Lesson1100
花咲くタイミングは一人一人かけがえなく違う
2024-05-08
「おんなじ花でも、
花咲くタイミングはスゴク違うなあ!」
毎朝、ウォーキングしながらしみじみ気づく。
私が住んでる近くに、
「花の並木道」がある。
背の高い木に真っ白なハナミズキの花、
背の低い木に真っピンクのツツジの花、
この白とピンクのコンビが、
道の両側にダダーッと植えられている。
道の向こうにも白とピンクの花々、
道のこっちにも白とピンクの花々、
それはそれは美しいのだ。
けど、いっせいに咲くわけではない。
うちから見て、通りの向こう側が先に咲く、
こっち側は、あと。
太陽のせいだからしかたがない、
向こうとこっちでは陽あたりがちがうのだ。
それに、よく観察すると個体差もある。
枝いっぱいに花が咲いてる木もあれば、
ポツ、ポツ、と、まばらにしか咲いていない木もある。
木の性質の差か、手入れの差か。
たくさん花が咲いてる木は、
いかにも栄養が行き届いてそう、
きっと最寄りの家の人から、
水をもらったりして可愛がられているのだろうなあ。
一方、いっこうに花の咲く気配のない木は、
だれかが木に悪いゴミでも捨てたんだろうか。
おなじ種類なのに個体差はエグい。
で、うちの前の木は、「ハズレ」の予感だ。
まあ、「道のこっち側」は、咲くのが遅いから、
満開はこれから、っちゃあ、これからなのだが、
白い花が咲く予定の背の高い木は、
つぼみを見る限り、あんまり花をつけそうにない。
さらにヒドいのは、
ピンクの花が咲く予定の低木のほうで、
こちらは、葉っぱさえない。
いま新緑の季節だから、
道のこっち側の木々も、
いかに咲くのが遅いといっても、
葉っぱだけは生い茂っている。
けど、うちの前の低木は落ちこぼれて、
よくよく見ると、やっと、
ちょろ、ちょろ、と若葉があるのが確認できるていど。
パッと見、「ほとんど枯れ木」だ。
とうてい花など咲きそうにない。
そうやって、個々に見ていくと、
木々も「植えられたとこガチャ」で大変だなあ、
陽が当たるところに植えられたもの、
陽が射さない側に植えられてしまったもの、
優しい手入れ上手な人の家の前に植えられたもの、
運悪くゴミ出し場になってしまったもの、
花がたくさん咲く豊かな土壌に植えられたもの、
葉さえ生えない貧相な土壌に植えられたもの。
不平等、不公平、理不尽、
にもかかわらず、
目を上げて全体を見ると、なんて美しいのだろう!
なぜ、美しいのだろう?
せいいっぱい生き、
自分にできるせいいっぱいの花を咲かせている。
余念もなければ、余力を残すこともない。
だから清々しく美しい、胸いっぱいになる、
尊厳すら感じる。
たとえ道の向こうだけ陽があたっても、
向こうのやつばっかりが花を咲かせても、
それを面と向かって毎日見るよう植えられていても、
人間だったら、
うらんだり、足ひっぱったり、
劣等感にさいなまれたり、腐ったりする者が
出てくるだろうけど、
木々は、まったくうらむことなく、
ただ凛として、命いっぱい生きている。
まるで、
「どの木にも必ず花の咲くタイミングは来る!」
と信じるかのように。
そして、そのとおり、
しばらくして、
遅い木々にも、道のこっち側にも、花が咲いた。
なんと!
うちの前の、あの枯れ木、
葉っぱさえ生えない低木に、驚くほどびっしりの、
鮮やかな真っピンクの花が咲いた!
他の木々には緑の葉っぱが茂っているので、
緑とピンクのいろどりだけど、
その木に限って、葉がない木に、
真っピンクの花だけがびっしり!見事に!咲いている。
桜(ソメイヨシノ)は葉がない木に花だけ満開になるが、
あのツツジバージョンを想像してみてほしい。
だからここだけ真っピンク一色、
燃えるように美しい。
この木には大した花は咲かないだろう、
と思った私、木に謝れ、
ほんとにごめんなさい。
ハズレでもなければ、落ちこぼれでもない、
貧相でもなく、ただ、この木の個性だったのだ。
「もう、この道に花は咲かない。」
私が、私を見切った日は、
フリーランスになって3年たった日だった。
会社を辞めてフリーランスになった私は、
1つ1つの仕事に、
もてる全てのチカラを尽くして臨んだ。
初めての本も全身全霊で書いた。
余念もなければ、余力も1滴も残ってない、
まさに自己ベストで書いた。
それでも3年たった日、
独立して食っていく仕事の道はつながらなかった。
その日、ふるさとから母が上京していて、
母の背中に、
「おかあちゃん、がんばったけどだめじゃった。
今月いっぱいであきらめる。」
そう言った私は泣いてたけど、
全力を出し切ったからこその覚悟の涙だった。
覚悟の日、
私の本が、「日本語文章がわかる50冊」で、
1位の谷崎潤一郎から始まって、
14位に選ばれていることを知った。まるで、
「諦めてはいけない」
と誰かに言われているようだった。
その日を境に仕事は徐々に軌道にのっていった。
現在、その本は重版53刷、私の人生に咲いた花だ。
花の咲くタイミングは、ひとりひとり違う。
かけがえなく違う。
私のようにとても時間がかかり、
本人もあきらめた後にやっと咲く、
遅い、遅い、タイミングもある。
先に華々しい花を咲かせている人を見れば、
人は焦って、自分を見失ったりもする、けど、
「自分の花が咲く番は必ずくる!」
そこで妬んだり、腐ったりしなければ、
日々、自分を生きるをまっとうしていれば、
だれにも必ず来る!
「諦めてはいけない」
信じて、咲け!
と燃える真っピンクの花に教えられる。
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●「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
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無料で聴けます。
聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
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ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!
▲『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫
自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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