第4回 ミュージシャンのためのよろず相談室を。

ほぼ日 本の第4章では、
モデルケースとなるような
ミュージシャンや
レーベルの代表、そして舞台監督まで、
いろんな方にどんべいさんが
インタビューしてらっしゃいますね。
なかでも、バンバンバザールというバンドの
福島康之さんのお話は、ある意味、
ミュージシャンの理想だと思いました。
どんべい バンバンバザールは、
バンドメンバーで会社をつくって、
CDの販売やライブの開催など、
自分たちできりもりしているバンドですね。
自立したミュージシャンとして、
成功しているよい例です。
ほぼ日 そうやって自分たちでやっている人もいれば、
クライアントがいて、仕事を請け負って
音楽をつくるって人もいましたね。
どんべい いわゆる、クライアントワークですね。
この本では、
マニュアル・オブ・エラーズ・アーティスツの
山口優さんと三宅治子さんのお二人に
お話を伺いました。
ほぼ日 マニュエラさんには、「ほぼ日」でも
やさしいタオル」や「ほぼ日のくびまき」のBGMを
お願いしています。
彼らの仕事がまさしく
「クライアントワーク」なんですが、
音楽のお仕事のなかで、
その形態があることを知らない人は、
けっこういると思うんですよ。
そういう形もあって、
ちゃんと会社として成り立ってるんだ、
ということを、この本で知ることができるだけでも、
かなりうれしいんじゃないかと思いました。
どんべい 音楽の仕事といえど、多種多様ですからね。
でもやっぱり、どんな道でも、
それぞれの覚悟がいるというか‥‥。
クライアントワークでいうと、
やっぱり相手が求めるものを出さなきゃいけない。
その間には、悔しい思いをしたり、
めんどうなことがあったりするわけです。
それを、背負う覚悟が必要。
ほぼ日 はい。
どんべい たとえば、企業から担当者がきて、
「こういう感じのCM曲を、
 3パターン、全然違う感じでつくってください」
って注文されるんですよ。
担当者としては、上司とか役員とか、
誰が、どの曲をいいっていうのかがわからないから、
会議を抜けるために、3パターン必要だというんです。
ほぼ日 で、3パターンつくれる人に、
仕事がくる。
どんべい クライアントワークでご飯を食べようすると、
作曲家としていい曲をつくれるだけじゃなくて、
期限までに3パターン別々の曲をつくれたり、
譜面を書けたりしなきゃならない。
打ち合わせの時間を守る、ということも、
大切ですよね。
ほぼ日 そういうことができての、
お仕事なんですね。
そうやって、自分がどういうふうに
音楽を続けていくのかを考えるときに、
この本でラーメン屋にたとえて
3択していたじゃないですか。
どんべい はい。
こちらですよね。
 苦節20年、修行を重ねたあなたが、
ついにラーメン屋を開業したとします。
オーナー・シェフでもある
あなたなりに吟味してきた、自慢の味です。
けれど、10人中6人くらいのお客さんは、
「もう少し薄味だといいのに」と言う。
 ここであなたのとる態度は、
 主に3つあります。
  1. 自分に作れるのは、これだけ。
    だから、同じものを作り続ける。
  2. 自分が作りたいものは、これだけ。
    だから、同じものを作り続ける。
  3. 自分が作るべきものは、お客を満足させるもの。
    だから、期待に応えるよう、
    作る努力をする。悔しいし。
――『次世代ミュージシャンのための
   セルフマネージメント・バイブル』 44ページより
ほぼ日 そうそう、
これが、とってもおもしろかったです。
クライアントワークはまさに「3」ですよね。
どんべい まさに、クライアントワークは
お客さんがよろこぶものをつくることが
お仕事ですからね。
ほぼ日 「おれがこれを作りたいんだ!」というものしか
出てこない作曲家には、
その利害が一致しなければ、
「次回はけっこうです」ってなっちゃいますもんね。
どんべい ええ。
もし、料理が食べる人のものだとすれば、
音楽は聴く人のものだといえるかもしれません。
そこにどれだけ寄り添うのか、というのは、
自分がどういう音楽を続けていくのか、
ということを考えるヒントにもなりますね。
もちろん、どんな選択もあっていいんです。
ほぼ日 自分のやりたいことを測るための
いい「ものさし」だと思いました。
どんべい ありがとうございます。
ほぼ日 どんべいさんは、
この本にこめたことを、一般社団法人
「ミュージック・クリエイターズ・エージェント」で
行っているんですよね?
どんべい はい、そうなんです。
渋谷にオープンオフィスをかまえて、
ミュージシャンのために
よろず相談室を開いています。
ほぼ日 しかも、無償だとか。
どんべい 毎週月曜、水曜、金曜の
午後3から9時まで、ご相談に応えています。
常駐しているわけではないので、
事前に、メールにて予約していただいてます。
ほぼ日 ミュージシャンの人たちにとって、
そういう場があるだけで、
実際、ものすごく心強いし、
うれしいと思いますね。
どんべい あの、さっき、現代の状況を
ミュージシャンを中心にしてみてみると、
いろんな可能性を秘めていて、
もっとおもしろいことができるんだ、と
いったのですが、
ぼくは、よくこの状況を
「夜明け前」と表現しているんですね。
ほぼ日 「夜明け前」。
どんべい ようやく遠くのほうが、
薄ぼんやりと明るくなってきたぞ。
ちょっと、希望が見えてきたぞ、と。
そこで、2012年11月17日(土)に、
ミュージック・クリエイターズ・エージェントから
みんなに呼びかけて、
「YOAKE ~MUSIC SCINE 2013~」という
イベントを開催することになりました。
ほぼ日 おおっ!
ついに夜が明けるときが、きたんでしょうか。
どんべい うん、ぼくはそう思っています。
ほぼ日 このイベントでは、
具体的に何をされるのでしょう?
どんべい パネルディスカッション、
ニューメディア・プレゼンテーション、
ライブという3本柱で構成しています。
パネルディスカッションは、
音楽の未来を真摯に考えている
プロフェッショナルたちの視点を
生で共有できます。
音楽関係者だけじゃなくて、
漫画家の佐藤秀峰さんも出演されるんですよ。
ほぼ日 『ブラックジャックによろしく』の
漫画家さんですね!
そこに佐藤さんがいるだけで、
音楽だけではない、
奥行きがあるイベントになりそう。
どんべい そうなんです。
ニューメディア・プレゼンテーションでは、
新たなインターネット上のサービスを
運営している方々にプレゼンしてもらいます。
たとえば「tixee」は、誰でも簡単に
チケットの販売、管理できるサービスです。
これは、ライブやイベントに限らず、
たとえば結婚式の二次会の集金にも、
利用できるんですよ。
ほぼ日 あっそれは便利!
そういうサービス、
なかなか知ることができないから、
うれしいですね。
どんべい ライブは、高田漣さんをはじめ、
今、ぜひ聴いてほしい
目が離せない人たちが登場します。
ミュージシャンの人はもちろん、
そうでない人も、音楽が好きであれば、
十分たのしめるイベントだと思います。
ほぼ日 ミュージシャンだけでなく、
ぼくらの「夜明け」にも
つながる話なのですね。
どんべい そうなってくれれば、うれしいですね。
ほぼ日 本日はどうも、ありがとうございました!
どんべい こちらこそ、ありがとうございました。
(おわります)
2012-11-14-WED