Lesson1113
排除の風景
2024-11-06
合わない人をどんどん排除していったら、
合う人だけの心地よい場ができるのか?
ここでいう「合わない人」とは、
何か悪いことをしたわけではない。
ただ、その人がいると、
かみ合わなかったり、調子をくるわされたり、
気づまりだったり、面倒くさかったり、
とにかくやりにくい。
「ああ、この人さえ、いなかったらなあ」
若い頃の私はそんな考え方だった。
けど、人生経験を積み、
とくに、文章表現教育を通して、
数えきれない人々の人生と想いを知るようになり、
いま私は思う、
合わない人をどんどん排除していったら、
たぶん、こうなる。
<排除の果ての風景>
昔、昔、ではなく、今の今、
10代の高校生~お年寄りまで
幅広い世代が集うコミュニティがあった。
そこに一人、古い価値観を押し付けてくる
お年寄りがいて、みんな困っていた。
世の中には、
アップデートしたお年寄りも多くいる。
けど、そのお年寄りに限っては、
昔の考えのままだった。
悪い人ではないんだけど、しょっちゅう、
ギョッ! とするような、
コンプライアンス的にアウトな発言をしては、
みんなをドン引きさせていた。
「この人さえいなければ‥‥、」
そこで、みんなは、このお年寄りを排除した。
合わないものを排除して、
さぞ心地よい気の合う集団になったろう。
ところが、しばらくたつと、
60代がいると気づまりだ、
と言い始める人が出てきた。
あのお年寄りがいたときは、
間に入って話をとりもってくれていた世代だ。
それが、お年寄りがいなくなって、
だれも遅刻などを叱る人がいなくなり、
みんな、だらけてきた。
60代は、それを見て見ぬふりができず、
「こんなこと言いたくないんだけど、
あなたのために‥‥」と、
小言を買って出てくれていた。
それが年下には気づまりだった。
「この人さえいなければ…、」
そこで、みんなは、60代を排除した。
つづけて、40代以下を残して、
上の世代をみんな排除した。
合わないものを排除して、若い者だけの、
さぞ心地よい集団になったろう。
ところが、しばらくたつと、
40代の人たちが、しくじると、
「アラフォーだから」と、
年齢を自虐ネタにするようになった。
30代までが、「アラサーだ」「もうおじさんだ」と、
年齢いじりを、したり、されたりするようになった。
さらに若者たちは、
しょっちゅう「Z世代」とひとくくりにされ、
持ち上げられたかと思うと、急にストン、と、
揶揄されるようになった。
かつてないほど、世代いじりが活発になっていった。
「この人さえいなければ‥‥、」
そこで、みんなは、30代40代を排除した。
すると、とたんに、20代どうしが、
年齢にこだわりあい、
「何個上(なんこうえ)、何個下(なんこした)」
とギスギスするようになったので、
高校生と大学生だけ残して、あとは排除した。
すると、高校生たちから、
「私たち高校生は、1学年ちがっただけでも、
すごく気をつかうし、ものが言いにくい」
という意見が出て、
大学生も排除し、
高校3年生も排除し、
高校2年生も排除し、
とうとう高校1年生だけのコミュニティになった。
合わないものを排除して、全員おなじ学年の、
さぞ心地よい集団になったろう。
ところが、しばらくたつと、
順番にだれかが「仲間はずれ」にされるようになった。
みんな、「浮いたらオシマイ」と、普通を演じ、
かつてないほど気づまりな集団になった。
高1生たちは思った、
「いろんな世代がいたときは、
私たち、高校生というだけで、
学年にかんけいなく結束していたのに…」
排除された40代は思った、
「あのお年寄りがいたときは、
自分たちは、若造と呼ばれて、
自分でも若い気でいたのに…」
排除された60代は思った、
「あのお年寄りがいたときは、
そこに比べて、自分たちは、
“頭が若い” “そんなふうに年をとりたい”と、
若い子たちから慕われていたのに‥‥」。
これ以外にも、
「生産性」というモノサシで、
生産性の無い者や、生産性が低い者から、
つぎつぎ順番に排除していったコミュニティも、
「人間の魅力」というモノサシで、
つまらない人間や、面白みがない人間から、
つぎつぎ順番に排除していったコミュニティも、
いっこうに心地よい居場所にはならず、
かつてないほど息が詰まる場になっていった。
排除のある風景で、
なぜ、みんな幸せになれないのか?
集団に強いストレスがあるからだ。
そのストレスの正体は、
「ツギハ、オマエダ。」
例の、世代排除をしていたコミュニティは、
排除した人に「ごめんなさい」を言って、
つぎつぎ元どおりに、
すべての世代を呼び戻した。
今の今、
10代の高校生~お年寄りまで
幅広い世代が集うそのコミュニティは、
日々、人と人がぶつかったり、
でもそのたびに、活発に対話をしながら、
たいへんそうだけど、
なぜか、みんなイキイキしている。
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ありがとうございます!
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「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
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ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
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「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
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まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
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相手に通じる文章になる!
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『話すチカラをつくる本』
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『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
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自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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