気象予報士的「アースボール」のたのしみ方。 気象予報士的「アースボール」のたのしみ方。
11月5日、ついに発売されました!
「ほぼ日のアースボール」のセカンドモデル。
もうチェックしていただきましたか?

見た目は、宇宙から見たそのままの地球。
アプリやタブレットをかざすと、
刻々と変化する地球の「今」が見えます。
台風の渦も、熱帯の雨も、アフリカの猛暑も、
ぜーんぶリアルタイムで見れちゃいます。
これがまた、ほんとうにすごい!
おそらく気象の専門家が見ても、
びっくりすると思うんです。

そこで、3人の気象予報士をお呼びして、
実際にアースボールを見ていただきました!
はたしてどんな反応になったのか‥‥。
全6回、どうぞおたのしみください。
ほぼ日のアースボール
04 危険なのは「台風」だけじゃない。
──
最近のびっくりした気象ニュースで、
アメリカのデスバレーで
「気温55℃」というのがありました。
佐々木
あった、あった(笑)。
──
そのときアースボール上では、
こんな感じになっていたんです。
写真
▲白く見えるところが「デスバレー国立公園」のある場所。
坂本
うわー、ここか!
寺川
もう色が抜けてますね‥‥。
──
ニュースでも「異常気象」という言葉を
よく聞くようになりましたが、
実際にやっぱり増えているんですか?
寺川
起こりやすくなっているとは思います。
──
やっぱり温暖化の影響ですか?
寺川
もちろんそれもあると思います。
これからさらに気温があがって水蒸気量が増え、
台風10号の勢力と同等か、
それ以上の台風がやってくることは、
この先も十分あると思います。
佐々木
あと、台風だけじゃなくて、
「温帯低気圧」にも気をつけてほしいです。
寺川
ああ、そうですね。はい。
佐々木
雲の範囲でいったら、
じつは温帯低気圧のほうが大きいから、
影響が及ぶ範囲も広くなるんです。
台風を危険視するのはわかりますが、
温帯低気圧もなめてもらっては困ります。
写真
──
「台風が温帯低気圧に変わりました」って、
天気予報でよく聞きますよね。
佐々木
そうそう、台風から変わったようなものは、
もういちばん危険ですから。
──
「台風が弱まったもの」というイメージでしたが、
そうじゃないんですか?
佐々木
ぜんぜん安心できません。
寺川さんたちもテレビなんかで、
けっこう盛んに伝えてくださってますよね。
「温帯低気圧になってからも危ない」って。
寺川
そうですね。
台風が直撃するところは危険ですが、
台風から離れてるところでも、
そのまわりの気圧配置によっては、
ものすごく大雨になったり、
竜巻や突風、ひょうのリスクがあります。
ただ、そこはどれだけ専門家が言っても、
なかなか伝わりにくいところで‥‥。
写真
佐々木
大型ですごく強い台風が日本に近づいて、
電車も止まるらしいぞって。
そういうときはみんな警戒しますよね。
──
テレビでも注意喚起しますよね。
「危険なので外出しないでください」って。
佐々木
これは、極端に危険な台風が
接近しているときの話なんですね。
報道する側も、情報を受ける一般の人たちも、
台風の危険さを知っていて、
暴風雨に対して強く警戒を呼びかけられると
ちゃんと伝わるんです。



ところが温帯低気圧の危険さって、
いまだに「台風ほどではない」と思われています。
それもあって台風が温帯低気圧に変わると、
報道する側の警戒トーンも下がりますし、
一般の人にも台風だったときよりも
危険さが伝わっていかないんですよね。
写真
──
温帯低気圧というのは、
具体的にはどんなふうに危険なんでしょうか。
佐々木
台風が温帯低気圧になるのは、
構造が変わるというだけなんです。
台風は中心付近でいちばん強風が吹きますが、
温帯低気圧になると中心付近というよりは、
危険な強風のエリアが広くなります。
──
温帯低気圧に変化するときって、
雨風の威力が弱まったりはしないんですか?
佐々木
それほど弱まってないんです。
弱まりもしないくせに、広範囲にひろがる。
──
えぇぇ‥‥。
寺川
もちろん中心付近の風の強さは
ピークに比べるとすこしは衰えますが、
被害が広範囲になるという意味では、
より一層警戒しなければいけません。
とにかく知っておいてほしいのは、
台風の進路とか、直撃コースだけが
危ないわけじゃないってことですね。
写真
──
2015年に、鬼怒川の堤防が
大雨で決壊したことがありました。
あのときも台風から変わった
温帯低気圧や周辺の気圧配置の影響で、
大雨が降ってしまったんですよね。
寺川
あのときは台風による
直接的な被害というのは、
それほど大きく出てなかったと思います。
ところが、日本海側で温帯低気圧になったあと、
南から湿った空気が流れ込んで、
そこから記録的な大雨になってしまいました。



あのとき太平洋側には別の台風がいて、
他の気圧配置などの影響もあって、
関東に集中して雨雲がかかってしまったんです。
これ、言葉で説明しようとすると、
ものすごく難しいのですが、
衛星画像をみるとすごくよくわかります。
──
台風だけが危険じゃないってことですよね。
勉強になります。
佐々木
そういう過去の災害データなどを、
もしアースボールで再現できたりしたら、
防災意識を高めるツールにもなるかもしれませんね。
写真
(つづきます)
2020-11-22-SUN
ほぼ日のアースボール