糸井 |
天才待望論が出る業界って、
だいたいそのあとダメになるんですよね。
非常に特殊な何かがないと解決できないほど、
追いつめられていることの裏返しだから。
このへんは、聞きたいなぁ、と思います。
……学生さんには話せないような、
めまいをするような話を、
ぜひ、講演会場で(笑)。 |
松井 |
いいですけど、難しいのはね、
この話は、あるレベルにならないと
本質がわからないかもしれないことなんです。 |
糸井 |
いや、そこはたぶん、
たまに思い出していたら
クラクラしたみたいなことになると思う。
「整理できていない感じ」
は伝わるし、そのくらいの時が、
話は、いちばんおいしいですから。
今、おもしろいなぁと思うような人って、
みんな、ちょっと
松井さんに似たようなことを考えていますね。 |
松井 |
時代背景っていうのは、
やっぱり、あるんですよ。
科学論文で「世界最先端」って、出ますよね。
あれはだいたい、みんなが同じ頃に考えるので、
半年早いとか、遅いとかの話です。
「十年早い」ってことは、ないもんなんです。
ある時代背景っていうのがあって、
みんなが似たような発想を探すからそうなる。
二一世紀は、ひょっとすると、
さっきまで話していたような
「普遍」と「特殊」の時代かもしれないんですよ。 |
糸井 |
おもしろいなぁ、と思う人は、
通訳性を持っていることも、共通していると思う。 |
松井 |
最先端まで行くと、まわりが見えるんです。
今回の講演に登場する人は、
みんなそういう人ですね。
岩井克人さんも、
とてもおもしろいんですけど、
いわゆる経済学で、
グローバリゼーションという意味での経済学は、
しっかりわかった上で、たとえばその枠の中で
地球環境問題をどう考えるか、みたいなことでは、
いちばん、よく考えている人ですからね。
普遍を追求して
基礎がしっかりしていないと、
特殊な問題はわからないんです。
知の体系の内部にいるときには、
知の体系そのものを、
外界から捉えることができていない。
ところが、自分の分野で、
知の体系の一点を、突破することになる。
突破して、知の最先端に立てば
まわりが見えるから、
はじめて、全体像が見えてくる──。
だから、幅広くやっている人には、
絶対にわからない
知の世界の限界があると思います。 |
糸井 |
なるほどね。 |
松井 |
一回突き抜けてみないと、
この知の世界の意味がわからないんです。
突き抜けてしまえば、そういう人は、みんな、
共通の言語でしゃべれるようになります。
「知の体系」のなかで、何がおこなわれているかが、
外から、わかるようになるから。 |
糸井 |
その話も、おもしろそうだなぁ。
そんなようなことも含めて、もう、
自由にしゃべっていただきたいんですけど、
あとはもう、当日をたのしみにしています。
ちょっと、うさんくさい話になると、
すっごくいいなぁ、とは思っているんです。
「うさんくさい」って、お香を焚いたりしながら
あやしげなものを売る、というところから
やって来た言葉らしいんですけど、いいですよねぇ。
もう、「においこみ」で、商品じゃないですか。
そんなお話を、期待しています。
よろしく、おねがいします。 |
松井 |
(笑)うさんくさい話なら、
いくらでもありますよ。
ちょっと、考えてみることにします。 |
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(松井孝典さんと糸井重里との
打ちあわせの様子は、今回までになります。
次回も、おたのしみに!) |