緑のなかに出かけようよ。
先輩、後輩、そしてなかよし。

たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。

ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
3人が訪問したところ:WOODLAND BOTHY
第10回 やりたいことをやっている。
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糸井
みうらはいままで、
いろんなマイブームがあったでしょ? 
伸坊は、そういうのはないよね。
特にない。
へんなものは好きなんだけど、
ものすごく肩入れすることは、
あんまりないね。
みうら
南さんのその
「へんなものは好きだけど肩入れしない」
という考えは、
南さんがいなかったら、俺は
知らずに一生を終えていたと思います。
それまでぼくのまわりには
「熱いやつ」か「冷めてるやつ」しかいませんでした。
南さんはいつも「いいね、それ」って言う。
糸井
たしかに。
みうら
いまはみんながインスタグラムに
「いいね」するけど、
あのハシリは南さんですから(笑)。
糸井
熱い人が熱いままでそこだけ見てる状態って、
入口がないんだよね。
みうら
そうです、そうです。
南さんが「いいね」と言わなきゃ
はじまらなかったものは、
『ガロ』の編集長時代にもたくさんありました。
写真
いや、俺が行くまでに、
『ガロ』という雑誌が
そういう場所になってたんだよ。
糸井
つげ義春さんは、
伸坊が編集長になる前から連載してたもんね。
ぼくは読者でした。
糸井
藤子不二雄さんのマンガを読んで育った人たちが、
「つげ義春が描いた、その、
『ねじ式』っていうのは、なんなんだよ」
で、おしまいにするかもしれなかった。
「おしまいにならないよ」をした人たちが
その時代時代にいたんだよね。
みうら
ぼくらはやっぱり、糸井さんと湯村輝彦さんの
『ペンギンごはん』がルーツです。
久住昌之も、根本敬もそう言ってる。
「これだったら俺にもできるんじゃないか」
と思った。
糸井
みんなそう思ったんだよ。
みうら
でも、やってみたらできないことがわかる。
そうそう。
写真
みうら
「やっぱりこの人たちがすごいんだ」とわかる構図が
ちゃんと作ってあった。
ぼくらは「しまったな」とは思ったけど、
そのまま歩みはじめました。
おふたりがいる時代に生まれてよかったと、
俺はほんとうに思っています。
いなかったら、ないですよ、俺は。
糸井
あのときに『ガロ』が困ってたおかげで、
原稿料が「ただ」だったということが、
俺はすごく重要だと思ってるんだよ。
俺もそれは思ってる。
糸井
ねぇ。
本当におもしろいことができたのは、
じつは、お金が関係ないからなんだよね。
横尾(忠則)さんにしても、
和田(誠)さんにしても、
代表作のようにみんなが思っているものは、
お金に関係のない作品です。
写真
糸井
横尾さんは、
唐十郎さんの芝居のポスターを作ったね。
あれもそんなにお金をもらってるはずないですね。
だから本当にやりたいことをやってる。
横尾さんは、深沢七郎さんが
今川焼屋をやったときに、
ポスターつくったんだよ。
みうら
あ、横尾さんのそのすごいポスター、憶えてます。
赤瀬川(原平)さんのところにも
発注があったの。
「包装紙のデザインしてくれ」って、
深沢さんがたのみに来て、
今川焼で儲けたようなしわくちゃなお金で、
原稿料をその場で払ったってんだね。
糸井
はぁ。
みうら
へぇえ。
そのとき赤瀬川さんは、深沢さんの顔を描いた。
印刷代の都合で、
「せいぜい2色しか使えないから」と言われたから、
赤瀬川さんは言われたとおり、
実直に2色でやったわけ。
でもそのあとで、横尾さんの
ポスターだか包装紙だかができあがった。
横尾さんのは4色刷りでさ。
糸井
横尾さん、聞いてくれないんだ。
みうら
そうですよ、横尾さんのはカラーです。
「4色でやります」というのは、
横尾さんが言ったんだ。
「お金はぼくが出します」って。
みうら
本人が?
糸井
あぁ、すごいなそれは。
写真
だからあのポスターだか包装紙は、
印刷代を横尾さんが出してるわけよ。
糸井
そこまでして4色にしたかったんだ。
4色にしたかったし、
深沢さんのお店の包装紙を作りたかったんだ。
自分が本当にたのしくやりたいという
気持ちのほうが大きいんだね。
それで儲けようとは考えてない。
それがのちに名作になって、
みうらさんにも憶えてもらえるんだよ。
みうら
「おもしろいほうに走る」は、たぶん
南さんが行った 美学校から生まれた
発想なんじゃないかと思います。
ぼくは美学校には行かなかったけど、
「苦労したほうがおもしろい」というようなことは、
南さんや赤瀬川原平さんから
ものすごく学んでいると思います。
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(山の中、星の下、
聞こえるのは3人のおしゃべりだけ。
明日につづきます。)
2019-12-18-WED