 共通する点がすごく多いんじゃないですかね。 |
糸井 | ああ、そうです、そうです。 |
谷川 | ね(笑)。 |
糸井 | そう思ってつくったわけじゃないんですけど、 そうなってますね。 どちらも、自由に軽く語っていて‥‥。 |
谷川 | それでいて、一種の人生論のようにも読めたりね。 |
糸井 | はい。 読んだ人の感想や評判も近いものがあるというか、 同じように喜ばれているという気がしますね。 |
谷川 | そうでしょうね。 |
糸井 | あの、こういうと変かもしれませんが、 どちらの本も、 著者が渾身の力を込めた本ではないというか。 |
谷川 | うん。ない。 |
一同 | (笑) |
糸井 | もっというと、本業ではない部分で 本としてまとめられていて、 でも、そこには、ニーズがあったという。 |
谷川 | そうかもしれませんね。 |
糸井 | 人生相談みたいなものって、 過去にやられたことはあるんですか。 |
谷川 | ないんです。 ぼくは『谷川俊太郎の33の質問』 っていう本を出したことがあるぐらい、 人に問いかけるのは好きなんですけど、 自分からはあんまりしゃべりたくないから(笑)。 だから「問いかけられる」っていう行為自体に、 ちょっと興味を持ったんですね。 まあ、朗読会なんか行くと、 いろいろ質問されたりするんだけど、 それはだいたい詩とか、 そういうことについてですからね。 人がやってる人生相談みたいなものは、 ときどき好きで読むんだけど、 自分は全然自信がなかったんです。 「みんな、よくちゃんと答えられているな」 と思いながら読んでた。 |
糸井 | ああ、そうなんですか。 じゃあ、自信がないままに? |
谷川 | そうなんですよ。 だから、自信はなかったけれども、 自分がどれだけこういうものに答えられるだろうか っていう興味はあったんですね。 |
糸井 | なるほど。 でも、できちゃいましたよね。 |
谷川 | いや、どうでしょう。 |
糸井 | いや、もう、「できてます」よ。 |
谷川 | ああ、そうですか(笑)。 よかった、よかった。 まあ、こういうふうに本にもしていただいて、 人生相談のようなことも、 ある程度はできるようになったんだな っていう感慨はありました。おかげさまで(笑)。 |
糸井 | いえいえ(笑)。 あの、自分の本にもどって言うと、 ぼくにもおんなじ気持ちがあるんですよ。 本にするつもりでもなく、ただ書いてたものが こうして一冊になったっていうのは、 予想外に、なんかのコンテストで優勝しちゃった、 みたいなうれしさがあるんですよ。 |
谷川 | ふふふふ。 |
糸井 | だって、本来は消えていっちゃうものですからね。 それが集まって、誰かに渡るっていうのは ハッピーなことですよね。 だから、こういう本を、もしも若いときに 「出しなよ」って誰かに言われたら、 きっと断ったと思う。 |
谷川 | あ、そう? |
糸井 | ええ。 「そういうつもりで書いたわけじゃないし」って。 「失礼でしょ」みたいなことを言うかもしれない。 |
谷川 | ふぅーん。 |
糸井 | 正直にいうと、その気持ちはいまでもあるんです。 やっぱり、ひとつひとつのことばは 本で読ませるために書かれたものじゃないから。 |
谷川 | ああ、だからね、そういう気持ちって、 伝わるんですよ、読み手に。 それが一種の魅力にもなってて、 そういった書き手の素直なてらいのようなものは やっぱり文書にあったほうがいいんですよ。 |
糸井 | ああ、なるほど。 |
(続きます) |