身近で親しい、デザインあ展 佐藤卓×糸井重里
日本科学未来館で開催中の
企画展「デザインあ展 in TOKYO」の会場で、
グラフィックデザイナーの佐藤卓さんと
糸井重里がトークをしました。
閉館後の館内を卓さんにガイドしていただき、
わくわくするような展示を体験したり、
デザインの概念にまで話をひろげたり。
みんなに喜ばれているデザインは、
佐藤卓さんが見つめる「あたり前の日常」に、
どうやらヒントがありそうです。
第4回 いちばんお客さんに近い場所
写真
糸井
この会場を見てまわりながら、
もしも、ぼくがここに参加しているとしたら、
どんな展示をするんだろうなぁと思って、
ずーっと考えていたんですよ。
ひと回りしてもわからなかったんだけど、
今、卓さんとしゃべり始めてわかった。
ここに、ぼくがもう1室作るとしたら、
「神々のデザイン」です。
佐藤
神々のデザイン。
糸井
つまり、生態系そのものが、
神々のデザインですよね。
佐藤
はいはいはい。
糸井
人体もデザインです。
オスがメスを惹き付けるための
デザインもあるだろうし、
自然や宇宙の法則性みたいなところにも、
行き着く気がするんです。
思えば、すごいことですよね。
佐藤
はいはい。
仮に、「デザイン」という言葉を、
人が行っていることに限ると、
生態系は、デザインのお手本ですよね。
糸井
まさにそうですね。
写真
佐藤
ぼくたち、みんながやっている
デザインのお手本というのは、
実は生態系にある、ということですよね。
糸井
そうですね。
たとえばの話、
地球のまわりを月が回っているけれど、
これがもっと近かったら衝突してしまうし、
もっと離れたら、どこかに行っちゃいますよね。
佐藤
本当にそうですね。
で、我々も生きていられない。
糸井
いないですよね。
そういう事実に、ぼくは驚きたいんです。
佐藤
あたり前の日常は、
実は奇跡的なことで成り立っているんですよね。
とんでもない奇跡的なことばかりです。
糸井
『デザインあ展』に、そんな部屋を作るなら、
みんなが知っている事実を元にして、
どういうふうに見えるかを、
一所懸命に考えるんでしょうね。
佐藤
それこそがデザインですね。
写真
糸井
たとえば、「酸素が薄い」という
言い方をよくしますけど、
今の酸素の割合を超えちゃうと、
地球上で山火事だらけになるんですって。
佐藤
あぁー、なるほど。
糸井
そういうようなことも含めて、
ぼくらが考えている上のデザインなのか、
それとも違う法則の名前をつけるのか、
まだわからないですけど。
佐藤
少なくとも、お手本であることは
間違いないですよね。
糸井
お手本ですよね。
その上で「抱き心地」だとか「食べておいしい」だとか、
快不快を左右するような感覚というのは、
人間同士で開拓していくものですよね。
佐藤
ええ、本当に。
糸井
そうしたら、デザインの中に
性のテクニックもあるかもしれない。
子どもは来られなくなるけれど(笑)。
佐藤
わっはっは。
写真
糸井
こういう考えができるようになったのも、
この展示を見たからです。
ここまでできるんだったら、
相当いろんなことができるなぁと思いました。
佐藤
本当に、多くのクリエイターの方に
参加いただいています。
若くて優秀な、すごくおもしろい人ばかりです。
糸井
うん、おもしろいですね。
写真
佐藤
参加しているクリエイターのみなさんから
展示のご提案をしていただくと、
ディスカッションしているうちに、
すごくおもしろいアイデアが出てくるんです。
ぼくは何をしているかというと、
「あ、これ! これおもしろい、これやろうよ!」
と言う役割をしています(笑)。
糸井
卓さん、それは理想的ですよ。
ほぼ日でやっている「生活のたのしみ展」の、
ぼくの立場が同じです。
そうなると、お客さんに近くなれるんですよね。
佐藤
あぁ、それはありますね。
糸井
きっと卓さんも、
お客さんとしてもっと何か活動したいとか
思ったでしょう?
佐藤
あぁ、そうですね。
それはちょっとありますね。
いま、糸井さんに言われて、
「あ、そういう領域にいるかもしれないな」
という感じがしています(笑)。
糸井
コピーライターをしていた時にわかったことですが、
本気でプロデュースをやるときには、
客席のいちばん前に立つんですよ。
写真
佐藤
なるほど、なるほど。
大切ですよね。
糸井
客席の最前列にいて、
「この舞台でやっていること、おもしろいな」
と言える立場の人になれたら、
客席の周りにいるお客さんたちも、
「そうだね」と言ってくれるかもしれない。
佐藤
たしかに、たしかに。
糸井
いまの時代でクリエイティブをやっていくために、
客席の最前列にいるのは、人のためにもなり、
自分もうれしい場所かもしれないですね。
佐藤
「ほぼ日」そのものですよね。
糸井
そうですね、ぼくは客席の最前列にいますね。
ぼくはなるべく口を出さない
練習をしてきましたから。
佐藤
ああ、そうですか。
本当に大切だと思ってますよ。
糸井
ぼくは、社員のみんながやっている仕事の
足りないかけらを探すのが
じぶんの仕事かなぁと思っています。
佐藤
「これ、すごくいい!」
と伝えることも重要ですよね。
糸井
まったくそうですね。
佐藤
ぼくは本当に、
そういう役割になりたいと思っているんです。
写真
(つづきます)
2018-09-10-MON
写真
企画展「デザインあ展 in TOKYO」
2018年7月19日(木)ー10月18日(木)

日本科学未来館
会場
日本科学未来館

1階 企画展示ゾーン(東京・お台場)

開館時間
10:00ー17:00

※入場は閉館時間の30分前まで
ただし、土曜日、祝前日(9/16、9/23、10/7)は
20:00まで開館、常設展は17:00に終了

休館日
火曜定休

>公式サイトはこちら



山梨、熊本への巡回も決まったそうです!
<山梨会場>

会期
2019年4月から

会場
山梨県立美術館

(山梨県甲府市貢川1-4-27)


<熊本会場>

会期
2019年6月から

会場
熊本市現代美術館

(熊本県熊本市中央区上通町2番3号 びぷれす熊日会館3階)