怪・その7
「はじめての心霊写真」
蒸し暑い夏の日に、
ふと思い出す写真があります。
それは小学4年生の頃に見た
1枚の白黒写真。
生まれて初めて見た、リアルな心霊写真でした。
私の10才年上の兄は、
その頃、北海道の大学に通っていて、
夏休みにはバイクで帰省していたのですが、
「これ、見るか」と、
渡されたのがその不思議な写真でした。
真っ黒な土の上に、
白くぼんやりとしたものがいくつか散らばっています。
その中のひとつが、
人間の足首から先の部分で、
とてもきれいにハッキリと写っていました。
散らばっているものは、手足でした。
土との境界線はぼんやりとしていて、
置かれているのではなく、浮かんでいるのでした。
恐怖感はなく、アートっぽくもあり、不思議で、
「何これ?」とたずねると、
兄は静かに
「心霊写真」と答えました。
兄はその頃ミミズの研究をしていて、
あちこちの土を集めて、ミミズを飼っていたのだそうです。
写真も好きだったので、自分で現像もしていました。
研究の経過を記録するため、
集めた土の写真も撮っていたのですが、
夜中に現像していたら、
土だけ写したはずの写真から
バラバラの手足が浮かんで来て、
恐ろしくなり暗室から飛び出したのだそうです。
その土というのが、
自殺の名所といわれる湖のものだったので、
すぐにバイクで行って元の場所に土を返し、
手を合わせたそうです。
しかし、兄はその後も、
高原でバイクと自分の写真を撮ったところ、
隣に居るはずのない
見知らぬ女性が写り込むというようなことがあり、
それからしばらく
写真を撮ることができなくなりました。
(DAN)