先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- 糸井
- いま、モノレールの線路を通りすぎたね。
- みうら
- あれは多摩動物園に行くモノレールかな?
- 糸井
- 動物園ってさ、あらゆる檻に
クジャクがいる場合があるよね。
クジャクの看板がない檻なのに、
なぜかクジャクがいる。
あれ、勝手に飛んでくるのね。
- 南
- あ、クジャクがね。
- 糸井
- そう、よその家で暮らしてるんだよ。
- みうら
- クジャクはメインを張れるのにねぇ。
- 南
- 鳥の檻はだいたい、上が開いてるんだよ。
だから上野動物園なんかも、
スズメが入っちゃってますよ。
- みうら
- あぁ、動物園には餌があるから。
- 南
- そうそう、餌、餌。
ペンギンの餌をサギが取りにきたりもしてるね。
- みうら
- 沖縄のゴルフ場にも
いっぱいクジャクが出るそうですよ。
えらいことになってて、つかまえては
動物園に持っていってるそうです。
クジャクはあんまりたくさんいるより、
1羽でいて、たまに開くのがいいですね。
- 南
- 俺、小学校の1年か2年のとき、
井の頭公園に行ったの。
そのとき、クジャクが羽根を広げるぞ、っていう
噂が流れたわけ。
- みうら
- 噂が(笑)。
- 南
- 大人がそんなふうに言ってるの。
それ、広げるんだったら見たいじゃん。
- みうら
- 広げなかったらただの大きな鳥ですもんね。
- 南
- それで俺は、柵につかまって見てたわけ。
そしたら本隊が、どんどんどこかに行っちゃって。
- みうら
- 本隊が?
- 南
- 遠足だったの。
でも、ふつうは見るでしょう、
これから広げるってときにはさ。
- 糸井
- 立ちどまってもいいくらいだよね。
- みうら
- いま、ちょっと軍隊みたいな言い方なんで、
わからなかったんですけれども、
あぁそうか、遠足でね、
本隊には先生やクラスの友達がいたわけですね。
- 南
- でね、そのときはちゃんと広げたよ。
見たの。
- 糸井
- それはつまり、求愛なんでしょう?
- みうら
- そうらしいですね。
羽根を広げるのは、クジャクのオスの求愛です。
- 糸井
- 時間になるとしょっちゅう求愛してるのかなぁ。
まぁ、自覚はあるか。
- 南
- だってほら、あの目玉でしょ。
- みうら
- そうそう、羽根の目玉模様、
あの数が重要なんですよね。
- 南
- あれを一瞬のうちにメスが数えるってね。
だから多い奴は、
何かってえと、見せたいわけだよ。
- みうら
- 何かってえとね(笑)。
- みうら
- もう、おふたりとは
ずいぶん長いおつきあいを
させていただいてますけども、
「泊まる」のは、ぼくははじめてです。
- 糸井
- 今回、どうしてこうなったんだか
俺もわかんないんだけど、
なぜかこういう激しくインドアな人たちが集まったね。
- みうら
- いや、ちょっと待ってください、
このなかの誰かがすごくアウトドアな人で、
その人がまず手を挙げたんだろうなと、
ぼくは理解してました。
- 南
- え、本当に?
- みうら
- だからかなりビビってるんです。
- 糸井
- ぜんぜん、誰もいないですよ。
- みうら
- いないんですか!
- 糸井
- いない。
- 南
- いないよ。
- 糸井
- 激しくインドアな3人です。
- みうら
- 南さんと糸井さん、
おふたりでいろんなところに行かれていることは
知っていましたので、
そのときにはスカイダイビングなんかも
してるんだろうな、
えらいチームに引っかかったな、とは、
思ってたんですよ。
- 南
- スカイダイビングは糸井さんだけですよ。
- 糸井
- 俺はやったことある。
2度ある。
- みうら
- ですよね?
「あれは人生変わるぞ、みうら!」
と、糸井さんに言われたとき、
ぼくはインドを思い出しました。
昔の先輩方は必ず
「インド行くと人生変わるぞ」と言ったもんです。
- 南
- スカイダイビングでどんなふうに人生変わるの?
死にそうな気がするってこと?
- 糸井
- いや、思わない。
- みうら
- 思わない?
- 糸井
- 縦に、すごい速度で走ったことって、
ないでしょう?
- 南
- ないね。
- みうら
- ないですよね、それはないですよ。
- 南
- 走ろうとも思わないよ(笑)。
- みうら
- 落下するまでのあいだは
そうとう怖いんでしょう?
- 糸井
- 飛んでからはぜんぜん平気なんだけど、
その前が怖い。
3000メートルの高さからは、
やっぱり降りられないんだよ、ふつうには。
- みうら
- 補助の人は、いるんですよね?
- 糸井
- うん。その先生に従ってればいいんだけど、
そこまで従うタイプでもないじゃない?
- みうら
- 糸井さんが、ですか?
- 糸井
- 誰でもさ。
「俺の言うとおりにすれば大丈夫だから」
って言われたって、体は許しちゃくれない、
みたいなところ、あるじゃない?
- 南
- 誰でもね。
- 糸井
- そのとき「レディー」「セット」「ゴー」と
掛け声をかけて飛ぶの。
「レディー」ってのはつまり「準備」だよ。
- みうら
- そんなときに
「婦人だ」と思う人はいないでしょう(笑)。
- 南
- そんな土壇場で。
- 糸井
- 「セット」っていうのは、
髪の毛のことじゃないよ。
- みうら
- 「レディー」「セット」を、
そんなふうに解釈しちゃ逆に戸惑うでしょう(笑)。
あぁそうですかなるほど、
「レディー」「セット」してから「ゴー」なんですね。
- 糸井
- その「レディー」のときに、体を前に乗り出すの。
「こういうところですよ」というのをまず見せるんだ。
- 南
- 一回、見るんだね。
- 糸井
- 「セット」でうしろに下がって。
- 南
- あ、勢いつけるんだ。
- 糸井
- そう。勢いつく。
その3つの言葉があると、ぜんぜん平気なの。
- みうら
- はぁあ。
- 南
- 「レディー」「セット」「ゴー」の法則。
- みうら
- ゴルフでよく言う
「チャー」「シュー」「メン」みたいなもんですね。
- 糸井
- そうそうそう。
「チャー」っていってもギタリストじゃないんですよ。
- みうら
- わかってますよ、それは(笑)。
- 南
- バイオリンはなんだっけ、
「キャラメルチョウダイ」だったっけ。
- みうら
- え、なんですか、
バイオリンは「キャラメルチョウダイ」って
弾けばいいんですか?
- 南
- そうみたい。
- 糸井
- それはなんだか品がいいね。
- 南
- ははは。
(いろんなものを買いこんで、
道の駅のひろばでお昼ごはんに。
明日につづきます。)
2019-12-11-WED
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN