身近で親しい、デザインあ展 佐藤卓×糸井重里
日本科学未来館で開催中の
企画展「デザインあ展 in TOKYO」の会場で、
グラフィックデザイナーの佐藤卓さんと
糸井重里がトークをしました。
閉館後の館内を卓さんにガイドしていただき、
わくわくするような展示を体験したり、
デザインの概念にまで話をひろげたり。
みんなに喜ばれているデザインは、
佐藤卓さんが見つめる「あたり前の日常」に、
どうやらヒントがありそうです。
第1回 佐藤卓さんのガイドツアーその2
糸井
この写真は、なんでしょう。
佐藤
パーフェクトロンさんの作品で、
『目には「め」を 歯には「は」を』
という視覚でたのしむものですね。
瞳の所には「ひとみ」と書いてあって、
もっと細かく見ていくと「まつげ」とか。
写真
目には「め」を 歯には「は」を

(パーフェクトロン)
「なまえ」は、あらゆるものを区別し、
意味を切り分けています。
わたしたちが見ている世界を
ことばにおきかえることで、
ものとなまえの関係を観察します。
<撮影協力>TYO/モンスター

<印刷協力>キヤノンプロダクションプリンティングシステムズ株式会社
糸井
(近くに寄って見る)
ああ、本当だ。
写真
佐藤
遠くから見るとこどもの写真ですが、
近寄って見ると文字が見えます。
「あたま」や「くび」から、
「ほっぺた」に「なみだぶくろ」まで、
場所によって言い方が変わっていきます。
世の中にあるものは全部、
言葉化されているので。
糸井
これは、コンピューターで
自動的に入れているんですか?
佐藤
プログラムを作っても細かすぎて、
1個1個、自分で入れていかないと、
うまくいかないみたいです。
糸井
色を塗るのと同じように、
埋めていくんですね。
佐藤
ちょっと注目していただきたいのが、
鏡に書かれている文字は、
文字もひっくり返っているんですよ。
写真
糸井
あぁ!
なるほど、なるほど。
佐藤
パーフェクトロンさん、
お茶目なことします。
糸井
ああ、いいですね。
佐藤
この壁は『全国名字かずくらべ』ということで、
日本の名字のほとんどを網羅しています。
人数が多い文字ほど大きくて、
珍しい苗字は、すごく小っちゃく書かれています。
写真
全国名字かずくらべ

(パーフェクトロン)
全国のおよそ8万の名字を並べました。
大小さまざまな四角の大きさは、
その名字の人口に比例しています。
さて、あなたの名字はどこにあるかな?
<技術協力>Scott Allen

<出典データ>名字由来net(株式会社リクスタ)2017年度
糸井
卓さん、「佐藤」は1位じゃない?
佐藤
そう、そうなんです(笑)。
お恥ずかしい。
糸井
「鈴木」「高橋」を抑えての第1位!
佐藤
もう、勘弁してください‥‥(笑)。
ほら、ここに糸井さんもいますよ!
写真
糸井
おお、いますねえ。
自分に関係あるものを探しますよね。
佐藤
単純な作品ですが、
みなさん、喜んで見てくださるんです。
友達の珍しい名字が
あるのかなって探してくれているみたいです。
あと、小さく書かれた名字も探せるように、
虫めがねも用意しています。
糸井
これだけのことで、だいぶ遊べますね。
ああ、「渡辺」とかも大きいんだ。
佐藤
そういう遊びもできますね。
糸井
かなり小さく書かれているのは、
よっぽど珍しい名前ですね。
あぁ、小っちゃいにもほどがある(笑)。
(ルーペで見ながら)
うーん‥‥、「増嶋」とか。
写真
佐藤
こんなにたくさんの苗字が実際にあるんですよ。
ではこれから「体感のへや」に移ります。
映像と音が強力な部屋です。
中村勇吾さんが全体を監修していて、
『「あ」のテーマ』『解散!』
『森羅万象』『ガマンぎりぎりライン』
という4つの映像が流れます。
写真
体感のへや
番組オリジナルソングや音楽と
ぴったりシンクロする映像が、
展示室の四方の壁面いっぱいに
映し出されます。
360°取り囲む映像と音で、
デザインを体感してください。
◎「あ」のテーマ
(中村勇吾/音楽:小山田圭吾)

◎解散!
(岡崎智弘/音楽:小山田圭吾)
<撮影・照明・解散>
「デザインあ」解散!チーム

◎森羅万象
(高野光太郎/音楽:小山田圭吾/
うた:大野由美子/紋制作:波戸場承龍)

◎ガマンぎりぎりライン
(柴田大平/合唱制作:福島康晴)
<映像制作>TYO/モンスター
<撮影協力>株式会社ナリカ
糸井
先日「谷川俊太郎展」に行きましたが、
あの空間の雰囲気に似ている気がしました。
佐藤
「谷川俊太郎展」も、
中村勇吾さんと小山田圭吾さんが
映像の制作をしていますからね。
糸井
ああ、なるほど。
とても近いものを感じました。
佐藤
そうかもしれませんね。
最後は「概念のへや」です。
それぞれ「じかん」「くうかん」「しくみ」
というテーマでわかれています。
糸井
いろんな映像が流れていますね。
佐藤
『はやい「あ」』や『おそい「あ」』など、
時間をテーマにしたいろんな映像ですね。
写真
糸井
アイデアがありますね。
佐藤
世の中にある時間のかたち、
たとえば、マンガのコマだったり、
カレンダー、時計だったり、
世の中にあるいろんな時間の形を
見せてくれてるような作品もありますね。
糸井
あぁ、どれもおもしろいです。
佐藤
「じかん」の次は、
「くうかん」をテーマにしたゾーンです。
こちらは、plaplaxさんのおふたりが担当しています。
『くうかんパラメーター』という展示は、
この画面にある仮想の空間を
自由に変化させられます。
糸井
「おおい」と「すくない」、
「ながい」と「みじかい」。
ああ、いろいろ変えられるんだ。
佐藤
部屋の中にいる人数が変わったり、
部屋そのものがながーくなったり。
空間のパラメーターをいじって遊ぶ、
そういう作品ですね。
写真
くうかんパラメーター

(plaplax+斎藤雄介+
赤川智弘+小楠竜也)
くうかんの尺度を変える
パラメーターを操作して、
仮想空間をコントロールしてみよう!
佐藤
普通のサイズがいかに便利かということに
気がついてもらいたいという意図だそうですよ。
最後が「しくみ」のゾーン。
ここではいろいろなものの仕組みを紹介しています。
遊べるものがあるので、
ちょっと試してみましょうか。
『歯車になる』という遊びです。
写真
歯車になる

(パーフェクトロン)
歯車になってかみあってみましょう。
用意されたしくみをあなた自身の力で
上手に動かすことができたなら、
今日からあなたもりっぱな歯車です。
<技術協力>株式会社大番
糸井
おお、歯車ですか。
佐藤
これはね、2人で回ることができるんです。
糸井
じゃあ、ちょっとやってみます。
写真
糸井
うわぁ!
佐藤
はー、けっこう目が回ります。
この歯車の動きで、
発電、音を鳴らす、回転数を数える、
ということができます。
糸井
音が鳴るのは、蓄音機と同じですね。
佐藤
そうそう、そうです。
じっくり見られなかったものもありますが、
これで展示はひと通りご紹介できました。
糸井
展示をずーっと見ていく中で、
一回「体感のへや」をくぐったのが
とてもいいですね。
佐藤
ああ、そうですか。
糸井
展示の全部を、
あの感覚にしてくれますね。
「見る」っていうところに
収まってしまいがちなものを、
きちんと「体感」にさせてくれます。
佐藤
たのしんでいただけたようで嬉しいです。
ありがとうございます。
写真
(つづきます。
次回からは、佐藤卓さんと糸井重里の
トークをおたのしみください。)
2018-09-08-SAT
写真
企画展「デザインあ展 in TOKYO」
2018年7月19日(木)ー10月18日(木)

日本科学未来館
会場
日本科学未来館

1階 企画展示ゾーン(東京・お台場)

開館時間
10:00ー17:00

※入場は閉館時間の30分前まで
ただし、土曜日、祝前日(9/16、9/23、10/7)は
20:00まで開館、常設展は17:00に終了

休館日
火曜定休

>公式サイトはこちら



山梨、熊本への巡回も決まったそうです!
<山梨会場>

会期
2019年4月から

会場
山梨県立美術館

(山梨県甲府市貢川1-4-27)


<熊本会場>

会期
2019年6月から

会場
熊本市現代美術館

(熊本県熊本市中央区上通町2番3号 びぷれす熊日会館3階)