綾戸 |
いややわぁ・・・あんたと喋っていると、
ようわかってるからイヤんなるわ。
「ちゃうねん!」って言いたいのに
そのとおりなことばっかりじゃん。
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糸井 |
ちゃうねん!って取材とかで言う時もあるの?
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綾戸 |
言う言う。
それははっきり言いますよ。
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糸井 |
あの、安っぽいストーリーを
押しつけられるとイヤじゃない?
「たいへんですねぇ・・・」
「苦労をされてきて・・・」って。
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綾戸 |
そう!
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糸井 |
そういう時に
「たいへんじゃないです」って言うと。
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綾戸 |
いちばんつらかった質問、
ここでいいましょか?
「綾戸さんは、歌っている時に
お客さんにどのようなメッセージを
発していらっしゃるんですか?」
・・・メッセージ?
こっちは、歌詞で、必死やわ!
メッセージも何もあらへんねん。
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糸井 |
イチローに
「どんなメッセージで振っているんですか?」
って聞くようなものだよね。
そんなものはないよね。
「当てたい」っていうだけだから。 |
綾戸 |
そうそう。それよ。
百人いたら百個のメッセージは
みなさんが作ってくれはるんですよ。
わたしは、メッセージを作らない。
昨日夫婦喧嘩した人もいれば、
昨日入学試験に合格した人もいるし、
それは状態は、いろいろよ?
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糸井 |
お客さんの数だけ
ちっちゃい池がぽんぽんぽん、ってあって、
そこの数だけ波紋がひろがるというか。
俺は、石を投げているがわなんだなぁ、と。
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綾戸 |
そう。
一個なげたら、バ!って泡が。
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糸井 |
ちっちゃい池も、おっきい池もいいんだよね。
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綾戸 |
そう!
あれは最高ですよ、気分は。
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糸井 |
酔っているような感じ?
酔ってはいないけれども、半酔い?
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綾戸 |
わたしは、
酔うてる時にはだめだわ。こける。
酔うんじゃなくて、池に入る。
入り込むんですわ。
いい気分になりながら、
しっかりと歩いていくという感じなんです。
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糸井 |
この電波少年の部屋に3日間いると、
いろいろなお客さんがいらっしゃいますよね。
そこで一番ラクなのは、同業者なんですよ。
たとえばイラストレーターとか広告屋とか。
話をしなくてもいいぐらいほっとけるの。
話がもりあがらなくても平気なの。
その温度の低さみたいなのが、
その人と楽しむ時間なんですよ。
いま、綾戸さんの一個前にいたのは、
若い学者さん、31歳で脳を研究されている人で。
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綾戸 |
あら?
なんで会えへんかったんやろ(笑)。
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糸井 |
ハハハ。
綾戸さん会ってもいいぐらいですよ。
かわいらしい天才なんですけど、
その人と一緒にいる時は、
同業者ほどではないけど、
すこしだけアクティブに動きます。
そして、芸能系の人の場合は、
更に温度をあげないと、
場所をつくれないんですよね。
芸能の人たちは、みんな体温が
2度ぐらい高いような気がするんです。
綾戸さんって、
芸能の人のはずなんだけど、
学者さんよりもすこしだけ高い程度で、
テンションは高いけど、
芸人さんのようには迎えないんですよね。
だから、綾戸さんって、
芸能界の人じゃないかもしれないよね。
サインをしたり、
お客さんの前でサービスはするけれども、
芸能人の温度ではないもん。
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綾戸 |
そうそう。
ほんとに、そうなんですよ。
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糸井 |
テレビで見かけるけど
芸能人ではない、というか。
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綾戸 |
よろこんでいいのかしら?
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糸井 |
ラクしたいなら、
芸能人になったほうがいいかもしれないけど、
このいまの半端さのほうが、
捨てられないで長く生きていけそう。
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綾戸 |
あぁ、なるほど・・・。
わたしは、ゆっくりでええねん。
毎回おみやげもろてるから。
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糸井 |
80歳までやってるかもね。
寿命は、長いほうがいいよね。
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綾戸 |
そうそう。
何が起こるかわからないから。
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糸井 |
半端な目標をきめるよりは、
長生きでいったら、おもしろそうだね。
80歳のシンガーって、どう?
脳は疲れないんだよ?
だから、だいじょうぶ。
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綾戸 |
あぁ、だから眠たいコドモは
ばーって、動くんだ。
脳は疲れていないけれども、
カラダは疲れているから。
わたし毎日その状態やけど・・・。
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