松井 |
私自身、自然科学をやっている時は、
二元論と要素還元主義を、
まったく、疑わないでやるわけ。
だってそれが、ルールだから。
ただ、一方、
自然科学の研究者から離れると、
「このルールはどこまで正しいのか」
「わかるっていうことは、何なのか」
と、考えるんです。
そうすると、やっぱり、
「わかる」って限定的だと思うわけですね。
「わかる」ことに関しても
最近は、今まで言われている
「明快にわかる」という世界とは
違う世界があるということがわかってきてます。
そこに、普遍や特殊の問題が絡んでくると……。
糸井さんとは、
ここ一年ぐらい会ってないでしょ。
その間に、こんなふうに、
私自身、考え方が変わってきているんです。 |
糸井 |
(笑)うん。
もう、どうしちゃったのかと思うくらい、
「ものすごい明快じゃないおもしろさ」がある。
松井さんと言えば、「明快」って思ってたもん!
「会ったらすっきりする」みたいなつもりなのに、
今日はもう会った途端に、
「わからないよ」みたいな……。 |
松井 |
これまでは宇宙から
普遍性を追求し、最近まで、
すべてを明快に説明してましたからね。 |
糸井 |
明快でした。
松井さんに会うと、
ぜんぶ、わかるような気がする、みたいな。 |
松井 |
そうだったかもしれません。 |
糸井 |
今日はぜんぜん違う(笑)。
聞いていると、こっちも弱るばかりで。 |
松井 |
(笑)私も弱っちゃう。
ここのところ、
新聞に書いたりするものも、
何か歯切れが悪い。
普遍か特殊かっていうことを考え出したから。 |
糸井 |
はぁ……。
じゃあ、講演内容、どうしましょうねぇ? |
松井 |
惑星系について言えば、今まで、
太陽系以外はまったくわかってなかったのが、
いろんなことがわかってきたんです。
宇宙が特殊だということはわかっていたけど、
そこまで話を広げちゃうとキリがないから、
「この宇宙での普遍性」に留まれば明確に話せた。 |
糸井 |
「この町内会では、通じる話」みたいな。 |
松井 |
そうですね。
例えば、有機物にしても、地球上での
有機物には、リン酸が入っている。
ところが、リンなんて、
元素としてはすごく特殊なんです。
地球の上での生命を考えるとリンを使うけど、
よその天体で生まれた生命は、
リンなんか使わないかもしれない。
あるいは、地球上の生物が
持っているものから、
アミノ酸は二〇種類とされているけど、
よそでは、そんなの関係がないかもしれない。
そういうふうに考えていくと、
わけがわかんなくなっちゃうんです。
前提が、みんな、崩れていってしまうから。 |
|
(明日に、つづきます!) |