身近で親しい、デザインあ展 佐藤卓×糸井重里
日本科学未来館で開催中の
企画展「デザインあ展 in TOKYO」の会場で、
グラフィックデザイナーの佐藤卓さんと
糸井重里がトークをしました。
閉館後の館内を卓さんにガイドしていただき、
わくわくするような展示を体験したり、
デザインの概念にまで話をひろげたり。
みんなに喜ばれているデザインは、
佐藤卓さんが見つめる「あたり前の日常」に、
どうやらヒントがありそうです。
第3回 あたり前の日常がテーマ
(企画展「デザインあ展 in TOKYO」の
閉館後の会場を佐藤卓さんにガイドしていただき、
ひととおり見てまわったところから、
ふたりの対談がはじまりました)
写真
糸井
いやぁ、これは来てよかった!
「どれがおもしろかったですか」
とか言われるでしょうけど、
どれもおもしろかったなぁ。
佐藤
お忙しいところ、
どうもありがとうございます。
糸井
こういう展示って、ともすると、
「混んでいるらしいから評判いいんですね」
で終わりになっちゃいそうじゃないですか。
でも、こうやって会場に来てみると、
やっぱりおもしろいです。
ぼくは、上野の「縄文展」に行きましたが、
縄文土器はずっと考古学以外の分野では
目を向けられていなくて、
芸術という扱いを受けていなかったものですよね。
岡本太郎が「なんだ、これは!」と見出してから
「芸術」っていうことになりました。
ぼくは、ここにあるデザインたちも、
自分では芸術をやっているつもりじゃ
ないと思うんですよね。
佐藤
いや、本当にそうですよ。
糸井
芸術ではないけれど、
少なくとも、文化のすごく重要な一部を、
みんながずーっと、
コツコツと担ってきたわけです。
デザインというものが、
美術に対抗するものじゃなくて、
人の行為の中に含むものだということが
とてもよくわかるような展示でした。
写真
佐藤
そうですか、嬉しいです。
糸井
デザイナーは医者のようでもあるしね。
身近な物の正体を突き詰めて再現するとか、
治療するとか、治すとか。
佐藤
1回バラバラにするとか。
糸井
そうそう。
だから、近代の他の学問の発展とも
並行していますよね。
それと同時に、
お客さん側の心が動くことも感じるわけです。
いろんなデザインが一堂に会すのは、
とてもおもしろいですね。
佐藤
はい、はい。
モチーフになるものは、
ごく日常に転がっているものが大半です。
特別なものなんてなくて、
なんでもないものばっかりです。
写真
糸井
そうですね。
卓さんは、「デザインあ展」では、
この全体を見ているんですか?
佐藤
ぼくは総合ディレクターをしています。
『デザインあ』の番組は
2011年からスタートしていますが、
その6、7年くらい前からNHKのプロデューサーと
「子どものためのデザインの教育が、
これから必ず大切になっていくはずだ」
という話をずっとしていたんです。
仕込むのに数年かかったんですけど、
番組が作られる最初から関わっています。
糸井
いや、それはすごいことですよ。
佐藤
番組の初期から作り続けていたら、
たまたまぼくが21_21 DESIGN SIGHTに
関わっているということもあって、
5年前に初めて「デザインあ展」を開催しました。
そのとき、NHKには、
「番組をそのまま展覧会で使うんじゃなくて、
コンテンツを展覧会用に作り替えたらどうか」
という提案をさせていただいて、
実験的にやってみたんです。
たくさんのお客さんに来ていただけて、
今度はNHKから「やりたい」と言っていただけて、
NHKの主催で準備ができました。
糸井
デザインというとみんな、
グラフィックデザインに目がいきがちですが、
本当は、隠れたところにも
山ほどデザインはあるんですよね。
佐藤
まったくそうだと思います。
デザインは、世の中に山ほどありますよ。
普通に生活をしていて
デザインだなんて思ってもいないことが、
じつはよく考えてみると、
「それって、デザインなんじゃないの?」
というものがいっぱいあります。
写真
糸井
デザインの概念にあたる部分だとか、
見えないところもこの展覧会に入れられたし、
「説明できないけど、感じる」
みたいなものも入っていました。
構想の時間が長かったおかげで、
いい作品ができているような気がしますね。
佐藤
本当に、蓄積があったおかげです。
糸井
テレビを続けてきたのがよかったんでしょうね。
でも、テレビでもヘタをすると、
平面のディスプレイの
グラフィックデザインになりがちだけど、
そうではなく、開拓してきたのが活きている。
佐藤
デザインと関わりのない物事は、何一つないので。
モチーフになるものは、
そこら中に転がっているんですよね。
この会場の床ひとつをテーマにしたって、
それでひとつの展示が作れちゃうし、
床に貼ってあるガムテープですら作品になっちゃう。
どんなものでも何かの形へと落としこめて、
「これもデザインなんじゃないの?」
という提案はできるんです。
糸井
それでなおかつ、
実用性のところに押し込むんじゃなくて、
たのしさも、きちんとある。
佐藤
たのしさは、すごく重要だと思います。
写真
糸井
教育みたいなことには、
お仕着せの実用性のところに、
最終的に「一番理にかなったものは美しい」
という理屈が金科玉条のごとくあるわけです。
佐藤
極端に言うと、モダンデザインには、
その傾向があったような気がしますね。
糸井
数学に近くしたい、という考えですよね。
そこを『デザインあ』では、
ここにある弁当みたいなものにしちゃった。
佐藤
本能に訴えかけるものですね(笑)。
写真
糸井
卓さんの手がけるデザインって、
ぼくが卓さんとよく喋っている感じが
すごく出ている気がするんですよね。
佐藤
あたり前の日常をテーマにしていますが、
じつは、あたり前の日常って、
とんでもないことで成り立っています。
そこに気がつけると、
もっとたのしくなれる気がしますね。
糸井
そうだねえ。
(つづきます)
2018-09-09-SUN
写真
企画展「デザインあ展 in TOKYO」
2018年7月19日(木)ー10月18日(木)

日本科学未来館
会場
日本科学未来館

1階 企画展示ゾーン(東京・お台場)

開館時間
10:00ー17:00

※入場は閉館時間の30分前まで
ただし、土曜日、祝前日(9/16、9/23、10/7)は
20:00まで開館、常設展は17:00に終了

休館日
火曜定休

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山梨、熊本への巡回も決まったそうです!
<山梨会場>

会期
2019年4月から

会場
山梨県立美術館

(山梨県甲府市貢川1-4-27)


<熊本会場>

会期
2019年6月から

会場
熊本市現代美術館

(熊本県熊本市中央区上通町2番3号 びぷれす熊日会館3階)