糸井 |
松井さんは、
今うかがったようなそういう状況のなかで、
何をなさってるんでしょうか。
ひょっとして、哲学をしているんですか? |
松井 |
ぼくは、とりあえず、
サイエンスとしては
火星とかタイタンとか
エウロパの生命についてとか。 |
糸井 |
あぁ、グラウンドに降りた時には
一選手としてルールを守ってやってるんだ? |
松井 |
そう。
研究者としてやっている時には……。
学生を指導する必要のない、
孤独の思考の世界では、
普遍と特殊のこととかを考えています。 |
糸井 |
それって、
自己否定にはなんないんですよね?
なんか、元気そうですし、
「わからない」と言っていること自体が、
もうすでに、おもしろいですから。 |
松井 |
たしかに、今、おもしろいんです。
二一世紀も、
科学や哲学はおもしろいかもしれない。 |
糸井 |
おもしろいけど、不安にさせますね。 |
松井 |
太陽系や地球が「特殊」だとわかったら、
それはそれで、例えば、
お山の大将ならお山の大将で行けばいい、
と割り切ればいいんですよ。
宇宙の普遍であることに、
意味があるなんてことを
考えなければいいわけだから。 |
糸井 |
なるほど。
普遍を目指す動きは、それでも残りますよね? |
松井 |
それはしょうがないでしょう。
だって、我々は生まれた時から、
脳の内部と外部を分けちゃっているんですから。
脳幹とか脊髄のレベルで
情報が入る場合には、内と外の区別はないわけ。
だけど、大脳皮質みたいなものができた時から、
内と外っていう世界ができてしまった……。
そして、外を投影した
内部モデルを作ったというわけ、脳の中に。 |
糸井 |
そうなると、
「外のこと」をわかろうとするし、
外がわからないとすると、
やるせなくなるんですね。 |
松井 |
部屋の中にいて、
隔離されていると、
「この外って何?」と思うじゃないですか。
隔離という認識がなければ、
そんなことは思わないのに。
だけど、それこそ、
人類が宇宙に出ていった理由でもある。 |
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(明日に、続きます!) |