木内 |
世の中に演劇が必要のない人っていうのは、
いると思いますか?
つまり、演劇と関わらない人はいっぱいいる。
仕事にしているぼくに向けても
「仕事になってるの?」って訊く人もいる。
演劇は結婚相手としては最悪な職業だとも言われる。
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ルヴォー |
当然そうですよ。みんな言ってますよ。
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木内 |
それは世界的にそうですか(笑)?!
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ルヴォー |
世界中で、それはたぶんそうだと思う。
だって、「演劇やってます」なんて、
結婚しようと思った相手の親に言ったら、
「それはわかりましたから、
生活のためには何をされてるんですか?」
って言われますよ。
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木内 |
あぁ‥‥映画監督もそうですかね。
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ルヴォー |
当然ですよ。
表現とか芸術の仕事をしているとね、当然。
それを生活の手段にできたら、
それはほとんど奇跡のようなもので。
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木内 |
ルヴォーさんは演劇でできること、
表現手段を愛しているのだと思いますが、
演劇でできないことをやりたくなったりはしますか?
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ルヴォー |
したくなることもあります。
若い時は政治を志したいと思ったこともある。
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木内 |
えぇっ?
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ルヴォー |
演劇をやめようと思ったことはないんだけれど、
政治っていうものも、やはり身近に感じられて、
やりたいという気持ちになったことがありました。
20歳、21歳くらいの時に、
政府の命令によって取り壊しが決まりかけた劇場を
存続するために立てこもったりしたんです。
自分が指揮して。
そんなことしてたから、政治家の人と
いっぱい知り合いができたし、
弁護士とかも知り合いができたし、
労働党から「参加しませんか?」と誘われたこともあって。
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木内 |
政治家として?
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ルヴォー |
考えたこともありました。
でも、自分には制度っていうものは
窮屈だと思って、やめておいたんですけど。
政治の世界に入るとしたら、
やりたかった仕事は1つしかなくて、
外務大臣。
自分が政治に参加することを
やっぱりやめようと思った時に、
入党した人が今の外務大臣だから、
その時目指していたら‥‥。
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木内 |
なっていたかもしれない?
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ルヴォー |
いえ、そういうようなところまで行ける時間は
経ってるんだなぁと思ったということです。
そんなことを振り返って考えたりもします。
なぜ今考えるのかというと、
政治と、政治が人にどういう影響を及ぼすかに
すごく興味があるからなんです。
そうじゃなくて選んだこっちのほうの道が
あまりにもおもしろいから、
今から変えようとはまったく思いません。
言葉だったり、政治だったり、文化だったりの、
この人間の生活における大きな集団について
考える機会に、この仕事はなっているわけだから。
それを自由な個人として追求できるわけだから。
政治のように、制度から来る縛りに応えなきゃいけないとか
要求をされない立場じゃないですか。
個人としてそれをやれるということ、
世界を自分で発見しながら体験できるっていうことが、
今は、できているから、それを変えるのは考えられない。
もし外務大臣だったら、
常に自分の本当の感情を押し殺して、
何かの成果を得るために動かなきゃいけない。
それは立派で当然のことだけれど、
自分にはそんなに興味を持てる話ではないんですね。
ちなみに労働党に入らないっていうことを決めた時、
同じ年に入ったのがトニー・ブレアです。
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木内 |
首相にまでなった人じゃないですか。
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ルヴォー |
ね、そんなにおもしろくなさそうだ。
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木内 |
たとえば映画を撮りたいなんて、
思い浮かんだりはしませんか?
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ルヴォー |
舞台と映画は同じ領域に存在はしているけれど、
その必要な技術はそれぞれにありますよね。
でもその仕事の中心にあるのは、
いかにしてストーリーを伝えるか。
それが核にあると思っていますから。
そもそも映画も大好きだし、
実は、今年撮るかもしれませんよ。
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木内 |
えっ?! どこで撮るんでしょう?
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ルヴォー |
ヨーロッパで。
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木内 |
へぇ!
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ルヴォー |
可能性があるんです。
今、それを実現しようと頑張っているところ。
まだ決定ではないので、
「実現しますように」のおまじないをかけています。
でも、本当にやりたいと思っているんです。
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木内 |
それは演劇にはできないことですか?
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ルヴォー |
この話に関しては、映像のための話だと思います。
もちろん演劇で伝えることもできる物語でもあるけども、
演劇でやるにはシンプルすぎると思う。
映像だと、シンプルさが深さにも繋がり得るけど、
同じ話を演劇でやると、
単純すぎてしまうかもしれない。
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木内 |
なるほど、わかります。
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ルヴォー |
舞台の演出と映画監督には、つながりはありますよね。
ただ、カメラを通して物語を伝えるっていうことに、
今ちょっと興味があるんです。
しかも撮る機会を与えられているなら、
やってみたいと思っているんです。
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木内 |
日本で映画を撮ってみたいとは思いませんか?
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ルヴォー |
撮ってはみたいけど、
これっていう題材は思い付かないです。
自分の観点で撮った日本、
映画にしてみたいという気持ちはあるんですよ。
すごく個人的な部分を扱うという意味で。
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木内 |
それは観てみたいです。
観てみたいといえば、ルヴォーさんはブロードウェイで
『屋根の上のバイオリン弾き』や
『ガラスの動物園』を演出していますよね。
将来そんな作品も観られたら、うれしいな。
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ルヴォー |
日本で『屋根』ね‥‥とても人気ですよね。
日本では森繁久彌さんから始まったんですよね。
『屋根』って、そういう作品なんです、
このスターのためにある、となってしまう素質を持ってる。
そういえばぼくがブロードウェイでやった時、
作家のジョセフ・スタインが、
日本で初演した時の話を教えてくれたんです。
日本の初演を観て、
「これは日本のミュージカルだ」って
突然気が付いたって。
そうだ、父と娘と伝統と。そのままですよね。
(つづきます!) |