── 糸井家は、カレーのお肉は?
正月のカレーでいうとビーフ。
煮込む用のほかに、
ちっちゃいステーキぐらいの大きさの肉を
別に用意しておいて、
焼いて、カレーの上にのせて食べる。
あー、いいですね!
超高等テクニックですね。
お正月向きな感じですね。
というのはね、
煮たお肉も食べたい気持ちがあるんで、
そっちはちょっとちっちゃくして入れるんです。
香り付けにもなるし。

何年か前まで、ホテルオークラでは
まさしくそういうカレーを出していました。
カレーって煮込むときに入れる具は
だいたい出汁が出るから、
すごくおいしいスープができるんだけれども、
お肉は出汁がらになるんですね。
だからそのことを突き詰めるシェフは
出汁がらの肉は捨てるんです。
ああ!
その代わり、ビーフカレーって言われたときに
ソテーした肉を最後に合わせて出す。
いちばんおいしいのはステーキ肉だから。
糸井さんは、それをダブルでやってるんですね。
すごいですよね。
でもさっきのチャーシューを作るのに比べたら、
手間はかかんないんですよ。
それは何かどこかで聞いたわけじゃなくて、
自分で食べたくてそうなさったんですか。
そう、食いたい、食いたい(笑)。
いいなあ、そういう、
本能に素直にレシピを作っていくと、
精度のいいレシピができるんですね。

本能に素直(笑)。
何なんですかね、
こういうのを筋がいいって言うんですかね。
タマネギも、炒めたやつの他に、
かたちで食べたいぶんを入れますよ。
そうですか!
もともとタマネギは、
スパイス的な感覚なんですよね。
香りが結構強いので。
刻んだ生のタマネギを
いちばん最後にどさっと入れて、
ぱっと混ぜたりすると、
タマネギ臭いのが、残るじゃないですか。
ぼくもそれが欲しいから、
後で入れる用のタマネギを
ちょっと取っておいて、
最初炒めるぶんの他に、入れます。
それもおいしいですよね。
最初のタマネギは甘くなるし。
そうです。
でもタマネギらしさがなくなる。
ショウガとニンニクといっしょくたに、
ペーストみたいになりますから。
いやはや、糸井さんのカレー、すごいです。
えっ、ほんとに、本能のままです(笑)。
いや、それが、すごい。
本能カレー。
すっぽんはやめたけど。
── 飯島家は、お肉は?
私は牛を使ってます。
そうだ、あと、最後にショウガをおろして、
『LIFE』みたいに入れたりします。
飯島さんて出身はどちらですか?
八王子なんです。
じゃあ東京だけど牛肉なんですね。
東京の人のカレーは
豚っていうイメージがあって。
そうですね、
家ではずっと豚だったんですけど、
豚もおいしいよね。
自分で作るときは、牛もいいですね。
どっちもいいよね。
鶏もいいしね。
あと、カレーの日って
カレーがメインじゃないですか。
そういう日もあっていいんですけど、
映画『東京タワー』のときに出した本で、
おかずのひとつがカレーだったらいいのにな、
って思ってつくったものがあって。

ああ、いいねー。
うん、うん。
野菜炒めみたいなのに、
仕上げにちょっと濃いめに溶いたカレーを入れて、
おかずの1品としてのカレーにしたんです。
高田馬場のカレー屋さんに
そういうのがあって。
夢民(ムーミン)ですね。
あ、そうです!
あそこがすごくいいなあと思って。
そうそう、うちの近くの焼肉屋でも、
カレースープだけ出すところがあるんですよ。
なるほど。
牛肉で出汁を取って、
それを市販のルウで溶いてるだけなんですけど、
それが焼肉の間にあるとすごく贅沢なんですよ。
付けタレっていうわけでもなく?
スープがわりですね。
お椀で出てくるんですよ。
具は何も入ってないんですよ。
(笑)面白いです。
音楽で言う、転調ですよね。
カレーをちょっとだけ、
おかずの1つとして出すっていうのは
わりと流行ってきてますよね。
コースの最後にカレー食べますか?
って訊かれたり。
あっ、そうですね。
でも、中途半端にカレー風味っていうのは
あんまり‥‥
そうですね、つまんないですね。
安っぽい感じがしちゃうんですよ。
カレー粉だけ振ったよみたいな。
そうなんです、そうなんです。
カレー炒めみたいなものって、
どうかなって感じることがあるんです。
そういうときは、ただのカレー粉じゃなくて、
それこそスパイスで炒めたい。
いかにもカレー粉の味じゃなくて、
糸井さんがブレンドしているようなスパイスを、
一緒に炒めて、インドの副菜みたいな、
ああいう味で食べたいな。
カレーを濃いめに作っといて、
ソース的に食卓にのせる人とかいたら、
ちょっと憧れるな。
何かこう、トーストにジャムみたいな感じで、
カレーがちょっとあるって。
そうだ、ぼくが最近、
ちょっと行くようになった料理屋で、
トンカツ頼むと、
カレー、ちょっと付けてくれるんだ。
あ、それ、いいですね!
ジャム容れぐらいのところにカレーが入ってて、
トンカツ、ぼくはからし醤油でも食べるんだけど、
ソースでも食べるし、レモン塩でも食べる。
で、カレーもちょっとこうのせて。
── うわー、それはおいしそう。
それ、いいですね。
築地の洋食屋さんにも1軒あるんですよ。
小鉢のカレーソースが100円でつく。
それはもうトンカツでもメンチカツでも
追加できるんです。
うわー、いい!
最後、ちょっとご飯を残して一気に食べる、
そうです、そうです。
よきタイミングでカレー味を
入れられるからいいですよね。
飯島さんの焼肉屋もそうですけど。

いやはや今回情報量が多い。
そして水野さん、飯島さん、
外のカレーもたくさん食べてるんですねー。
「ちょこっとカレー風味」はぼくも苦手です。
給食の、カレー風味のポテトサラダが嫌いだったな。
と、カレー回想をしつつ、明日につづきます!(武井)
2012-01-04-WED
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