Lesson1108
スランプではないかも?
2024-08-21
いまスランプだと思ってる人、
もしかしたらそれは、スランプではないかも、
「じゃあなんなんだ?」
きょうはそんな話。
わけあってこのコラムの「過去作」を
読み返していた。
ある時期の文章がまとまってよくない。
書いた本人が読んでるのに、
読んでて自分でも嫌になる。
5本に1本も、
いや、ヘタしたら10本に1本も、
いまの自分の納得ラインに達しない。
低空飛行の月日。
「よく書き続けたられたものだなあ‥‥」
多くの人はここで辞めたくなるよなあ、
よく諦めなかったと感心するやらあきれるやら。
一言で言ってそれは、
「浮上できない」文章。
書いている途中で混沌としてくることは、
大なり小なりだれしもあると思う。
自分でも何が言いたいかわからなくなったり、
主題がうまくカタチに表せなくて、あがいたり。
水面下に潜っているかのよう。
そこからは試行錯誤の連続。
ストラクチャー(文章構造)を大胆に組み換えたり、
言い回しを幾通りも書きかえてみたり。
不慣れなころは、ここで原形をとどめないくらい
何度も、何度も、書き直した。
そうしているうちに、
「これだ!」
という最も書きたいもの(=主題)が、
自分の中から、はっきりと「言葉や文」のカタチとなって
浮上する。
さながら、ずっと暗い海底に潜っていたダイバーが、
一気に浮上し、水上の明るい陽のもとに出られた、
「プハーっ!」と息をするかのよう。
ここでカタルシスが訪れることもあるし、
ここまでくれば、先は明るい。
けど、この低空飛行期の文章は、
水面下でもがいている間に時間切れとなり、
浮上しないまま載せている。
つぎの原稿も、浮上せず、
またそのつぎの原稿も、浮上せず、
浮上せず、
浮上せず、
浮上せず‥‥、
時には浮上しないことを題材にして、浮上せず、
浮上しないことで読者に文句を言われた(あたりまえだ)
ことを題材にしては、浮上せず。
「よく辞めなかった、どうして続いたんだろう?」
と考えたら1つ希望があった、「読者」だ。
当時、できの悪い私の原稿には、なぜか、
できのいい読者メールがたくさん来ていた。
「できの悪い書き手に、よくできた読者」
これ何かに似ているなあ、
と思ったら、むかし読んだマンガの、
「できの悪い主人公」に「よくできた恋人」の構図。
自己実現がままならず・自信がなく・
うだつがあがらない主人公に、
聡明で・心の美しさが顔や姿にも表れ・
人間性ができあがった恋人がいる。
「あんなトホホな人のどこがいいの?」
と周りは不思議がるけど、
ライバルのなにもかも優秀な人間には目もくれず、
不出来な主人公を、こよなく愛す。
同じく、
「あんな浮上しない原稿のどこがいいの?」
という時期に、私にも、
よくできた読者がついていた。
浮上しないまま時間切れとなった原稿、
いわば、未完成の原稿を、
「筆者が本当に言いたいことは‥‥」
と読み取って、汲み取って、ちゃんと主題を理解し、
その主題にふさわしい読者自身の経験に基づく
考えをメールに書いて送ってくれた。
「未完成な文章」に「人間的完成度の高い読者」
あっ、そうか!
完成度の高い人は、
自分が完成度が高いから、
相手に完成度を期待しないんだ。
未完成を面白がる余裕があるんだ。
たとえていえば、
莫大なお金を稼いでいる人は、
伴侶を選ぶときに、金なら自分が稼ぐからと、
相手にお金を期待しない。
もちろん、
自分が稼ぐから相手にも稼いでほしい人もいるし、
自分と同じようにできた人を求める人もいるけど、
多くの人は、自分にないものにあこがれる。
人間性も文章も完璧でカリスマ性のある書き手に、
自分が未熟だからと依存的な読者がつくこともあれば、
未完成だからこそ面白い、と
読解力も人間性もよくできて余裕のある読者が、
未熟な書き手につくこともある。
そういう読者は、
「まだ浮上していない=未完成」のいいところが
ちゃんと見えている。
もしかしたらスランプは、
衰え・鈍り・枯れている状態ではなく、
「未完成」
の状態なのかもしれない。
どんな巨匠と言われる人だって、
一度完成されたものから方向性を変えるときには、
必ず、不慣れで、不出来の、「未完成」がおとずれる。
同じ方向性で書き続ける人だって、
つぎの段階に上がるためには、
いっこうに浮上しない「未完成」を通らねばならない。
私の低空飛行期は6年目に来た。
1年目、初めてで右も左もわからず、
3年目、ほんとうに辛く、ゆきづまり、
そこをこえて4年目、
自分が3年間何をしてきたかが見えてきて、
そこから書きたい方向性が見えてきて、
5年目、自分も編集者さんも納得感のある
ちいさな花が咲いた。
そこからは自分なりのちいさな好調が
しばらくつづいた。
そのあと、
6年目、長く浮上しない低空飛行が訪れた。
あれは、スランプではないかも?
つぎの段階に進むための「未完成」の時。
書いてる本人とうてい、そうは思えず、
ひたすら自分がダメなんだと
思い続ける月日だったけど、
読者は書き手自身が気づかない
未完成のいいところに、ちゃんと気づいていた。
だから、
「スランプでも書き続ける意味はある!」
と私は思う。
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「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
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ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
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私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
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▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
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山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
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「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
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就職、転職、結婚、退職……。
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すでに成功してしまった人の
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もがいている人の、現在進行形の悩み、
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インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
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『話すチカラをつくる本』
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NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
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『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
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自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
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『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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