先輩、後輩、そしてなかよし。
たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。
ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
- 糸井
- 朝起きてごはん食べて、釣りして、
もうごはん食べるんだね。
- みうら
- 何にしようか迷いますね。
- 糸井
- うどんもうまそうなんだよなぁ。
どうしようかな。
つけ麺もよさそうだな。
よし、俺はせいろとコロッケにしよう。
- みうら
- ぼく、天ぷらそば。
あったかいほうお願いします。
- 糸井
- あ、そばが来たね、はい、
このおじいさんと、もうひとつはあっちです。
- みうら
- 南さんはおじいさんじゃないですよ。
- 糸井
- このおばあさんと(笑)、
- みうら
- ぼくはおばあさんじゃないです(笑)。
- 南
- ははははは。
- 糸井
- 思えば、幸せでしたね。
- 南
- そうだね。
- みうら
- やめてくださいよ。
- 糸井
- では、いただきます。
わさびをこう、
ちょっぴりのすけで。
(スルスルと蕎麦をすする音)
- 南
- (スルスルスルスル)
- みうら
- 南さんも糸井さんも、
かなりのバキューム音ですね。
- 南
- そう?
- みうら
- けっこういい音です。
- 糸井
- 京都の人はさ、
全部のそばをつゆにつけて食べるからだよ。
- みうら
- そうですよ。
- 糸井
- ぼくたちは、半分しかつけないから。
- みうら
- 東京はそうなんですか。
- 糸井
- そばを半分つけた状態で、
(スルスルスルスル)。
- みうら
- なるほど。
- 糸井
- 真空状態でそばをすすりあげるんです。
真空飛び膝蕎麦。
しかも、ぼくは人生のある時期から、
ネギとかわさびをそばにのっけて
食べることにしました。
- みうら
- え? なんですか?
- 糸井
- ネギやわざびを、
つゆじゃなくてそばに絡ませて食べるの。
- みうら
- つゆには入れないんですか。
- 糸井
- うん。理由はただ、
単純に効くからです。
- 南
- わさびを完全に
つゆに溶かすんじゃない、ってのは、
最近よく聞くよ。
- みうら
- へぇえ、そうなんだ。
- 南
- とろろそばもうまそう。
とろろ芋のことを自然薯って言うんだね。
- みうら
- 自然薯といえば、
団鬼六さんのSM小説では、
必ずといっていいほど、自然薯を。
- 糸井
- 塗るんですか。
- みうら
- アソコに塗るんです。
だからぼくは、いつもとろろを見るたびに、
映画に出ていらした谷ナオミさんが、
「かゆい、かゆい」とおっしゃるシーンを
思い出します。
- 南
- すごいね。
- 糸井
- とろろを見てそれを思い出すの?
俺も今日からそうなりそう。
- みうら
- 一度映画も見てください。
- 南
- あぁ、おいしかった。
ごちそうさまでした。よいしょ。
- 糸井
- いま、立ちあがるの大変だったでしょ?
- 南
- 大変だった。
- 糸井
- そこがおじいさんなのよ。
みうらは「おじいさん」と言われることは、
まだないよね。
- みうら
- ありますよ。
- 糸井
- ある?
- みうら
- 運動も何もしてないから、ぜんぜんだめです。
- 糸井
- どうしようか。
- みうら
- え?
「どうしようか」って言ったんですか、いま。
- 糸井
- うん。
- みうら
- ええっと、どうしようもないから、
毎晩シックスパッドを体に貼ってるだけです。
- 糸井
- シックスパック?
- みうら
- シックスパッド。
ビュービューって振動するやつです。
おかげで筋肉はついたんですよ。
- 糸井
- どこに?
- みうら
- 首や腕のあたりです。
急に首が痛くなって、お医者さんに行ったら
「手術しても治らない」
「筋肉をつけるしかない」と言われて、
はじめました。
- 糸井
- 筋肉は衰えるよね。
- 南
- でも、みうらさんは、家で
おじいさん呼ばわりされないでしょ?
- みうら
- そんなことないんですよ、
子どもが小さいですから、
まるで孫かという年の差なんで、
「じいさん、口臭い!」などと言われてます。
- 南
- なんの匂いだろう。
- みうら
- 歯茎を引き締める歯みがきまで使ってるのに、
臭いなんて言われたらとても損です。
- 南
- 歯磨きが匂うの?
- みうら
- いえ、歯磨きじゃなくて、
加齢臭というやつなんでしょうけどもね。
- 糸井
- そうなんだ。
- みうら
- うちの子が、ある日、
パパは地蔵の匂いがするって言いだしたんですよ。
「どんな匂いだよ。
地蔵の嗅いだことあるのかよ!」って(笑)。
- 糸井
- 地蔵だと断言するわけね。
- みうら
- 「それは極楽みたいな、天国みたいな匂い?」
「違う。地蔵の匂い」
- 南
- わははははは。
- みうら
- 「俺のほうが仏像をたくさん見てるんだぞ、
お前に地蔵の匂いなんかわかるもんか」
「わかる」
「つまり、仏さんの匂いでしょ?」
「違う、地蔵」
- 糸井
- どこで嗅いだんだ。
- 南
- 「それはつまり、お香でしょ?」
- みうら
- 違うんですよ。
「違う、地蔵」だって
言い張るわけです(笑)。
(そばを食べ終え、次はいずこへ。
明日につづきます。)
2019-12-26-THU
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN