第1回 一種の透明感がある。 | 2008-04-18 |
第2回 重いからこそ、軽く表現したい。 | 2008-04-21 |
第3回 現実的な細部から出発して抽象に至る。 | 2008-04-22 |
第4回 強みは、波動性。 | 2008-04-23 |
第5回 一輪の花と等価の詩が書けたら。 | 2008-04-24 |
第6回 ことばには、つねに受け手がいる。 | 2008-04-25 |
第7回 書きたいと思ったことはない。 | 2008-04-28 |
第8回 『鉄腕アトム』 | 2008-04-29 |
第9回 『谷川俊太郎質問箱』 | 2008-04-30 |
第10回 ことば。 | 2008-05-01 |
糸井 | 1年前、 『小さいことばを歌う場所』を 出したときになんと 「谷川俊太郎賞」の受賞を 谷川さんご本人から、 口頭で伝えていただきまして。 |
谷川 | はい(笑)。いい本でした。 |
糸井 | うちのスタッフが喜んで、 こんなものまでつくってしまったんですが。 |
一同 | (笑) |
谷川 | そういえば、ぼく、賞品も賞金も、 なんにも出さなかったよね。 |
糸井 | いえいえいえ(笑)。 |
谷川 | なにかいま、急に後ろめたくなった。 |
糸井 | とんでもない。 こちらからなにか差し上げてもいいくらいですよ。 受賞のお礼に。 |
一同 | (笑) |
糸井 | ほら、ホールインワン賞みたいにさ。 |
谷川 | ふふふふふ。 |
糸井 | あの、「谷川俊太郎賞」というのは 過去をさかのぼっても存在しないんですよね? |
谷川 | うん。つくりましょうって 持ちかけられたことはあるけど、 「ちょっとそれは勘弁してくれ」って 断っちゃいましたね。 |
糸井 | 本気の「谷川俊太郎賞」は、 谷川俊太郎としては困っちゃうわけですね。 だから、まあ、これくらいがいいんだよね。 |
谷川 | そうですね(笑)。 そういえば、「糸井重里賞」っていうのも ないんじゃないですか? |
糸井 | ないですね。 いつか、つくりましょうか。 |
谷川 | お互い、やりっこしてね。 |
糸井 | そうそう(笑)。 |
谷川 | はははははは。 |
糸井 | ええと、それでですね、先日、 『小さいことばを歌う場所』の続きというか、 つぎの1年をまとめた本がまとまりまして。 『思い出したら、思い出になった。』 という本なんですけど。 |
谷川 | はい。読ませていただきました。 |
糸井 | ありがとうございます。 で、最初に白状しておくと、 これ、ぼくは内容にはかかわってないんですよ。 前の『小さいことばを歌う場所』も そうだったんですけど、 このシリーズに関しては、 ぼくは外側にだけ徹底的にこだわるんです。 つまり、タイトルであるとか装丁とか、 いわゆる見栄えの部分については みっちり話し合っていく。 で、中身は、担当者にお任せして、 まったくノータッチなんです。 |
谷川 | なるほど、なるほど。 それはすごく正しいと思う。 |
糸井 | あ、そうですか(笑)。 |
谷川 | 全部、自分が書いた原稿であるのは 間違いないんですよね。 |
糸井 | はい、書いてます。 こう、ぱらぱら読むと、 「ああ、たしかに書いたなあ」 ということばかりなんです。 |
谷川 | それは、本のつくりかたとしては、 とってもいい方法だと思いますね。 |
糸井 | あの、前の本のときもそうだったんですが、 正直、すごく不安があるんですよ。 「オレ、抜き出して1冊の本になるほどのこと、 書いた覚え、ないよ?」っていう感じで、 大丈夫かなと思うんですよ。 とくにこの『思い出したら、思い出になった。』は、 去年1冊出したあと、間がないような気がしたから 「つくれないんじゃないか?」って本当に思った。 |
谷川 | あのね、それが、すごくいいんですよ。 自分で「そんなたいしたこと言えてない」って 思えるからこそ、読んでるときに、 こう、軽くていいんですよ。 そして、軽いんだけど、深みはあるの。 |
糸井 | ありがとうございます(笑)。 |
谷川 | この本は、ある種、 人生論という面を持ってると思うんだけど、 ふつうの人生論的な本というのは、 言ってる人のポーズというのが 前面に出てしまっているものが多いんですよ。 つまり、すごくいいことを言ってるんだけど、 「山奥に住んで、ヒゲ生やして、 老子を勉強しました」みたいな(笑)。 ところが、糸井さんと、この本はね、 一種の透明感がある。 作者と本の透明度がいいんですよ。 (続きます) |