糸井 |
松井さん、引き受けてくださって、
ほんとにどうもありがとうございます。
松井さんのお話を聞いていると、
「宇宙的視野を持つと、
たいしたことじゃなく見えることが、
人間圏にいると、
えらいタイヘンに見えたりするんだなぁ」
と、明快に気づかされるんです。
人間の世界にだけ、とらわれていると、
わからないことが見えて、スカッとするというか。
その段差みたいなのを、今回の講演では、
バーンとぶつけていただきたい、と言いますか……。
もちろん、何を話されても、
それはそれで、おもしろいと思っているんですけど。 |
松井 |
実は、考えることについては、
私自身も、毎年のように変わりますから。
最近何を考えているかについて、
お話をしようかと思います。
たとえば、昔は
「宇宙から地球を見たり、人間を見るとこうですよ」
と、ある種、普遍性について語っていたんです。
「文明とは何か」とか。 |
糸井 |
今は、違うんですか? |
松井 |
「何が普遍で、何が特殊か」についての考えは、
最近、ちょっと、私の中で、変わってきています。
もちろん、この宇宙に関しては、
歴史はひとつですから、厳密には普遍はない。
ところが、地球から見れば
宇宙は広大だから、そのスケールで
一般的なら、普遍だと思っても、まあいい。
その「普遍」という理解のなかで、
地球だとか生命だとか、
人間に関する部分っていうのは、
どのぐらい普遍性があるのかというと……
疑問が生じてきている。
自然とは何かというのが、
ビッグバン以来の宇宙の歴史を
解読することですが、
そのなかで、この数年、
「新たな惑星系の発見」というのが、
あいついでいるわけなんです。
そういう結果を見ていると、
この太陽系は、
けっこう特殊かもしれないと言うか。
少なくとも普遍ではない。 |
糸井 |
え? |
松井 |
太陽系が特殊だということです。
ということは、
地球が特殊かもしれないんです。
惑星系として見た時に、
むしろ木星や、土星みたいなもの、
これは、一般的かもしれない。
地球型惑星は、
割合でいくと10%から20%くらいかもしれず、
あるいは惑星系そのものも、
例えば太陽系と同じようなものを探すとすれば、
同程度しかないかもしれない。
残りはみんな、ぜんぜん、
「別の惑星系」かもしれないということです。
そこには、地球はない。
要するに
「地球は生命を生む惑星として
普遍的ではない」
ということです。 |
糸井 |
うわぁ!
それって……困りませんか? |
松井 |
まぁ、その辺が、むずかしくなるんだけど、
「それでもなおかつ我々は普遍性を求める」
ということになりますよね、科学なんですから。 |
糸井 |
はい。 |
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(どうなるんでしょう? 明日に、つづきます!) |